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降水確率0%の通り雨2《君の雷鳴 僕の過敏症体質》3

「これは、なんの冗談なのかな」
果ての地に着いた時、そこにあきつの姿はなく、小さな子供が2人寝ているだけだった。
皇子は、と慌てて気配を探ると、どうやら都の内裏の自室で眠っているようだ。
「皇子をへんげするから、あとで迎えに来てってことだったよね。で、あきつはいなくて」
「この子たちが何か知ってるかもしれません。とにかく一旦戻りましょう」
「そうね、この空間も不安定になっている、寝かさなきゃならないわね」
ありさが空に向かって印を結び、辺りは闇と化した。
「おやすみ、またね」
そういって、ありさはとあずさはそれぞれ一人ずつ幼児を抱きかかえ、飛空艇へと向かった。

「あきつなら僕だよ」
「えー僕があきつだよ、君にせもの」
「おまえこそ」
ぎゃーぎゃー
ありさは頭を抱えていた、いや、そんなことではないかと予想はしていた。皇子の力が、あきつの許容範囲を超えていたのだ。それを、むりにへんげしようとして、スパークして自身に還ったのだろう。あきつの力は分解と再構築。それが還ったということは、あきつ自身を分解して再構築したことになる。今回、分解から再構築に至るときに、統合しきれない何かが発生してしまったのか?チビたちに聞いて、、
「ばかばかばか、あきつなんてきらいだ、わーーん」
「ぼくをあきつってよぶおまえがばかなんだよやーい」
みても、ダメだろうな、はあ
「姉さん、こうなってしまっては、流れに任すしかないですね」
「それしかできないだろうなあ、もとのあきつに戻るかはきっと、運任せだろう。チビたちは、また一からあきつ育てると思えばいいだけだし」
それはいいんだが、
「皇子のことですか」
「うん、あきつが皇子をへんげすると、突然言ってきただろう?理由は聞いてないから、いったいどうしてそんな気になったのかなって。現状ではわからないし、それにへんげの後の皇子をほおっておくわけにもいかないよね」
「そうですね、変化が完了したかどうかもわからない。下手すると暴走が強まるかもしれない」
「ま、あきつがそんなへまするとは思ってはいないけど、なんせちび2人に分かれているから」
「信頼ないですよね」
「ひどいよ、しんらいしてないっていったーー」
「ぼくがんばったのにばかっていったーーー」
わーんわーん
「あはは、は」
「はいはい、ちゃんと信頼してますよ。で、かしこいちびちゃんたちは、この後どうしたいのかな」
あずさが、優しく尋ねる。
「おうじのとこに行く」
「まもってあげる」
ありさとあずさは顔を見合わせる。
「ずっとじゃない、今だけ」
「たっちできるまで」
「そうね」
ありさは深くうなずく。
「それがいいかも、いえ、それしかないわね。皇子に引っ付いて、事態の解決の糸口を見つけましょう」
「となると、セッティングが必要ですね。シナリオ作って作動させますね」
「お願いね。じゃ、あきつ」
「はい」
「はい」
「あー、あきつじゃない二人の名前が必要ね。なにがいいかな」
「あ、じゃあ、僕あきらがいい!きらきらってすきなの!」
「ぼくはあいす、アイスソードってきれあじばつぐんでかっこいいんだ」
「・・・あっさり決まったわね、もしかしてあきつ自分の名前嫌いだったのかな」
「名付け親の長老の事嫌ってましたからね、、」
「・・・とりあえず、3年?3年でけりつけよう」
「3年もかかりますか?」
「わからない、どうなれば決着なのかもわからない。ただ、期限は必要だ。早く終わればそれでよし、終わりが見えなくても終了だ」
「ねえさん」
「ということで、3年間楽しみましょう!私、たくさん日記を書くわ!」
「はい、私もすてきなシナリオを描いて見せます」
結局、お気楽で能天気な運命の女神たちは、この先の展開にはしゃいでいた。

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