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降水確率0%の通り雨2《君の雷鳴 僕の過敏性体質》2

「どこへ連れていくのですか」
闇の道を駆けていく一頭の馬。乗り手は、前には小さな男の子、後ろには年若い青年。
「いいところ。ちょっと前向いて、馬にしっかりつかまっててくれると嬉しいな」
「いいところって黄泉の国ですか」
「どうしてそう思うの?」
「あなたは、あなたがたは、私を殺すために押し入ってきたのでしょう?ならば、そう考えても不思議ではないでしょう。」
「残念、はずれ。私はあの連中とは何のかかわりもないよ。たまたま鉢合わせしただけ。彼らを叩きのめしてるの見なかった?」
「それは、確かに、、だが、だからと言ってあなたを信じることは、」
「ま、あんだけねらわれていたらねーっと」
急に何かが飛び出してきて、馬が後ろ脚立ちになる。
青年が少年をしっかり抱きかかえる。
「おっとーびっくりした、大丈夫?」
少年は青年を見上げ、びっくり顔になっている。
「おんなのひとーー!?」
「あら、ばれた?というよりこんだけ引っ付いてて気づかないなんて」
皇子が鈍いのか私のむ、、いやよそう。
「ま、私が男でも女でも今の皇子の情勢に変わりはないわね」
「そうですね」
あら、あっさり
「それで、私に何をさせたいのですか。といっても、私は第6皇子、母の身分も低く、なんの力もないからあなたの役には立ちそうもない。」
「それこそ、皇子は私を何だと思っているのでしょうね」
「政略結婚にしてはあなたはとうが立ちすぎだし、、」
「なんだとーーー」
一気に女、あきつの頭が沸騰する。
「やっぱ命が要らないのね皇子」
「ならば、私を足掛かりに公達を、」
ぶつぶつ、あきつの言葉を無視して何事かをつぶやいている。
「おーい皇子ー」
「うん、これなら、、、はい、なんですか?」
「着いたから」
「はい?ここは?」
ただの、とても広い広場だった。遮るものは何もない。
「こ、ここはどこですか」
足元には一面の砂、遠くに低い土の山が見える。天空に青い月。
「ここで皇子の力をへんげする」
「狙われやすいのはその力のせい。闇を求めるものにはとても魅力的なの。力を求めるものにもね。もちろん、敵対者にとっては消したくてたまらない。まあ、どう転んでも、ありがたくないわね。だから、へんげしてあげる」
「まて、よくわからない。私には力などない。何もできない」
「と、暗示かけてる、と。うん、どうでもいい」
「どうでもいい?」
「皇子が自分をどう思っていようと、皇子の周りの人が皇子になに吹き込んでいようとどうでもいい。私は私の思うとおりにする、皇子をへんげする、それだけ」
「なぜだ、それにへんげとやらで、わたしはどうなるのだ!」
「生きやすくなるよ、すこしだけね」
あきつが優しく笑う。
「な、」
「さ、いいころ合い、月も風もさいっこうー」
風が、土を舞い上げ2人の周りに壁を作る。天気雨のしずくがおち、だんだん激しい降りになる。
ごぽっ、少しづつ水位が上がってきて、
「やるよ、皇子」
あきつが手のひらを皇子の額に当てた。
ドンっ、激しい電流が水の壁を揺らす。
ドンッドンッドドンッ何万発もの雷が一気にあきつを襲う。皇子はやっと立っている状態だ。意識も薄れそうになる。それでも倒れることなく立っている。
(きっつー、でもまだ、一気にへんげするにはまだ足りない)
「皇子、寝てないで、もっとしっかりしてよ」
「なにをしろというんだ」
「がんばって」
「なんだそりゃ」
「ね、皇子さま、未来が変わったら何がしたい?」
「何だ急に」
「いいから、なにしたいか教えてよ」
水流の音が聞こえる。とおい雷鳴が聞こえる。そして
「ねこ、、」
「は??」
「ねこを抱っこしたい」
「は、はははは。いいよ、素敵だ、その未来創るよ」
期待してて
「あはは、」
皇子の気合が入った。雷鳴がはげしくなる。
どんどん圧力が上がっていく。
切れ目のない雷鳴、激しい渦、そしてーーー

(あなたのなまえ、きいてなかった、わたしはたける)
(あきつ、でもつぎにあうときはべつのなまえかもね)
(え)

すべての水を吸い取ったかのような乾いた地面に、地空挺が舞い降り
二つの小さな何かを拾い空に消えた。

気づいたとき皇子は自室にいた。かたわらには、ねこ


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