最近の短歌　6

2024/4/13～2024/6/3

怒ってるみたいな歩きかた私ほんとは悲しい倒れてしまう

ぬいぐるみ抱きしめて寝たはずなのに床に落ちてる大切なのに

掃除した直後の部屋に落ちている髪。生きるとはこういうことか

今だけで好きになってもいいですかあなたの過去に興味はなくて

「おやすみ」と一応言って電話切る。幸せな夢だけ見てほしい

初めから私に親はいなかったこの憎しみも悲しみも嘘

墓場まで持って行くべきものばかり体が重い命が軽い

自傷痕なぞって色を入れていく前腕はもう切らなくて済む

くだらない、馬鹿だ、後先考えろって思うでしょ。あした死にます

ライターが湯船に落ちてもう二度とつかない。これが人生ですよ

撫でろって頭をきみにこすりつけ満足したら布団に帰る

これでいい。これでよかった。まじないのように呟く。ほんとによかった？

葉桜を見ると安心する僕は見たくないものばかり見てきた

死ななくちゃいけない気がするだけだから気のせいだから大丈夫です

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『冒険(小規模)』

知っているけれど知らない人に会い本日のケーキセットを頼む

乗るバスを間違え謎に歩いたりしたけどかなり冒険だった

生きるため必要なことだったから心が少し勇者の凱旋

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君は夏みたいだ来れば鬱陶しい去ると切ないでも夏が好き

真ん中の穴を夜風がすり抜けた寂しい音で気づいてしまう

肝臓の負担がどうとか言われても心を優先せざるを得ない

好きなだけ掻きむしったら血の匂い生臭いもう忘れたいのに

行く宛てもなく彷徨えば夜の風付きまとう死を払ってくれよ

感情のゴミ箱になる必要があって私は母のゴミ箱

お風呂場の扉のひび割れ父がシャワーヘッドで殴った怒りの日々よ

「ころすぞ」とはっきり言っていたらしい夢の中でも怒ってるんだ

飲みすぎよ吸いすぎよって年上のお姉さんに抱きしめられたい

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『作品』

大きめのパーカーが好き両膝をしまって体育座りできるし

フードとか被れば泣いてもバレないし泣いたところで誰もいなし

そのまんま美術館に飾られて「限界」という作品になる

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撫でられる側になりたい撫でるのは疲れた飽きたみんなきらいだ

「でも生きていればOKです👍」ネキになりたいけれどそう思えない

大切な友人のこと考えていたらアイスがジュースになった

そんなもんだろとぼやいた横顔にこの世の絶望ちょうど半分

「死にてぇ」と「お好み焼きの豚肉がカリカリしてる♪」が共存してる

無責任だからあなたは簡単に愛の言葉を吐くのでしょうか

絶え間なく心底愛してほしいですおれが生きてる間だけでも

人ひとり殺したような目で彼はこの先なにを見て笑うのか

十七で自分を殺した私だし永遠の十七歳ですよ

ミサトさん「風呂は命の洗濯よ」ってマジですねエヴァに乗りたい

頭痛薬効かない頭痛　心ってこのへんにある気がして痛い

濡れたまま窓辺に座り初夏の風よ涙も髪も乾かせ

うるせーな。報告をする暇があるなら歌を買え私を救え

初夏の風に乾かしてもらった涙カピカピ髪はボサボサ

窮屈な檻をこじ開けようとする獣に朝昼夕の錠剤

化け物に近づいていく外見や思想あまりに心地よくって

真面目って、大人しいって、評価したあいつら全員噛み殺せ！ポチ！

人間の皮がめくれて化け物の部分が見えた美しかった

でもこれは私が好きでやっていることだからもう謝らないで

足の指丸める癖が直らない二度と会わない母とお揃い

雨の日の煙草が好きだ説明は難しいけど本当に好き

萌え袖はかわいいだけじゃなくて血が滲むてだって隠せるんです

そっかじゃあ埋めに行こうかその前に風呂場借りるね全部任せて

「絶対に講釈垂れなきゃ死んじまう呪い」かかってそうだねあんた

誰も傷つけずに全部叶えたい甘ったるくて醜悪な人

悲しみの谷を埋めたい怒鳴り声こだまする山切って崩して

言い訳がいつまで経っても下手糞で間違えたって泣きながら言う

どうしたらよかったのかな宙ぶらりん私の死体伸びていく首

用のない故郷の歌に殴られて目元が腫れてすごく寂しい

それぞれの生活の音あと匂い濃くなっていく夏の夕方

「ごめん今起きた」って嘘。起き抜けの声じゃないことくらいわかるよ

天井に向かって祈っているだけで終わる一日神などいない

泣かないとやっていけない人生だ。あなたは何処で泣いているの？

もう何も言わずにぎゅっとしてほしい難しいことわからないから

傷つけるための言葉を組み立てて分解したらまた組立てる

散弾銃みたいになってしまうからあなた以外も傷つけている

この世界地獄と知ってなお踊り続ける人が大好きなんだ

傷跡を優しくなでられた夢を忘れられない思い出せない

どこからが悲しみなのかわからずにこんがらがったところから切る