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路傍の家にて

<詞>

―今度のソロアルバムは基本的に割りとストレートなラブソングで一貫してますね

桑田佳祐
「まっ、中には税金、地上げの問題とかいろいろあったんだけど」(1988年)

このアルバムがリリースされたのが1988年。

当時を振り返ってみると、

【1987年】
~地価高騰最高に~
国土庁の1987年地価公示で東京都の平均上昇率が53.9%に達し「狂乱地価」といわれた1973年の33.8%を大幅に上回り、過去最高を記録した。

全国平均は7.7%の上昇。翌1988年も地価高騰はつづき、86-88年の3年間で東京都の住宅地の地価は約3倍に。この間、悪質な地上げが横行する一方で、土地保有者は値上がり益だけで、巨額の富を得た。

東京都心の商業地から始まった地価高騰は、地方都市、リゾート地などにも拡大、バブル経済をけん引した。(某国営サイトより抜粋)

世はまさにバブル最盛期。ん~、懐かしいのう~。みんな狂ってたのう~。
桑田さん、この頃に家でも建てたのか、土地でも買ったのか?(笑)

この歌を一言で表すとするなら「地上げソング」。
カネ余り国家だった上に、「濡れ手に粟」の商売をやっている輩を見れば、
そりゃ愚痴もこぼしたくなるわい。税金をタンと持っていかれればのう~。
(ちなみに1987年公示の高額納税者歌手部門で1位でした、ハイ。蛇足ながら。)

1994年「貧乏ブルース」の最後のバースでも同じ愚痴(笑)。
(ちなみに1994年公示の高額納税者歌手部門で1位でした、ハイ。)


続いて【1988年】
加えて間接直接の愚例
この手のサイトを探してたら、ここが意外と面白かった。あまりにも自分達本位で美談仕立てになっているところが笑えたから。このページ、87年版“メリークリスマスショー”での「2人のFourSeasons」にも使いまわしできそう。嗚呼、経世会。
(※筆者注 : これ実は当時の自民党サイトだったけれど、現在はリンク切れしていますので下欄にて簡単な説明を記します)

まあ、徹底的に韻を踏みながらもよく出来た歌詞ですね。
「♪ やがては恋路まで対象に」なんて秀逸。
私は大好きです。この歌。

桑田佳祐
「僕ら音楽屋の場合、ふだん漠然とモヤモヤ感じていることが、具体的に歌詞にしていく過程で、自分の考えとしてポーンと表に出てくることがあるんです。書いてみることによって『俺はいったい何を書こうとしているのか』と確認するのかもしれないけど。

でも、僕のレベルってのは、政治家や財界のドンと同じじゃない。わりと、女の子が3人ぐらい集まって「チェルノブイリが危ないから、スパゲティ食べないほうがいいわよ」とワイワイやってる、危機感でさえもゲームにしているレベルと全然変わらないんですね。

(中略)

僕は、世界を見る前に世間を見ていたい。

今回も地上げをテーマにした歌を作ったんだけど、僕らのデリカシーって、道端に生えてる草や栗の木が「区画整理で根こそぎやられてしまう。大変だ!」ってレベルから始まってるような気がするんだ。

そして、それをずっと見続けていくと、だんだんもうちょっと地球レベルのことにぶち当たっていくと思う。」(1988年)

<2001.06.27記>

追記

上記「加えて間接直接の愚例」の箇所ですが、ざっくり言ってしまうと直接税に対し、間接税は消費税の事。

国会内で20年余りすったもんだした問題だが竹下登内閣のもと1988年の12月に消費税法が成立。
翌1989年(平成元年)4月1日、日本で初めての消費税が税率3%で導入された。

というこの当時の世相です。

改めて歌詞を噛みしめてみると、2023年現在の大増税時代にもぴったりマッチする内容。っていうか今の筆者自身の悩みと合致してるだけかもw

語呂合わせのような、言葉遊びのような感じでありながら内容はしっかり含蓄があって深いなと。ホントに良く出来ている詞。
繰り返すがやはり韻の踏み方が抜群。自分の中ではある意味パーフェクトな歌詞で、のちの音楽寅さんでの「アベーロード」にも繋がる感じ。
(欲を言えばCメロ・Dメロあたりはもう少し日本語で行ってもらいたかったかなと。)

あと、これを書いている今日、気が付いた事。

曲の終わり方がビートルズの「HELP」と同じじゃないですか。

今までこれって「あ〜。桑田佳祐またビートルズやってるな〜‥」くらいにしか思ってなかったんだけど、詞の内容を考えてみると「ヘルプミー!助けてー!」な訳で。エンディングにこれを入れてくるひねりのあるギミック。

35年越しに発見して驚いた。

これ盛り上がってるの俺だけかも知れないけど。

<2023.12.07追記>


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