『慣れ』について

転職して、今日で半年が経った。

職種はガラッと変わり、前職で身につけたスキルなど無い僕にとっては何もかもが新しくて、毎日てんてこ舞いだった。

一番苦労したのが、業界特有の専門用語の数々だ。PET、TAC、PMMA、LCA、Hz、TT、Ra、Φ、プライマー、コロナ、プラズマ、OLED、QD、LCD、開始剤、アニール、極性、Pfas、Tダイ、グラインドゲージ、超音波ホモジナイザー、CHC、etc……。入社直後から上司の付き添いで会議に同席していたが、耳がちくわになった気分だった。……ここは本当に日本か?

上司はフランクな良い人で、訊けば何でも丁寧に教えてくれる。しかし、理解できない。まず何から訊けばいいのか分からなかったし、説明に出てくる単語がまた知らない専門用語ばかりだからだ。

余りにも意味不明で、初めは出社するのが苦痛だった。でも、人間という生き物は、どんなことでも慣れるものなのだ。聞こえてくるありとあらゆる単語をメモし、ネットで調べ、それをまたメモする。時間があれば読み返し、過去の議事録を参照し、記憶に刻みつける。そして、休みの日も図書館に行って本を借りて勉強する。そうした努力の甲斐あって、今ではそれら用語が何を指しているかは大体分かるし、最近では客先で「説明してよ」とプレゼンを投げられるようになってきた。何なら、社内の微妙な人間関係を気にする余裕まで出てきている。

上述したのは、慣れのもつ良い側面に他ならない。慣れは、苦痛を緩和する。お陰で僕は、最早仕事に精神を破壊される恐れは、今のところ無くなった。

しかし、良いことばかりでもない。慣れることによる弊害は、勿論ある。例えば、慣れは慢心を生む。車校でも言われたことだが、慣れてきたときが、一番チョンボしやすいのである。自分の至らなさを自覚することが肝要だ。何と言っても、僕は入社半年のペーペーなのだから。半人前ですら無い。

そしてもう一つ。今までは仕事に忙殺され毎日溺れそうになっていたため、休日もそのことで頭がいっぱいだった。今、慣れは僕に余裕をくれるとともに、休日を如何に過ごすかという答えのない命題を与えてきた。平日が単調になりつつある僕にとって、週末の予定は非常に重要だ。家に籠もっているのもどうかと思うが、行きたい場所があるかと言われると、無い。読みたい本は山程あるが。

さて、これからどうしようか。


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