しいたけ賞(仮)その36 トップアンドバック!! 作者 木立 花音様

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前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的感想です。
例えそのような内容であろうと、作品の価値を定めるようなものではないことは予めご了承ください。

あらすじ

中学時代、いずれは全国区のバドミントンプレイヤーになると目されていながら、中三のときに遭遇した事故により、肩を負傷して表舞台から消えた少女、仁藤紬(にとうつむぎ)
 そんな紬の運命を変えたのは、中学時代のライバルであった歳桃心(さいとうこころ)と、友人の石黒紗枝(いしぐろさえ)だった。
「私と一緒にダブルスやろうよ!」
 二人の説得により、肩があがらなくてもプレーできる前衛専門のプレイヤーとして、紬は再びバドミントン部に入部する。
 なぜ、彼女は事故に遭ったのか? なぜ、彼女は中三のとき試合をボイコットしたのか?
 紬の過去を知っているかつてのチームメイト、神宮寺姫子(じんぐうじひめこ)と再会したことで、紬の運命は再び動き出した――。 さあ行こう! インターハイの頂点へ。
 これは、団体戦でインターハイの頂点を目指す彼女らの、青春バドミントンストーリーだ。

ストーリーとかについて

爽やかな香りがする、少女達の青春バドミントン小説。
お話の作りはライトノベル的ではなく、文芸小説といった感じのテイスト。

中学時代、多くの人達から才能を羨望されていた主人公は、物語の開始時点では怪我でバドミントンを引退している。

そこに二人の少女との出会い(一人は再会)したことで、ダブルスと戦場を変えて再びバドミントンに向き合っていくというストーリー。
物語のテーマの一つとして、勝利至上主義?的なものが込められているのかそれに対しての言及が結構されているのが特徴。

主人公は才能があるからか「勝たなければ意味はない」と頻繁に口に出したり考えたりしており、良くも悪くも若者らしいスタンスで臨んでいる。

勝てば楽しいし、価値を目指すのは当たり前。
それはそれで正しいのだが、誰しもが同じような考えれプレイできるわけではない。

これはスポーツに限らず遊びや趣味など様々な部分で関わってくる問題なので、読んでいて興味を惹かれるテーマになっている。

またそれ以外の大きな特徴としては、とにかくテンポがいいことと、キャラクターが(一先ず下読み段階での表面上は)サバサバしていてやり取りが小気味よいことだろうか。

場面の切り方が印象的で、シーンの途中から始まり最初は「?」とさせておいてキャラクターの台詞などで何をしているのかを理解させるような演出が幾つか見られたりもする。

それによって余計な……というかまぁ、あまり動きのない場面をカットできる反面、ちょっと何の話をしているのか戸惑う場面もあったり……。
基本的には物語のテンポをよくするのに一役買っている。

キャラクターとかについて

所謂ライトノベル的な濃さはないが、しっかりとキャラ立ちしている。
細かな台詞や振る舞いから、どういった人物かが把握しやすく読んでいてとてもわかりやすい。
また全体的に(取り敢えずの表面上は)サバサバしたやり取りが読んでいて心地よく、ぶつけ合いのような台詞がまた青春感を増している。

最終評価(極めて個人的な感想)

文章

一人称視点の文章は、程よく心理描写と情景描写が混じっていてとても読みやすい。
台詞回しのテンポがよく、淡々としながら何処か温かみのあるやり取りが作品の魅力を高めている……多分。
試合中に関しても専門用語が多くて戸惑うが、かなりわかりやすく書いてくれている印象。

キャラクター

無気力なように見えつつも芯があり、内面は熱い主人公を始めとしてキャラクターの魅力は充分。
特に各登場人物の立ち位置がわかりやすいのは読んでいて助かる。

構成

序盤はかなりテンポよく進んでいく。
読んでいて場面の切り方や始め方が特徴的で、その辺りは目を引く。
基本的にはいいように作用しているのだが、読んでいて「?」となる場面がないわけではなかった。
とはいっても、ちょっと読み返せばすぐに理解できる程度の話ではあるが。

設定

一度は夢破れた少女が、別の方向からアプローチをするという王道展開。それをしっかりと、期待を裏切らないように丁寧に書いてくれている。
勝ちを目指すことが第一である主人公が、今後どのように心境が変わるのか、それとも変わらないのかと見所も多い。

総評

王道な展開を丁寧に書いてくれているのが魅力的な、青春小説。

かなりテンポがよく、話がさくさくと進んでいく。
文章が読みやすいのも相まって、一気に読み切ってしまう勢いがある作品。

青春物語としてもクオリティが高い反面、勝利というものについてシビアに描いている雰囲気も、上手く作品の魅力を引き立てている。

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