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売り方が好きじゃない


ブロ解……ブロ解……ブロ解……。

金のにおいがするアーティストを、全員ブロ解した。

「あんた気に入らないとすぐブロ解するよな」

「すぐでもないよ。これでもギリギリまで耐えてる。でもときどき冷静に考えて、やっぱり好きじゃないなって思って、勢いでブロ解しちゃうんだよね。別に友達じゃないし、相手は営業フォローなんだから問題ないでしょ」

「チャラ男は?」

「あの人SNSやる気ないから。ホスト臭くなったら殺すけど」

金集め路線のアーティストは好きじゃないわたし。
普通に集客路線で頑張ってるアーティストを応援した方が、デカいところに連れてってくれる気がして好きになる。

アーティスト自体は好きでも、売り方が好きじゃない。

「その団体のコンセプトがさ、他人の力、【他】力本願ではなく、多くの人の力で願いを叶えましょうっていう【多】力本願なんだけどさ、その【多】の中に客を含めちゃってる感じ。だからクラファンとかガンガンやってる金集め路線。スポンサー気分を味わいたい客はつくんだろうね。あんたみたいな」

「クラファンアーティストか、あんた嫌いだよな」

「いやさ、「アルバム作成のためにクラウドファンディングします!」とかさ、CDぐらい自分で作れバカやろうって思うんだわ。自腹でさ、市販のCDに曲焼いて、手作りで紙のケース作って、手書きで曲名書いて売ってるアーティストがどれだけいると思ってんだよ。そういう方が「応援してあげたい」って思うじゃん」

「それはたしかに」

「そもそもCDってさ、今の時代は曲聞くツールじゃなくて、コレクション程度で買うものなんだからさ、客から金集めてわざわざ作るものでもないわけよ。結局は金集めしたいだけなの見え見えでうんざりしちゃう。全然【多】力本願じゃないし、めちゃめちゃ【他】力本願
だなって」

【多】力本願の【多】の中に客を含めるなら、客の願いを叶える義務が発生する。
客であるわたしの願いはなんだろう。

わたしの願いは……

推しのサポートギタリストが武道館とか、横浜アリーナとか大きい会場を客でいっぱいにして、堂々と弾いてる姿を見ることだ。

「わたしの願いは金集め路線の団体には叶えられなさそうだしね。一年見てきたけど、全然客増えてない」

「金集めないとできないこともあるんだよ」

「そうだけど、集客を目指すならギリギリまで金集めを我慢するもんだよ。その我慢ができなくて、適当なところでチケ代値上げしたり、金集め路線に変えたりして失速するアーティスト、コロナ禍で散々見てきたじゃん。なにも学ばなかったのかな」

チケ代2000円だったのが、コロナ以降4000円に変えたアーティスト。

既存客はそれでもついてきて、その時は上手くいく。

けど、客は飽きる。
そして、4000円だと新規もつかなくなる。

結局今は全然集客できなくて、一部のお金持ちに飼われるようにライブする性風俗店状態。

結果は遅れて表れる。

「だからさ、実家暮らしで親がお金持ってて、生活の心配がない人が強いんだよね。いつまでも集客路線で頑張れるから。芸能系は生まれた環境で左右されるのはもう仕方ないよね」

「金ない奴は大きい事務所に入るか、スポンサーつけるかだな」

「客がスポンサーになったらもう終わりなんだけどね」

好きなアーティストがXで、

「クラウドファンディング800万達成!」

と誇らしく言うのを見ながらブロ解する。

そういうアーティストを自分が推していることを第三者に知られたら、
「金持ってるな。いいカモだな」と思われる気がして、なんだか嫌なので。

「わたしさー、多現場行くから、クラファン系と繋がりあると思われたくないんだよね」

「それは自意識過剰すぎ」

そうだろうかと思う。

売り方が好きじゃないんだ。


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