Web小説発掘記 その188 騎士と恐竜令嬢の紀元前ラブストーリー 作者 山野げっ歯類様

本編URL

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前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※この記事を書いた時点での最新話である『始まりの森』までを読んでの感想、レビューとなります。
※甘口記事です。

あらすじ

伝説のアーサー王の下で魔族との戦争に勝利した人類。その立役者の一人である円卓の騎士・パーシヴァルは次々に来る縁談を拒否していた。

彼はスリルが欲しい男だった。
するならせめて刺激的な結婚がしたいと言う。

ということで魔術師マーリンに送り込まれた恐竜のいる世界で原始生活を満喫することになったパーシヴァル。
相棒の聖槍ロンゴミニアドと快適な原始ライフを過ごしていた彼の前に、一匹のアンキロサウルスが現れて―――!?!?

これは、本当の愛を知らない男と恐竜の物語。

ストーリーと見所

……んん?
………んんん?

円卓の騎士とアンキロサウルス……?

円卓の騎士って言えばほら、アーサー王に率いられるあれな集団で……まぁ、サブカル的な話をするなら女の子になって聖剣振り回してみたりしたり……こう、キングガンダムがⅡ世がどうのこうのって……。

その円卓の騎士の一席であるパーシヴァルとアンキロサウルスが恋愛をする物語。

……あるか!!!そんな物語!!!!!!!!!!!!!!!

あったわ!!!ここに!!!!!!!!!!!!!!!!

ってことでなかなかどうしてタイトルとあらすじだけでとんでもねぇ感じが理解できる小説。しかし蓋を開けてみればびっくり、程よいコメディと性癖、そして何よりもわかりやすく王道の物語が詰め込まれた小説だったりもする。

ちなみに円卓の騎士とは書いてあるが、割とオリジナル要素が強いファンタジー円卓の騎士(いや、円卓の騎士は元々ファンタジーだけどほら、色々あれな人達でもあるので)と言った感じになっている。

名前と役割がベースになった、ハイブリッド円卓の騎士。みんな大好きマーリンもいるよ!

長い魔族との戦いを終えた円卓の騎士の一人であるパーシヴァルは、アーサー王に婚姻の申し出をされる。しかし、婚姻が彼の求めるスリルとは真逆の物であると感じたパーシヴァルは、恐竜時代への転移を希望するのだった。

……???

そうはならんやろなっとるやろがい!!!!!!!!!!!!!!!

で、実際のところ物語として如何なものなのかと言うと、タイトルのキワモノ感に反して割としっかりとラブコメをやってくれている作品。勿論世界観は色々とバグっているが、その辺りを突っ込むのは野暮だろう。
パーシヴァルが恐竜と恋愛すると言う字面のインパクトの前では、整合性やらそんな言葉は些事とは思わんかね?僕は思う。

転移したパーシヴァルに、くっついてきたロンゴミニアド。こちらが喋る槍なので突っ込みをこなすナイスな奴。
そこにヒロインのアンキロサウルスを加えた三人のちょっとドタバタしつつも割とスローライフ気味の生活が楽しめる作品。

以外にもアクが強いなんてことはなく、作者さんの丁寧且つわかりやすい文章と親しみやすいキャラクター、荒唐無稽と思いきや土台がしっかりしたストーリー構成なので読んでいて迷ったり疑問に思うことはなくすんなりと楽しむことができる。

そして恐竜時代と言うこともあってみんな大好きティラノサウルスも出てくる。その辺りもポイントが高い。

後半は元の世界に戻ってなんやかんやあるが、その辺りに関してもちゃんと物語としての緩急がつけられていて、ちょっとした障害を乗り越えたりしてパーシヴァルとヒロインのアンキロサウルスが心を通わせる(多分もう二度と使わない一文)ためのきっかけとなったりもする。

また要所で出てくるアーサー王を始めとした円卓の騎士の面々+マーリンもサブキャラで出番は多くはないものの、いいキャラをしている。

キャラクター

パーシヴァル

みんなご存じ……?円卓の騎士。

本作では基本的に丁寧でイケメンな好青年だが、脳筋キャラクターとして書かれている。

スリル好きという困った一面を持ち、それが理由で恐竜時代にワープるとかいうとんでもねぇことをやらかす。

しかも過去にいる間は基本的に腰巻のみの生活。この辺りは作者さんの強い意思を感じる……。

わかりやすくとても好感を抱きやすいキャラクターとして作られており、主人公としては申し分ない人物として描かれている。

モンブラン

赤ん坊の時に保護されたアンキロサウルスでヒロイン。

……何言ってるかわからないだろ?僕もわからない。

とは言え事実なのだから仕方がない。彼女はアンキロサウルスで、ヒロインだ。しかもちょっと可愛い。

パーシヴァルにしっかりと懐き、生活の手伝いをしたり健気さが愛おしくなってしまう。しかもとあるシーンでは彼を庇ったりと、アンキロサウルスながら下手なヒロインよりもよほどヒロインしている有様だ。

恐るべきアンキロサウルス……。

総評

評価点

とんでもねぇタイトルとあらすじから繰り出される綺麗で読みやすい文章。そしてしっかりした(?)ストーリー。

とは言え決して大人しくまとまっているわけではなく、円卓の騎士が恐竜と恋愛すると言うテーマに相応しいぶっ飛びっぷりを見せてくれる。

主人公もヒロインもキャラ立ちがしており、突っ込み役の喋る槍がまたにくい活躍をしている。

前編荒唐無稽ギャグかと思いきや、物語としての緩急が付いているので読んでいて飽きがこないのもありがたい。

問題点

特にない!

最終評価XX点!(甘口には点数は付かぬ)

作者さんの別作品を見ると本当に同じ人が書いたのかと疑いたくなるような愉快でネジが幾つか外れたコメディ小説。

とは言え読みやすく流れるような文体こそが同一人物である確たる証拠となっている。

初見こそインパクト充分だが、内容としてはどちらかと言えばほのぼの+ちょっとしたことでクスリと笑わせてくれるような感じに近いので、意外にも楽しめる人の幅は広いように思える。

円卓の騎士と恐竜の恋愛。そのとんでもねぇワードにピンと来たのならば読んでみて間違いない小説と言えるだろう。

所要時間はこれを書いた時点での最新話である『始まりの森』までで凡そ40分ほど。



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