しいたけ賞(仮)その15 愛慾に至る病 作者 渡橋銀杏様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/16817330656171308439

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的感想です。
例えそのような内容であろうと、作品の価値を定めるようなものではないことは予めご了承ください。

あらすじ

「鷹山彩音は、僕の光だった。彼女が、僕を輝かせてくれた」
その彩音が亡くなり、主人公の現実には大きな変化が訪れてゆく。
思い出される彩音との過去。そして、目まぐるしく変化する現実。
さらには、『女子高生連続殺人事件』により更なる混沌を招く。
女子高生連続殺人事件の犯人は? なぜ、彩音は死んだのか?
果たして、究極の愛とは、愛慾とは?
究極の愛を証明するためならば、命を懸けられるのか?

ストーリーとかについて

主人公の恋人の死から始まる、ミステリー風味な愛と狂気の物語。

ストーリーの冒頭でヒロインの死が知らされ、物語は過去へと飛ぶ。そして主人公やその友人達の話を経て、現代へと戻ってくる。

そこで語られるのは、女子高生連続殺人事件。その犯人と、被害者達を巡る物語……。

深い心理描写と、それを存分に描き出す表現が見事なミステリー風味の小説。
特に序盤に関しては、過去編で幼少期の主人公がヒロインに抱く気持ちが生々しくも僅かな狂気を滲ませて描かれている。
同年代の少女に対する恋心が愛に変わり、そして年齢と共に欲が芽生えていく。

その欲望を狂気でコーティングしたというのが、この作品の一番の見所といっていいだろう。
序盤からその味を全く隠すことなく書いてあり、作品への没入感は非常に高い。

そういった人間の、美しさを内包しながらも目を背けたくなるような部分を抉るように描いている文章は、それだけでもこの作品に強烈な個性を与えていることは間違いないだろう。

キャラクターとかについて

所謂ライトノベル的なあれではないので、そう極端なキャラ付けがされているわけではないが、登場人物達には個性が与えられ、物語を語るに充分な役者として自我を持っている。

最終評価(極めて個人的な感想)

文章

非常に読みやすい。
情景と心情のバランスがよく、特に読んでいて引き込まれるような重苦しい心の描き方は実にお見事。

キャラクター

それぞれに特徴がついていて、わかりやすい。
特に話の肝となる主人公のキャラクター性はかなりのもの。

構成

最序盤のインパクトのある展開から過去回想。そこでキャラクターの紹介とと共に主人公の内面をしっかりと語ることができていて、全く退屈しない。
その後の現代に戻ってからのミステリー風味な展開も、読者の興味を上手く惹けるような構成となっている。

設定

各キャラクターの立ち位置や、それぞれの思惑。
事件となっている女子高生連続殺人事件など、物語として強く興味を惹かれる要素が多い。

総評

グロテスクで美しいものとでも表現したくなるような、そんな人間の心のあれな部分を抉っていくような物語。

文章も読みやすく、少し読み進めれば物語の中に一気に引き込まれるような重力を持っている。
タイトルに偽りなしの、愛と慾について踏み込んだ良作小説。

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