Web小説発掘記 その281 【SF×恋愛】『死』の概念は削除されました~忘却の彼方~ 作者 日華てまり様

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前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『20話 歩幅を合わせて』までを読んでの感想、レビューとなります。

あらすじ

「この世界からも、記憶からも、消えている人がいるって言ったら、信じてくれますか……?」
おとぎ話のお姫様のような儚げな雰囲気の少女、姫花が、変人と名高い恭弥の研究室を訪れて言った。

「この世界はおかしい」
それが口癖の恭哉は、幼馴染の真人とともに、『死んだ人の記憶が消える』法則を、大学の研究室で解明しようとしていた。
この世界で死ぬと、生きている人の記憶から消えてしまい、存在していなかったことになる。
日記に身に覚えのない名前が書かれていた姫花、母親の記憶を失った莉奈、事故で庇ったはずの相手が消えた優斗、虐めてきた相手が消えた美樹。

それぞれの理由から『死』という概念に気づいた6人は、恭哉の元へと集結し、謎を解き明かす為に巨大な世界へ、命懸けで立ち向かうことになる。

運命のように惹かれ合う者、幼い頃から想いを寄せる物、恋愛に臆病になる者。
過酷な世界で、苦難を共にして絆を結んでいく少年少女は、初めての恋を知る。

「君を、忘れたくないーー」

6人の不器用で繊細な少年少女による、
甘酸っぱくも、切ないボーイミーツガール!

ストーリーと見所

6人の男女による恋愛+SFミステリー要素という意欲作。

死という概念がない世界、死という言葉すら一般的ではない世界でその綻びに気付いた彼等の物語が展開していく。

……まぁ、読んだのは本当に掴みの部分だけなんですけどね。
とはいえ、序盤だけでもストーリーとしての面白さは充分味わうことができる。

個人的には特にミステリー部分がかなり上手くできているように感じられ、登場人物達の言葉を通して世界の歪さが語られるシーンは本当に読んでいて心が躍るほどの面白さがあった。

登場人物も6人と序盤からそれなりの大所帯にはなるのだが、一人一人のキャラクター像が独立しており、また(少なくとも序盤を読んだ限りでは)カップリングとなる二人の組み合わせがかなり協調されているので、人数の多さの割にはしっかりと互いを紐付けして覚えることができる。

正直、最序盤にキャラクターが沢山出てくると混乱してしまうIQ2の筆者にとってはこの気遣いがとてもありがたい……。
ここは素直にその構成の巧みさを褒めるべきところだろう。

などなど、ちょっと序盤を読んだだけでも充分な魅力が伝わってくる作品。

キャラクター

恭哉

物語の主人公。
変人と周囲にいわれている。

初対面の女の子に対して妙に気障な言い回しをしたりと、作中でしっかりと変人描写が書かれているのがわかりやすくて良き。

かと思えば急に恋を知ったりと、忙しさもある男。

真人

主人公の友人。

とてもわかりやすい友人キャラクターで、主人公がクールなところを上手く補強するようないい感じに立ち回りを見せてくれる。

20話時点で一番存在感があるのは(ヒロインがわかりやすいツンデレということもあって)彼だろう。

総評

評価点

ストーリーの面白さや、先が気になる雰囲気作りはとても上手くできている。
特に構成の妙が光る部分が、特に世界の違和感を少しずつ鮮明にしていく流れは、ついつい見入ってしまうほどの魅力に溢れている。

また各キャラクターに関しても人数が多くて少しばかり面食らうが、特徴や関係性などがしっかりと書かれているので読んでいて思ったより「誰じゃい?」となることもない。

上にも書いたがこの辺りは本当に巧くできているポイント。
キャラクター達の構図がとてもわかりやすく、ビジュアル的な見せ方をしていながらもストーリー部分にも手を抜かない手腕はお見事。

問題点

とはいえまぁ、やはり序盤で6人のカップル紹介はなかなか難しい。

話の謎自体がかなり興味を惹くものであるから大きく気にはならないが、殆どお喋りでの登場人物紹介なので「うーん」といった感じ。

とはいえ、読んでいて退屈というわけでもないので大した問題というほどでもないだろう。

最終評価 54点(Web小説としては充分な良作)

ストーリーがしっかりしていてかなり面白い小説。いやまだ序盤しか読んでいないが……。

とにかくミステリーの謎の部分がかなり気になるようになっており、それにより歪んだ世界観も上手く表現できている。

特に開示の仕方が秀逸で、思わず先へと読み進めたくなるような展開となっているのもとてもいい。

恋愛部分にも力が入っており、各キャラクターの気持ちもわかりやすい(ひょっとしたら今後、意外な展開があるのかも知れないが)ので、とても読みやすいのも魅力の一つ。

所要時間は『20話 歩幅を合わせて』までで凡そ20分ほど。

極めて個人的な感想

読みやすく、ストーリーと世界観は非常に秀逸。

何度も書いてはいるが、6人というそれなりの人数でありながらキャラクターの造形がくっきりしていてわかりやすい構図もとても上手い。

ただまぁ、個人的には人物紹介と謎紹介が殆ど会話だった部分が気になるところ。

それに加えて恋愛描写に関してもちょっと急な感じはしてしまった。
とはいえその辺りに関してはWeb小説という媒体ならこのぐらいのスピード感で送るのも全然ありなので、好みの問題といっていいだろう。


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