Web小説発掘記 その251 UnderGround Magica 作者 皐月紫音様

本編URL

https://estar.jp/novels/26009827

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『Nox.XVII 地下世界へ……』までを読んでの感想、レビューとなります。

あらすじ

セントクォーツ王国王都【ユリアスベル】 〝白百合の王都〟とも名高いこの街に一人の少年が居た。

染めた銀髪と色素の薄い肌、紅色の鋭い瞳が印象的な不良少年クラウン・ビショップ。

様々な悪評を背負う彼も今では、国内屈指の名門プロヴァンス学院で仲間達と共に騒がしくも充実した学院生活を謳歌していた。

だが、ある日の帰り道、激痛に襲われて魔術師として覚醒したことで彼の人生は一変してしまう。

新たに生まれた魔術師を巡る魔術結社同士の争いに巻き込まれた彼は『闇』の魔術を継承する役目を持つ魔術結社【漆黒教典《ゲーティア》】の枢機卿グレイシア・エンゲルハートに出逢う。

クラウンは彼女との主従契約を交わし、魔術による独自の発展を遂げた【地下世界《アンダー・グラウンド》】へと旅立つ——。

虚構の空、黒い月、六つの魔術結社、竜、悪魔の仔《ディアボロスチルドレン》、ヴァルプルギスの堕とし子……。 果たして彼を待ち受けるのは——。

——「パンパカパーン……。おめでとう、本物の魔術師になった気分はどう?夜空の魔術師クラウン・ビショップ」

ストーリーと見所

女神に見守られた世界で、主人公が魔術師として戦っていくダークファンタジー。
その素晴らしき中二病(いい意味で)っぷりは読者の心をがっちりと掴むことだろう。

出てくる言葉や各登場人物の立ち振る舞い、それら全てから感じ取ることができる在りし日の羨望を美しく形にしてくれたといっても過言ではない。

とはいえ、ダークファンタジー系や所謂中二病系の小説であれば探せば幾らでもあるというもの。
なので折角だからこちらの作品の凄さを簡潔に説明しよう。

まずは文章力。
文章力って具体的に何よとかそういうあれになるのだがここで使う意味としては、如何に読んでいて疲れないかだ。

実はこちらの小説、割と序盤から世界観の説明が続いてしまうのだが、それが読んでいて全く疲れない。

すんなりと頭に入ってくるし、それどころかその世界の成り立ちがこれから先主人公や、それを語る姉の運命にどう関わるのかが楽しみになるような書かれ方をしている。

加えて女神の話における主人公の言葉の一つで、彼がどのような人物であるかを端的に解説してくれている。
これも実に上手い。上手すぎて馬になる。ひひーん。

で、お次が……正直文章力と殆ど被って入るのだが表現力だ。
美しい文章はそれだけで物語を鮮明に彩り、作品世界への没入感を高めてくれる。

そういった理由があるからこそ、最序盤の世界観説明に関しても飽きずに、むしろ先を楽しみに読み進められるというものだろう。

登場人物に関しても、取り敢えずまだ序盤ということで人となりを理解しきれいているわけではないが、一人一人がしっかりと強く印象付けられているのでかなり把握がしやすい。

キャラクターが濃いとでもいうべきか。

などなど、ライトノベル的なダークファンタジーとしてはかなり高いレベルで書かれた小説であることは間違いない。

キャラクター

クラウン・ビショップ

物語の主人公。
銀髪の赤い瞳の少年。

元は喧嘩に明け暮れていた不良少年。
細かいことは気にしない熱血漢で、読んでいて気持ちのいい性格をしている。

この手の作品で小うるさい先生にちゃんと感謝の心を持っているだけでも好感持てますね。

行動力があり、いきなりとんでもないことに巻き込まれるが割と表面上は平然としていたりもする肝の据わった部分もある。
かなり主人公してて良き。
年上のお姉さんが好き。

グレイシア・エンゲルハート

物語のヒロイン……多分。
主人公と契約をして彼を魔術師にする、物語の重要人物。
主人公よりも年上。

総評

評価点

高い表現力によって展開される世界観は、実に壮麗。

文章力もその世界への没入感に対して強く作用しており、自然と読者を物語の中へと導くような役割を果たせている。

登場人物に関しても、まだ序盤でありながらも強い印象を抱くようなキャラクターが多いのは作品の確かな魅力。

問題点

読んだ時点での初戦闘が、説明が多いのもあってか些か冗長。

加えて途中で別視点に入ったりもするので、余計にその印象が強くなってしまっている。

最終評価 56点(Web小説としては充分な良作)

非常に良質なダークファンタジー小説。

世界観の広がりが強く感じられるような文章と構成、その世界で活躍する様々な謎を持ったキャラクター達。

まだ序盤しか読んでいないが、その時点でこれから先の展開を間違いなく期待できる良作となっている。

何度も語るが、その表現力の高さと文章量は相当なレベル。

ダークファンタジーが好きな人、読みたい人になら間違いなくお勧めできる良作小説。

所要時間は『Nox.XVII 地下世界へ……』までで凡そ40分ほど。



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