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【エッセイ】ドーナツとの向き合い方

 私はドーナツが好きである。

 ドーナツが好きな人間はたくさんいるだろうが、私はこれを主張したい。全国のドーナツ屋さんを食べ歩いているわけでもないし、決していろんなドーナツに詳しいわけでもない。海やプールに行ってもみんながドーナツと聞いて連想する真ん中に穴が空いている「あいつ」で浮かんだりもしない。しかし、私はドーナツが好きであることを主張したいのである。
 私は普段、玄米と納豆とお味噌汁を食べて生活している。そこにたまに目玉焼きや野菜炒めなどのメニューが追加される程度で基本的には変わり映えのしない食事をしている。その食事内容は健康そのもので一見すごく健康に気を遣ってるように思えるが、私はそのメニューが大好物であるためただ単に好きなものを食べている。ただ、健康志向があることは間違いなくファーストフードや揚げ物はあまり食べないし、パンや麺などの小麦食品もほとんど食べない。そもそもパン派、ご飯派で言ったらご飯派だし、肉派、魚派で言ったら大豆派なのである。(どっから出てきた)
 そんな私が唯一、無性に食べたくなってしまうものが何を隠そうドーナツで、もっと言うと私は「ミスタードーナツ」が大好きなのである。ミスタードーナツ以外のドーナツはほとんど食べたことがない。ドーナツ好きを主張するには少し弱いのだが、それでも健康志向である私が無性に食べたくなってしまうということはかなりドーナツにハマっていることになるため、これはもうドーナツ好きだと言わざるを得ない。
 なぜここまで好きになったのかというと、それは私が小学生だった頃まで遡る。宮澤家では母がお昼前に買い物に出かけ、その買い物の帰りに家にいる私たちにお昼ご飯を買ってくることがあった。スーパーで食材を買って作ってくれる時もあればコンビニやマクドナルドの時もあり、様々だったのだが年に数回ミスタードーナツを買ってくる時があった。私が住んでいた地域にあるミスドは近くに1店舗しかなかったというのと、お昼ご飯にドーナツというのは宮澤家の中でそこまでメジャーでもなかったため、ミスドが食卓に並ぶことはかなり珍しいことだった。そのため、その特別感も相まって当時の私はドーナツを食べることにワクワクしていた。小学生にしてそのドーナツたちの穴を覗き、その数だけ夢を見たものである。(は?)ちなみに、そんなことを思い出しながら、私は今エンゼルクリームを食べている。(穴空いてないやん)
 初めてポンデリングを食べた時のことは今でも覚えていて、そのモチモチの食感に心を踊らせたものである。シュガーコーティングがされていて、いくつもの丸が連なった真珠を彷彿とさせるその生地はシュガーという名の殻を破り、人間界に解き放たれたいと叫んでいるようだった。(※ドーナツの話です。)
 そこにすかさず私は言う。「おいおい、そんな姿を見せられたら理性という名の檻に食欲が穴を開けちまうだろう」と。(※ドーナツを食べているだけです。)
 ともかく、ミスドのドーナツと聞くとワクワクしてしまう自分がいるのである。
 今でもその子どもの頃に感じていた特別感をミスドに感じている私は、時々衝動に駆られてミスドに行くことがある。特に期間限定の新作が出た時には毎回欠かさずに行っている。抹茶とほうじ茶ドーナツが出る時期と秋ごろのお芋のドーナツが出る時期は特に好きで、その時期に発売のドーナツは全種類食べないと気が済まない。店舗に入り、その新作ドーナツを全種類トレイの上に乗せた後、会計を済ませ、その輝くドーナツたちを食べる。その瞬間は小学生にタイムスリップしたような感覚になるのである。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はミスドを食べて、その構想が浮かび、作られた映画だったような気がしなくもない。(違います)

 そんな私の一番好きなミスドのドーナツが皆さん気になっている頃だと思うので発表しようと思う。
 私はフレンチクルーラーが一番好きである。軽い食感とほろほろとした口溶け、あのシンプルな甘さが私の心を掴んで離さないのである。フレンチクルーラーを目の前に出された私はテンションが揚がっていることだろう。(ドーナツみたいに言うな)
 しかし、最近ではミスドに行ってドーナツを選ぶとしたらフレンチクルーラーを選ぶことは少なくなっている。それはきっと、いつ食べても美味しいあの安心感に甘えているのかもしれない。他のドーナツを食べても私を何も言わずに迎え入れてくれる。そんな気がしてならないのだ。(ついてきてる?)
 さて、私がフレンチクルーラーを選ぶ回数が減ってきた理由は、実はその「安心感」に甘えてしまっているからに他ならない。いつでもそこにいてくれるし、私が他のドーナツに目移りしても「行ってきなっ」と優しく微笑んでくれる。しかし、その包容力に甘えてばかりいると、いつしか「ミスドの新しい顔」に出会うチャンスを逃してしまうのだ。
 最近の私は、フレンチクルーラーのように優しくて落ち着いた安心感よりも新しいドーナツの「刺激と冒険」を求めているのかもしれない。定番商品としてあったが今まで食べてこなかったオールドファッションやハニーチュロ。さらには毎月出される新作や、グラタンパイなどの惣菜とも呼べる商品たち。フレンチクルーラーも素晴らしいが、たくさんのドーナツという名の星たちが輝く広大な宇宙に目を向けるようになった。(何言ってんだこの人)

 それでも、フレンチクルーラーが「いつでも帰っておいで」と優しく待っていてくれることも忘れていない。フレンチクルーラーは私のドーナツ宇宙での「帰る場所」なのだ。それがあることによって安心して冒険ができる。今度はどんな冒険をした後に君に会えるのだろうか。フレンチクルーラーへの帰還はもうすぐだ。

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