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昔はよかった



50年後……。

「昔はよかったのよ」

「そうなの? おばあちゃん」

「昔はね、インターネットってのがあってね、それで買い物すれば次の日には届けてくれたの。洋服も日用品も本も、全部、ぜーんぶね」

「えー!! すごい!!」

「分からないことはなんでもすぐにインターネットで調べられたし、どこへ行くにもスマホ1つあれば行けたから、地図なんて必要なかったの」

「地図がなくても平気なの?!」

「そうよー。町だって、どこにでもコンビニやスーパーがあって、食べるものに困ることはなかったし、便利だったもんよ」

「でもそれじゃあ、おばあちゃんはなにしてたの?」

「え?」

「そんなに便利で、時間に余裕があって、なにしてたの?」

「そうねー。仕事して、休みの日はライブに行ったり舞台を観たりしてたわね」

「ライブって、ステージに立って歌ってる人を見るやつ?」

「そうよ、昔は至る所にライブハウスがたくさんあったのよ」

「へぇー、なんかつまんなそう」

「そうかい?」

「だって見てるだけでしょ? 自分で歌ったりするわけじゃないんでしょ?」

「そうねー」

「ぼくはそんな世の中やだな。なんでもスマホで買い物できちゃったら、外に行かなくなるじゃん」

「そうねー」

「スマホが道を教えてくれたら、地図だって読めなくなるし、バカになるよ。それと、調べものがスマホでできたら、図書館にもいかなくなるじゃん。つまんないよそんなの。時間かけて本を探すのが楽しいのに」

「……」

「洋服だって、大切に着たいもん。靴下に穴が開いても、縫い直してまた履くのがいいんじゃん。簡単に買えちゃったら、裁縫だってやる必要なくてできなくなるでしょ。あ、だからおばあちゃん、裁縫できないんだね」

「そうねー」

「あ、おばあちゃん、料理もできないよね? それってもしかして……」

「そうねー。昔はね、飲食店が至る所にあったし、スーパーやコンビニでも作られた料理が
売ってたから、わざわざ時間をかけて作る必要がなかったの。あとね、ウーバーイーツっていうのがあって、注文すれば飲食店から数十分でできたての料理が家に届いたのよ」

「なにそれーー!? そんなの意味ないじゃん。食材買って作って食べる料理が1番美味しいんだから! そんな世の中絶対やだ!」

「そうかしら」

「なんでも人に頼らないと生きていけない人になるじゃん。つまんないよそんなの」

「そうねー。わたしたちの世代は、便利をお金で買う世の中だったのかしらね。前の世代が苦労して築いた便利を、ただお金を払って消費していただけだったのよ。だから、子供を産む人が極端に減ったわ。結婚しない人もたくさんいた。お金さえあればなんでもできたし、1人で生きていけた。だから、子供を作る必要がなかったのかしらね」



日本人83万人減、過去最大 総人口は13年連続マイナス


50年後は、今ある便利は維持できない。
外国人はどんどん増えるだろう。

でも、そのときに、
「昔はよかった」と思うのか、「今のほうがいい」と思うのかは、価値観の問題で、

わたしは、今はとてもいい世の中だと思うけど、19歳上の主人は、
「昔はよかった」と言います。

だから、時代に合わせて、価値観を更新していく。

いつの時代でも、「今がいい」と思えるように。

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