しいたけ賞(仮)その33 真更衣蜜子を愛してる 作者 遠藤ほうり様

本編URL

https://ncode.syosetu.com/n0357hw/

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的感想です。
例えそのような内容であろうと、作品の価値を定めるようなものではないことは予めご了承ください。

あらすじ

 これは、真更衣蜜子に至る物語。

ストーリーとかについて

一言でいうのならば、素晴らしき怪作。

スプリンターとして期待されていたが、何故か自ら飛び降りを行いその道を断った少女の友人の視点から物語は始まる。
そこからその友人の話と同時に、彼女が通う学校の、クラスの異常さが少しずつ語られていく。

何処か荒唐無稽で、とりとめがない。その奇妙な少女達の世界の中心にいるのは、タイトルにもある真更衣蜜子。
ある種のカリスマのようなものでそれに違和感を感じながらも、歪な世界が形作られていく。
カルトのような学校で、少女達が至る結末は如何に……。

と、まぁストーリーについての話は長くなるので置いておくとして、こちらの小説は実に素晴らしい出来である。
欠点がないわけではく、文章はぎっしりしているし、登場人物は多い割に名前がわかりにくく把握しにくい。どちらかといえば欠点が多いといっても加護ではない。

だが、この小説にはそれらを補って余りあるほどの情念と、狂気のような強い感情が込められている。
有り体に語るのならば、パワーがある。

作者さんの表現力は非常に高く、圧倒されるような文章の密度がある。
それによって語られる、美しくも何処かグロテスクな世界観は癖になること間違いなし。

キャラクターとかについて

文章がかなりみっしりしていることもあってか、ちょっと誰が誰だか把握し辛い部分がある。

最終評価(極めて個人的な感想)

文章

表現力は凄まじいの一言。
鬼気迫るほどの勢いで書かれた文章は、強く読者の胸を打つ。
なのだが、反面ちょっと濃すぎて読みにくさもあったりする。

キャラクター

キャラクター一人一人の陰影はかなり濃いのだが、如何せんごっちゃりはしているので……といったところ。

構成

前半で感じた違和感を、後半できちんと説明してくれるその構成はお見事。
読者を惹き込みつつしっかりと驚かせてくれる、かなり上手い構成をしている。

設定

こちらも初見時は素直に驚かされたというか、腑に落ちる気持ちよさがある見事な設定。

総評

圧巻の表現力に彩られた、グロテスクな美しさを持った少女達の物語。

最初こそまるで迷路に迷い込んだような奇妙な酩酊感を覚えるのだが、それが次第に癖になってくる。……いや、癖にはならないかも。
だからこそそれらの違和感に結論が出されたときの納得感も凄まじいものがある。

特に二章の終わりは衝撃的過ぎる展開で、そこから続く三章の見事さには圧倒されるものがあった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?