かしの樹の下で
<詞>
アルバム『綺麗』の歌詞に対するコンセプトが「ロックで日本語をやろう!」ということで、アルバム全体を通じて英語の量が極端に少ない。その中でも、この曲は歌詞に英語が使われていない。
(「祖国(ツーゴー)」は中国語ですかねえ?よくわかんないんだけど。)
「松田の子守歌」以来の事。
また、『綺麗』では、惚れたはれたのラブソングがグッと減り、ストーリー性のある、曲ごとの個性がはっきりした方向を打ち出している。
このように中国残留孤児をテーマに取り上げるという事自体が画期的であった。
桑田佳祐社会派路線(?)、いわゆるメッセージ、プロテスト的な歌としては初めてのものだったのではないだろうか。
(前作に『NUDEMAN』という曲もあったが、あれは半分オチャラケで作ったものなので・・。)
前アルバムの『流れる雲を追いかけて』と同じ系譜の曲だが、『流れる雲・・』は情景描写を楽しんでいた歌であり、『かしの樹の下で』は、より社会性にフォーカスを絞った作品と考えてよかろう。
詞の最後に登場する「牡丹」は、レコードジャケットと符合し、この曲が、このアルバムの一つの象徴であることがうかがえる。
<曲・アレンジ>
イントロのフレーズは、レコーディング中、最後まで決まらず暗中模索をしている時に、坂本龍一氏の「戦場のメリークリスマス(Merry Christmas Mr.Lawrence)」を聴いて刺激を受け、このフレーズが生まれたそう。
この当時の坂本龍一氏に対するコメントは、以下の通り。
ハラボーのボーカルパートのバックにユニゾンで流れているのは、中国の古来から伝わる「胡弓(こきゅう)」という弦楽器。
全編デジタルサウンドの中に、このような楽器を導入するバランス感といい、6thを多用したエキゾチックなメロディといい、サザンが『綺麗』からブリティッシュ系のニューウエイブに傾倒していった時代感を感じとる事ができる。
また、Aメロ、Bメロのみという構成も、それまでには見られなかった新しいアプローチであった。
<背景>
1983年「私は騙された」ツアーでは、オープニングに演奏され、レコードジャケットと同じ「牡丹の花」の電飾が花開くという設定が印象的、かつ象徴的であった。
後の1991年「THE 音楽祭」では、全くアレンジが変わり演奏された。
<1998.09.05記>
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