映画コンコルド

映画を観始めてから、およそ一時間半が経過した。身の毛がよだつくらいに面白くなくて、欠伸が止まらない。いつ果てるともしれないこの地獄は、いつまで続くのか。シークバーの位置から推測するに、今でようやく半分といったところか。

しかし、一体何のために、何が悲しくて、俺はこの苦行に耐えているのか。

もういいじゃない。折角の休みなんだから、今日はこの辺で切り上げてさ。本でも読もうよ。続きは、また今度観れば?

甘美な響きを伴った心の声に、必死で抗う。今ここで観るのを止めたら、続きなど恐らく永久に観ないだろう。そして、途中で観るのを止めたのなら、それは「観た」ことにはならないのだ。この映画を「観たことがある」と言えるためには、何としても最後まで観なければならないのだ。

潔癖とも言える謎の使命感に突き動かされ、俺は貴重な休日を浪費していく。

でももしかすると、後半で盛り上がって、最後の最後で挽回するタイプの作品かもしれない。終わり良ければ全て良しなのだ。なるほど、前半の退屈な展開は全てこのための伏線だったのか、というパターンも大いに有り得る。いずれにしろ、半分しか観ていない今で判断するのは早計だ。自分に言い聞かせる。

しかし、期待とは裏切られるもの。サンクコストの呪縛に囚われた俺を嘲笑うかの如く、映画は呆気なく終了する。

でも、いいのである。兎にも角にも、俺は映画を最後まで観たという事実を得た。ボロクソに叩いたって構わないだろう。全部観たんだから。その権利はあるはずだ。

だから、これは決して時間の無駄なんかじゃなかった。負け惜しみじゃない。観て良かったよ、本当に。










クソが。



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