動物園のキジバト
「あ、ハトだ」
「ハトだねー」
「ハトなんかいるんだねー」
そう言ってチラッと見て、すぐに興味を失い通りすぎる親子。
動物園にいるキジバト。
きちんと「キジバト」と書かれたプレートがつけられて展示されているのに、誰も興味を持たない。
ドバトとキジバトの違いをしっかり答えられる人はあまりいないかもしれないけど、
見れば、そのハトがドバトなのかキジバトなのか分かる人は多いと思います。
街でよく群れているのがドバト。
木の上とかにいるのがキジバト。
どっちにしろ、よく見るハトです。
同じ鳥類なのに、ハシビロコウは大人気。
全然動かないくせに大人気。
サービス精神のかけらもなく、じっとしているだけで大人気。
キジバトの方がよっぽど動いていて、見ていて楽しい。
本当は森の中で自由に飛び回っている鳥なのに、檻に入れられて人間から餌をもらうだけの存在になっているキジバト。
誰にも興味を持たれないキジバト。
「おまえ、かわいそうなやつだな」
と、動物園に行くと15分くらいは、キジバトに話しかけています。
みんな、動物園には非日常を求めてる。
ゾウやライオンやキリン。
普通に生活していたら絶対に出会わない動物たちを見に行く。
ハトなんて、その辺にいますから。
動物園にハトを見に行く人は、いない。
いや、わたしのように捻くれた人はいるかもしれないけど。
ライブも一緒。
「アイドルだって人間だ!」
と、最近のブームなのか知りませんが、SNSで品のない私生活をだらだら公開している人がいますけど、
人間ならその辺にいるんですよ。
人間臭さにはなんの価値もない。
毎日仕事して、たくさんの人間と関わってきて、
もう人間には飽きていて、
だから休みの日に、人間以外を見たくて、動物園やライブや美術館に行く。
非日常。
アイドルやアーティストや役者や芸人は、人間だけど、人間じゃない。
きっちり演じている人。華のある人。綺麗な人。芸のある人。
わざわざお金を払って、なんでそのへんにいるキジバトを見にいかなきゃいけないのだろう。
クジャクが見たい。
めちゃめちゃかっこいい人。めちゃめちゃ可愛い人。めちゃめちゃ面白い人。めちゃめちゃ品のある人。
普通に生活していたら絶対に出会わないような人を見たい。
大きな箱でライブするような人は、クジャクだし、ライオンだし、ゾウだし、ハシビロコウ。
普通に生活していたら出会わない人。
だから、普通の人はそこに集まっていく。たくさんたくさん集まる。
でも、ちょっと捻くれた人は、動物園にいるキジバトを見に行く。
キジバトにはキジバトの良さがあるから。
動物園にいても、キジバトはキジバトだから。
「おまえかわいそうなやつだな」って話しかけるのも面白い。
でも、やっぱり、クジャクも見たいのです。
キジバトも良いけど、人を惹きつけるのはクジャクです。
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