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降水確率0%の通り雨《君の落雷 僕の静電気体質》9

「倉石遅くない?」
冨田がいう。あきらがトイレに立って15分ほどが経っていた。
「そう、ね、ちょっと遅いかな。ね、富田」
「ああ、ちょっと探してくる」
冨田が靴を履いて、トイレの方向へ小走りに歩いていくのと同時に、門脇が戻ってきた。
「門脇、どこ行ってたの」
「なに?トイレだよ」
「じゃ、倉石に合わなかった?トイレに行くといって席離れてから、まだ戻ってこないのよ」
「いや見かけなかったけど、、何分前のこと?」
「そうね15分くらいでしょうか」
「俺も探してくる」
門脇もどこかへいってしまった。
「教授、どうしますか。」
「全員、離れるわけにもいくまい、誰かが残っていなくては、そうだな、私が残ろう、君たちは手分けして倉石君を頼む」
「「わかりました」」
吉川と小林も席を立つ。
一人席に残った篠塚は、(久しぶりの再会を喜ぶがいいよ、あきら君、記憶はないかもしれないが、ね)とこの先の展開を思い描いていた。

「いい加減に放してくれないか」
たけるは見ず知らずの女生徒二人にまとわりつかれて、いい加減爆発しそうになっていた。
(だめだ、怒るわけにはいかない。にしても、話が通じない人種にどういえばいいというんだ!)
「俺は、ゼミのコンパで来ているだけだ。他所の会合に参加するつもりはない」
「だ・か・ら、ほんのちょっとだけってお願いしているじゃないですか。ちょっと席を離れる時間、お話したいなってだけなんです~。お得だと思うんですけど~」
(何が得なんだ!!)
「とにかくもう帰るからこの手を放してくれ」
「えーやだー」
たけるの服のボタンホールに指を差し入れて、しっかと服を握っているためなかなか外すことができない。いちおう女性なので手荒にすることもできず、仕方がない服を引き裂いてでも逃げるかとたけるが決心した時
「おい、三徒、こんなとこでナンパか」
門脇が声をかけてきた。
「おい、三徒、倉石、」
バシッ
「痛い、!なによいきなり!」
たけるの服を掴んでいた女性の手に、、電流が走った。
「なんなのよもう」
たけるはもう門脇の向こうにいる冨田につかみかからんばかりだった。
「あきらがなんだって」
「な、あの、さ、」
「トイレに行くといって席を立ったあと戻ってこないから探しているんだ。」
門脇が冨田に代わって答える。
「誰もついていかなかったのか」
「俺も席を立っていたんでね、それを言えばお前だってそうだろ、倉石放っておいてこんなところでナンパとはね」
たけるは無言で外へと向かった。
「どうするんだ」
冨田がたけるに聞く
「探す」
「どうやって」
たけるは手のひらに丸い方位磁石のようなものを乗せ、何かつぶやき始めた。身体が白銀の光で覆われ頭上に雲がかかり、あきらかに空気の色が変わるー
「おい!三徒!」
門脇が声をかけた瞬間、雷鳴と激しい衝撃波が四方に放たれた!

目を開けると、たけるが静かに立ち、さっきの丸い方位磁石らしきものを見ていた。
「お前、大丈夫か」
「何がだ」
「・・・まあいい、それは何だ」
「あきらの発明品だ、人を探す道具だ」
「どうやって使うんだ?」
「あらかじめ、探したい人のデータを入れておく、スイッチを入れるとその人のいる場所を示してくれる」
「じゃあ、もう」
「あきらの居場所はわかった、あとは移動手段を確保するだけだ」
「とおいの?」
「車で移動しているらしい、こちらも車を手配しなければ」
「どうやって」
「警察のパトカーでも借りるか、そこら中で張り込んでいるだろう、土曜の夜だ」
「なんて言って借りるつもり?」
「人命がかかっている、よこせといえば貸すだろう」
「いやいや、それ無理」
「なら、黙って拝借する」
「もっとむりー」
「車ならあるぜ」
「門脇?」
たけるは無言で門脇を見つめていた。
「車ならある、貸すよ、ただし俺をつれていけ、それが条件」
「じゃあ、おれも!コンパに倉石を誘ったのは俺だ、無事に家まで送り届ける義務がある!」
たけるは、門脇と冨田を交互にみて「わかった」とだけ言った。

「ねーその発見器?精度はどのくらい?どこにいても見つけられるの?」
門脇の車に乗り込み、走り出して5分、富田は後部座席からたけるに質問していた。ちなみに運転しているのはたける、飲んでいないのは彼だけだ。門脇は助手席で方位磁石型人発見器を見つめてたけるに指示を出していた。
「かなりのものだと思う、半径1万キロメートル以内なら、土の中にいても、水の中にいても、宇宙空間でも発見できるらしい」
「1,万、キロ?1万メートルじゃなくて?地球のどこにいても見つけられるってことじゃないか!そんなのあるの??」
「宇宙にいてもだ、探しに行けるものならな」
「倉石の発明だって言ってたよね。商品化されたらすごいことになるんじゃない!?」
「ただ欠点がある、」
「スイッチを押してから位置を特定するまでに5分かかること」
「5分位なら、まあ、ありじゃん」
「特定するまでにかかる5分間、機械を作動させるのに莫大なエネルギーが要る」
「車を発進させるくらい?」
「電力にして400kw」
「それってどのくらい」
「まじか」
門脇が話に割って入る。
「まじかって、門脇分かるの?」
「家で一か月に使う電力の約2倍だ、つまり2か月分の家で使う電気を5分で使い切るということ」
「何か想像できない」
「まあ、雷一発分のエネルギーってことだ」
「それならってじゃこれ、危険じゃないの?そんな高エネルギーが入っているなら暴走とかしないの?」
「捜索するのにほとんどのエネルギーを使うから、もうここには信号を出すための電力しか残っていない、そうだ」
「それなら、え、でも起動しているってことは充電したってことでいつ充電したんだ?2か月分の電気なんだろ?なあ、三、、」
「ついたぞ、針はここを示している」
門脇は丸い機械の表面を見つめながら、たけるに告げた。たけるは、軽くうなずき車を停め、ゆっくりとドアを開け外に出た。
「門脇、この件がすんだらお前に聞きたいことがある」
「奇遇だな、俺もお前に言いたいことが山ほどあるよ」
「教授たちにここの場所LINEしておいたよ」

さあいこう
とらわれの姫君?を助けに


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