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ライブ



「カバー曲を歌います! 映画の曲なんですけど、みんな知ってるかなー」

ステージに出てきてすぐに歌い始めるアーティストが多い中、その人は軽いMCのあと、いきなりカバー曲。

「映画見ないし、どうせ知らない曲だろう」
そう思っていると、流れてきた曲に驚いた。

知ってる。

エヴァンゲリオン、残酷な天使のテーゼ。

フロアの客層は40代50代のおじさまが多い。
盛り上がらないわけがない。初っ端からやってくれる。

これでしっかり記憶に残る。
名前は忘れても、「あー、エヴァ歌った人だよね」って忘れない。

盛り上がるおじさまたちと一緒に盛り上がる私。

そのあとはオリジナル曲を何曲か歌い、突然、

「クイズをしようと思います! 私がこれからあるキャラクターに変身するので、当ててください!」

と言い出し、ババっと頭から被り物を被った。
ペンギンのような、白くて目の周りが縁取られた覆面のような、なんだかよく分からない被り物。

ポカーンとする客席。恥ずかしくて言えないのではなく、本当にみんな何だかよく分からないみたい。

「え!? わかりませんか?? えっと、ヒントはですねー。ウルトラマンです!」

ウルトラマン?
ウルトラマン世代ではない私は当然知らない。

すると、客席から
「ショッカー?」「ショッカー!」
というおじさまたちの声がする。

「そう! それです! 当たりです! 正解はショッカーです!」

イェーイと盛り上がってるところに、最前にいたウルトラマン世代のおじさまが、

「ショッカーだったら黒くしないとダメなんだよ!」

という鋭いツッコミが入り、周りの人は爆笑。
私も、ショッカーは知らないけど雰囲気的に爆笑。

すごいなと思う。きっちり、客層に合わせたライブしてる。

その次に歌った曲では、

「手拍子がすごかった人には、私からプレゼントがあります! プレゼントはーー」

プレゼントはーー?

「CDをあげます!」

CDあげちゃうの!? え!? まじ?

やる気になるおじさまたち。裏拍だか表拍だか関係なく入り乱れる手拍子。

曲が終わり、

「私の独断と偏見ですが! そちらの赤いTシャツの方にプレゼントします!」

盛大な拍手。
これは嬉しいし、記憶に残る。

最後は「スーパーヒーロー」という、私がこの曲でこの人にハマったという曲を歌った。

たった30分という枠の中で、これだけのことを詰め込むアーティストはなかなかいない。


その次に出てきた人も、

「今日は懐メロをメドレーでカバーしたいと思います!」

と言い、歌ったのは、昭和の歌謡曲。
曲名は知らなくても、私でも耳にしたことのあるような有名曲をメドレーで。

おじさま世代は当然盛り上がる。

その次に出てきた人は、

歌い始めた瞬間から、ダンサーだった。
指先や、目線の動き一つまで決め切ってる。
明らかに他と違う圧倒的なパフォーマンス。

ふと、去年行った大物演歌歌手のコンサートを思い出す。

演歌歌手ほどのダンサーはいないんじゃないかと思う。
曲に合わせて、指先から、歩くスピードから、まったりした曲調に合わせてきっちり動く。

歌いながら手を振ったり拳をあげたり、飛び跳ねたりするアーティストは多いけど、見てて圧倒的にすごいなと思うのは、アーティスト自身がダンサーになって、自分で歌いながら踊ってる。

曲に合わせて踊るダンスは、適当だと合わなくなるので、どこでどんなパフォーマンスをするのかあらかじめ決めなきゃいけない。

これが、一流になればなるほどはっきりしてくる。

全部は書けないけど、まぁーー素晴らしく良いライブを見ました。

「カバー曲やるなら客層に合わせろ」と、常日頃思っていることを、当たり前にやってくれた人が2人もいました。

鬼滅の刃だとか、ワンオクだとか、そうじゃないんだよなーといつも思う。

客層に合わせたライブができる人がほとんどいないから、それができる人が飛び抜ける。

MCで、「ワンマンの紙チケット持ってきてます!」
と言っていたので、物販に行く。

CDは買わないけど、紙チケットに弱い私。紙がいいの。アルバムに貼れるから。残しておきたいの。

気になっていたことを聞いてみた。

「あの、エヴァ歌ったじゃないですか。すごいですね。あまりあれを歌う人いないからびっくりしました」

「あ、そうなんです。今日は初めての人が多いかなと思ったので、みんなが知ってそうなので歌いました!」

サラッと言ってたのがとてもかっこよかったです。

普通のアーティストは、初めての人が多いところでオリジナル曲ばかり歌うのよ。

自分の曲で惹きつけたい気持ちは分かるけど、まず他人の曲で惹きつけたあとに、自分の曲を聞いてもらうんじゃダメなの?

1回聞いただけじゃ記憶に残らなくても、2回なら記憶に残るかもしれないじゃないか。
だったらまず2回来させることを考えて、1回目にどれだけ印象を残すかだと思うのよ。ふんふん。

紙チケにサイン欲しいなと思ってたら、

「あ、チケットにサインしますね!」

と、心を読まれたのかと思うくらい、あっさりサインしてくれました。

アルバムに貼るのでサインも大事。


書店にふらっと寄って本を買うのと同じように、ふらっとライブに行って色んなアーティストさんを見る。

推し作家は、辻村深月さんと、村田沙耶香さんと、湊かなえさんだけど、

読む本は、その人たち以外も多い。

ライブもそんな感じで、推しとか推しじゃないとか考えず、もっとふらっと、知らないアーティストさんを見ればいいのになと思う。

私のライブの見方は特殊だと言われるけど、普通にライブが見たくてライブに行ってるので、接触とか関係なく、たくさんのライブに行きたいのです。

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