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20分近く仕事論を語っていた殺し屋のおっさんが普通に仕事をミスって雇い主に追われながらブツブツ言い続ける映画「ザ・キラー」【30分映画感想チャレンジ】

古今東西「殺し屋」が主人公の映画は多い。劇中でも名前が挙がる「007」などは最たる例で、最近で言えば「ジョン・ウィック」なども面白い。(言うほど最近か?というツッコミはさておき)

国に忠義を誓うもの、信念や復讐のために戦うもの。さまざまな人物が主人公として銀幕で活躍を見せつけるが、共通点があるとすれば「みな一流のプロの職業殺人者」である、そして「無辜の人を無闇に傷つけない」ことだろうか。

というわけで、Netflixで配信されているオリジナル映画「ザ・キラー」でマイケル・ファスベンダーが演じるのも、冷徹な殺し屋だ。

彼は入念に準備を行い、周到に時間をかけるのだが、その間、自身がいかにプロフェッショナルで、いかに時間をかけて腕を磨いて、運に助けられながら人を殺めてきたのか独白する。

朝マックの「ソーセージエッグマフィン」のマフィンだけ取り除く変な食い方をしながら話し続ける。そう。かれこれ20分はブツブツと話し続ける。長い、長いよ!でもそのおかげで観客は気付くのである。

こいつは本物(ヤバいヤツ)だ……!と。

そしてようやく現れたターゲットに狙撃銃を向け、必殺の銃撃を放つのだが、なんと彼は的を外す。全く無関係の人間を殺してしまうのである。まぁ殺しに失敗するところまではいい。あらすじにも書いてあるし。

この映画は、正直この後が面白い。映画に登場する「殺し屋」はみなプロフェッショナルで、仮に一度失敗しても必ず仕事をやり遂げる。そのためには一度は逃げることもあるが、大抵は窮地に陥りながらも堂々と絶体絶命の危機を乗り越える。

のだが、彼はミスをしたことに動転し、普通に挙動不審になる。呼吸は乱れて過呼吸寸前だし、顔を隠すために被ったフルフェイスヘルメットも呼気で曇りまくっている。

ちなみに彼が逃走のために選んだバイクは電動のスクーターである。エンジンの音は一切せず、モーターが回る甲高い音がなんだかシュールだ。それで警察からの追跡を逃れられるのか?と思うかもしれないが、そこはまぁ大丈夫。

なんたってそもそも彼は警察に追われない。一応パトカーが巡回しているが、誰も彼を下手人だと思っていない。そのくらいのノーマークさだ。一応彼の肩を持っておくと、脱出の判断が迅速で、用意も痕跡の排除も完璧だからこそ、このノーマーク具合を作り出すことが出来ている。

まぁヘルメットは曇りまくっていたし、焦っていたせいでバイク……もとい電動スクーターのチェーンロックを取り外すのになんだかすごくもたついていたりするのだが。

ここまで書けばなんとなく分かったかもしれないが、彼は経験豊かな殺し屋ではあるのだが、どうにもプロフェッショナルに徹しきれていない。三下では決してないが、どうにも二流感が漂う人物なのである。

そもそもこの映画は非日常的な職業倫理を持つ人物がその技能を用いて華やかな活躍を行うような映画ではない。殺しを職業にしている男が仕事に失敗して、大切なものを傷つけられ復讐を誓うも、そもそも全ての原因は彼にあるのだ。

だが、それでも彼は復讐を進めるうえで、気づかない内に失っていた自信を取り戻していく。この映画は「殺し屋」と「殺人鬼」の間にあるギャップをシリアスかつシュールに描きながらもひとりの人物の心理に焦点を当てた映画なのである。

◆以降、30分後の世界

はい。これはなんなのかと言いますと、最近お仕事が少し忙しくて全然noteを更新できていないバカチンが、気分転換の為に見た映画の感想の原稿を30分で書き上げる。というなんともヘンテコな企画になっております。

30分という短い時間で書いたことを言い訳に文章の拙さを誤魔化すつもりなので、リンクの挿入と、明らかな誤字を直す、読みやすいよう強調表示にすることだけはしましたが、ちゃんと30分で書いています。

一応見返したらヘルメットのガードはそんなに曇ってませんでしたが、映画を見ている時と見終わった直後の印象なのでご容赦を。その辺りの疾走感も含めて楽しんで頂けた方が少しでもいれば幸いです。

映画について少し補足をしておくと、主演は先述の通りマイケル・ファスベンダー、監督はデビット・フィンチャー。『セブン』『ファイトクラブ』が代表作ですね。個人的には『ゾディアック』『ゴーン・ガール』も好きですが。

これまで監督が手掛けてきた作品からも、非日常的な職業倫理を持つ人物がその技能を用いて華やかな活躍を行うような映画ではない(笑)ことはなんとなくイメージが付くと思います。時間制限があって無我夢中だったからってカッコつけすぎですね。

仕事で失敗して、自信を無くした上に空回りしてしまう。誰もが陥りうる出来事を映画らしいスケールと豪華さで描いた本作。なんの因果か、私もたまたま仕事でやらかしていて、気分転換のために見た映画が本作で「こんな偶然ある?」と思いながら感想を書いていました。

もしも気になったら是非見てみてくださいね。

彼が仕事論を独白し始めるとき、人が死ぬ……!

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