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自分と違うから好きになる
「この子のさ、胸の谷間がいいよね。Cカップぐらいだとくっきり谷間にならない感じの幼さが最高」
「おっさんか」
「あとこの子の内太もものラインがさ、丸みがなくてストレートな感じもめっちゃ好き」
「おっさんか」
ドルオタの主人の影響か、もともとそういう素質があったのかは謎だけど、可愛い(ここ重要)女性アイドルが大好き。
10年前に初めて行ったライブハウスで、最初に見たのがガールズバンドだった影響も大きい。
「来週このアイドルグループのファンの人にライブ誘われたから行ってくるね。男女比たぶんBAND-MAIDくらいで、激しさも初期のBAND-MAIDくらいかな。ライブハウスもBAND-MAIDで行ったことある下北沢ガーデン、名前変わってシャングリラってなってるみたい」
「じゃあ慣れてるな」
「慣れてるけど、初見だから後方で見てるよ」
BAND-MAIDのライブを経験すると、もう並大抵のことでは動じない。
男率の高さにビビることもなく、むしろ男率が高いほど安心する。
誘ってくれた方も、私がBAND-MAIDのファンであることを知っているからこそ誘ってくれた。
普通の女性を、女性アイドルの現場には誘いづらいもの。
「わたしは稀なほうなんだろうけど、同性ファン増やすのって難しいんだろうね。BAND-MAIDは最近は増えてきたけどさ」
「たまにいるよな。女性アイドル好きな女。だいたい太ってる」
「それと一緒にはされたくないなー。異性だったら関係ないかもしれないけどさ、同性だったら、普通自分よりダサい女推さないでしょ。だから同性ファンをつけるにはさ、めちゃめちゃ可愛いとか、めちゃめちゃかっこいいとか、性別を気にしなくなるくらい次元の違うパフォーマンスが求められるのかもね」
先週は旧古河庭園のバラフェスティバルへ。
今日はどしゃ降りの雨の中、渋谷の植物園に行った。
花が好き。とても綺麗だから。
そして花は、ずっと見ていても文句を言われない。
ただそこに咲いていて、私が花を見ていることを許容してくれる。
喋りかけてくることもないし、目が合うこともないし、嫌な顔をされることもない。
触ると、しっとりと水分を含んだような湿った感触が手に伝わってきて、生きてるんだなぁと思える。
可愛いアイドルさんはわたしにとっては花だけど、
一応人間なので、
目が合うかな? と期待したり、
あんまり見てたら悪いかなと、見過ぎないように遠慮したり、
喋りかけられたらなんて返そうかなと、言葉の練習をしたり、
そういったことも含めて楽しめる対象。
「同じじゃないって大事だよね。自分と同じだと思ったら推せない。同じ人間だけど、同じじゃない部分を作らないと魅力がない。だから性別が違えば推しやすいんだよ。客は客だし、演者は演者だしね。ライブは一体感だけど、あくまで客は客としての役割をフロアで果たすのみだからね」
若くて可愛いアイドルを見て、ムキーってなるほど若くも可愛くもない私。
自分とは全然違う世界に住んでる宇宙人のような気持ちで見ている。
全然違うから、どんな人なんだろうなって興味が湧く。
【同族嫌悪】
嫌いになる相手というのは、自分と似ている人。
ときどき花を見に行くといい。
花ではなくても、美術館や、プラネタリウムに行くといい。
圧倒的に綺麗で、圧倒的に自分とは違うから。
同じだと魅力がない。
自分とは違うからこそ、人は引き寄せられる。
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