脅威

やっとこさ居心地が良くなってきた場所に、突如現れた闖入者にどう対処するか。

それが喫緊の課題だ。

彼が、好きになれそうにない。

世間一般の評価でいうと、彼は確かに社交的で明るく、礼儀正しく、結婚して身持ちが固く、人当たりが良いということになるだろう。嫌う要素が特に無い。

でも、俺は気に入らない。特に、あの愛想笑いが。他人の機嫌を取ろうとするような、顔に貼り付けたような愛想笑いが。

何故って、明らかに何の話をしているか分かっていない様子なのに、周りが笑っているのを見れば、自分も合わせて笑うのだ。円滑なコミュニケーションに同調は必須だが、それにしても度が過ぎているんじゃないか。でも、周りは特に気にした様子もない。おかしいのは俺の方なんだろう。

しかも、恐らく彼は皆に気に入られるだろう。いわゆる「まともな人」だからだ。年齢が若いこともあって、コミュニティに新しい風を吹き込んでくれそうだ、と期待されているのがよく分かる。

苦痛だ。

彼と一緒にいるのが。

苦痛だ。

彼と比べられるのが。

苦痛だ。

彼の顔を見るのが。

漸く差し始めた光は彼に遮られ、俺は再び深い影の中へと、吸い込まれそうになる。

落ちていく。

落ちて

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