【検証】国際環境NGO FoEJapanのALPS処理水に関する批判記事は正しいか
概要
認定特定非営利活動法人FoEJapanはALPS処理水の海洋放出に反対している団体ですが、同団体の記事「【Q&A】ALPS処理汚染水、押さえておきたい14のポイント」の内容が正しいかどうかを検証します。
以下のリンク先の記載順に沿って、上から順に検証していきます。
検証
検証1 処理水の定義
→ミスリード
ALPS処理水は「トリチウム以外の放射性物質を規制基準以下まで浄化処理した水」のことであり、タンクに貯蔵されているかどうかは関係ありません。(※1)
記事には政府が示すALPS処理水の定義も記載されていますが、図ではタンクに貯蔵されている水がALPS処理水とされており、読む人に誤解を与えます。
検証2 ALPSは改良されている
→ ミスリード
基準を超えて残留した際に使用されたALPSは原子力規制委員会の検査に合格していないものです。海洋放出される処理水は、同委員会の検査に合格した後のALPSを使用したものになります。(※2)記事では検査合格前のALPSがそのまま使用されるように読めるため、誤解を与えます。
IAEAは検査合格後のALPSを使用した処理水に対して安全性を確認しています。(※3)また、現在タンクに貯められている排出基準を超えている水は検査合格後のALPSで二次処理が行われます。(※4)
検証3 放射線物質の量
→誤り
「ALPS 処理水」を希釈して海洋に放出した場合の1年間の放射線影響は、1年間に日本人が自然界から受ける放射線の影響の約12万分の1~約1千分の1となると評価されている(※5)ため、「放射性物質の量がそれなりに多い」とは言えません。
検証4 タンク内の水と処理水の違い
→ミスリード
ALPS処理水は、放出前に、含まれる放射性物質の濃度測定を行い、安全基準を下回っていることを必ず確認してから放出されます。(※6)
当たり前ですが、海洋放出の影響を調査するにあたって、処理水ですらないタンク内の水と、実際に処理される直前の処理水のどちらを検証すべきかは誰でも容易に理解できるはずです。
記事では放出前の測定について一応記載してはいるものの、タンクの測定についてことさら強調しており、読者に誤解を与える恐れがあります。
検証5 トリチウム以外の放射性物質
→ミスリード
処理水はALPSで処理されたものであり、トリチウム以外も規制基準未満であることが確認されるまで繰り返し処理されてから放出されます。(※7)記事には嘘が書かれているわけではありませんが、処理後の数値が規制基準未満であるという事実を意図的に隠しているのであれば、ミスリードを目的としたものであると言われても仕方ないでしょう。
検証6 モルタル固化案
→誤り
モルタル固化について、政府はPIF専門家及び事務局との対話で「ALPS処理水を用いたコンクリートは放射性廃棄物と国内法上分類される点、現在貯蔵されているALPS処理水を更に希釈した上でコンクリート固化することで質量が膨大になるという点から、技術、法律的側面で困難である」と述べており(※8)、「水和熱が発生し、水が蒸発する」からではありません。
検証7 IAEAレビュー
→ミスリード
IAEAは処理水採取の際に立会いを行なっており(※9)、政府・東電が都合の良いデータを提出したという事実はありません。
また、IAEAはALPS処理水の海洋放出へのアプローチが国際的な安全基準に適合すると指摘しています。(※10)これは、「ALPS処理水は、放出前に、含まれる放射性物質の濃度測定を行い、安全基準を下回っていることを必ず確認してから放出される(※6)」という政府・東電のアプローチが妥当であると判断しているということです。先にも述べた通り、タンク群の数値にこだわるのは合理性がありません。
検証8 IAEA以外の第三者分析機関
→ミスリード
IAEAは国連保護下の国際機関であり、中立ではないとの主張は根拠に欠けます。
また、ALPS処理水の検証にあたってはIAEA以外の第三者分析機関も含まれている(※11)ことにも留意する必要があります。
結論
「【Q&A】ALPS処理汚染水、押さえておきたい14のポイント」には多くのミスリードと何点かの誤りがあり、同記事だけでALPS処理水の情報を得た場合、正確な情報を得られずに判断してしまう可能性があります。
処理水問題を検討するには不適当な記事であると言えるでしょう。
根拠資料
※1〜※11は以下のとおり。上から順番に記載しています。
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