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400字小説 「落葉と紅葉」

バスを乗り継いでようやく辿り着くと叔母が迎えてくれた。

「遠い所よく来てくれたわね。こんなに大きくなって!まずはお線香あげて頂戴」

挨拶もそこそこに祖母の部屋に通される。

亡くなったばかりにしては随分と片付いている。

「自分の死期を悟ってたみたいに身の回りも綺麗に掃除もしてて」

自分にも他人にも厳しかった祖母らしい。

幼かった私は厳格な祖母があまり得意ではなかったが。

ふと窓ガラスだけは埃が付いている事に気が付く。

「その窓だけは何故か触らせてくれなかったのよね」

燻んだガラス越しに色付いたイチョウの木がぼんやりと見える。

辺りが暗くなり、気になってもう一度窓を眺めていたら窓ガラスにいくつもの小さな手形が浮かび上がる事に気が付いた。

俄かに記憶が蘇ってくる。そう言えば結露した窓に落書きしたり手形を付けていたら祖母に怒られたっけ。

あの時の祖母がどんな表情をしていたのかはもう思い出せなかった。

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