令和5年度会計士試験-社会人合格体験記②予算立案における二つの”ABC”


はじめに

前記事の①学習時間の予実管理編をお読みいただき、ありがとうございました。
リアクションを拝見して、仕事や子育てに追われながら、限りある時間を最大限に使って、人生を前に進めたいと歯を食いしばって勉強していらっしゃる方がたくさんいる資格試験であると改めて感じました。そこで、前回さわりだけ書かせていただいた予実管理について、予算策定にフォーカスを当てて記事を追加させていただきたいと思います。
フットワーク軽く何かを始める才能」と「粘り強く何かを続ける才能」は真逆のものだが、何かを成し遂げるためにはその両方が必要だ、と私は考えています。厳しい環境で試験に挑んでいく社会人受験生の方はまさにその二律背反のど真ん中にいる存在だと思っております。本記事も少しでも前向きに学習を進める一助になれば幸いです。

会計士試験における二つの”ABC"

重要度のABC

会計士試験の予備校にはABCと呼ばれる難易度や重要度の表があります。
一般的にAの方が易しく重要、Cの方が難しく重要度が落ちるとされているケースが多いです。予備校の案内や合格体験記ではA、B論点を中心に、C論点にはリソースを割かないことで効率的に学習を進められることが語られています。その一方で、相対的なランク付けにならざるを得ないことから、本試験の蓋を開けてみるとどうしてもギャップがあり、合格目標年度が変わったタイミングで重要性が大きく変動する状況も見受けられます。
”効率的にリソースを充てる”という観点で是非とも上手に使いたい指標だが、本当にA,Bのみに絞ってリソースを投下するのはどことなく恐ろしい
これが受験生が感じている感覚なのではないかと感じています。
実際、私は初めて受けた短答式試験で2.8%足らずに不合格になっているのですが、その時は時間が足りずに理論科目はまさにA、B論点+答練のみの学習でした。
財理、企業や監査のCの肢をもう少し学習範囲に含めておけば違った結果になったものと後悔もあります。(運で稼いでもいるので一概には言えませんが…)

本試験の立ち回りから守備範囲を決定する

勉強時間の限られた受験生に私がお勧めしたいことは「本試験会場の立ち回りから守備範囲を決定する」方法です。
換言すると試験会場で勉強したC論点を解くことは可能なのかという観点で学習範囲を決定します。
私の実際の学習範囲は以下です。
(例:短答)
財務会計:財理→構造→個別の順で解いていきこの順で安定させたい。
財理は確実に取り切りたいのでCまでやる。構造は難易度の振れ幅が大きい印象なので、沼にハマらないようにある程度で切り上げる。時間はある程度で切り上げる想定のため、A B中心でCは答練のみ。個別はそもそも受験生の標準偏差が大きいので自分の守備範囲を「計算が得意な」周りと合わせることが重要。(ここは講師相談の中で解像度を上げていく)必要なCはやるが、答練も全てのCはやらなくて良い。

管理会計:理論→計算で解く。
圧倒的に時間が足りないため、計算のCはまずパスする。計算のA、B問題に試験時間中も大量のリソースを割き、その精度で勝負が決まるので理論のCは他の理論科目よりは劣後する。

企業・監査:本試験の立ち回りにおいて、まず時間が足りなくなることがあり得ない。そのため、Cは周りがやらなくていいと思っていてラッキーという気持ちで全部やる。大学生のころに、あるサッカー選手が「夏休みが好きだった。周りがサボるから差をつけられる。みんなが頑張っている時にやっても差がつかない」とおっしゃっているのを聞いたことがあるが、企業監査のC論点はまさに「夏休み」。そもそもCをすべて潰しても、知らない肢が出るのが本試験だから、積極的に潰しに行こう。

管理会計のABC

もう一つのABCとは、管理会計論の論点としてのABCです。
多品種小ロット生産が進んだ原価計算における間接費配賦を適切に表すための間接費配賦の方法で、受験生的には今年試験範囲に入るか入らないのか議論された&実際に論文式試験で出題されたのが記憶に新しいことと思います。
ABCに関する多様な論点のうち、私が予算立案のために使用していたのは”TDABC”の考え方でした。
TDABCの詳しい説明は、本noteの読者層を意識しあえて避けますが、(誤ったことを記載してしまうとクリティカルになりかねないので…)そのうち時間方程式の考え方だけを抜き出し、時間のみを見積もり集計することで勉強時間の予算を立てるという発想で行なっておりました。

具体例で申し上げます。
まず、1ヶ月の実際的操業度を定めます。
現実的に社会人受験生が取れる学習時間は、最大でも200h/月(50h/w✖️4,
バッファ込み)だと考えておりそれを例とさせていただきます。
次に、各科目ごとに時間方程式を立てます。
例えば、各問題集の一つのタスク単位を"1問"と設定したときに大雑把に下記のように見積もるイメージです。
コントレ個別問題編:標準30分    
コントレ構造問題編:標準30分+量15分
管理計算論対集      :  標準30分+量15分+難易度15分 …
そして、これを等倍することで、「1時間に何問できるか?」を設定します。(等倍が綺麗な数字にならない場合はバッファだと思って数値丸めてしまっていました)
これを各月各教材ごとに必要な問題数(一周の問題数✖️回転数)をかけることで大雑把に各科目に充てなくてはいけない時間数を計算します。
その合計と、求めた最大操業度を見比べて、未利用キャパシティがあればそもそも時間方程式の前提を見直す、埋めるかバッファとして用いる、明らかにストレッチしていたら削ることを検討するといった次のアクションをとっていきます。

まとめ

ここで、前回記事の予算の立て方を再掲します。

【予算の立て方】
①目標日まで(公開模試など)に達成したい教材を科目別に設定する。
② ①の各教材の問題数を数え、回転数を決める。
③ ②について1hあたりの消化量を設定する。
④問題数✖️回転数/1hあたり消化量が各科目にいて目標日までに割かなくてはいけない時間数になる。
⑤各科目の時間数を日毎に割り振っていく。

https://note.com/fair_mimosa220/n/ndf24b4f5c5af

本noteでは、②〜④のプロセスについて詳しく記載いたしました。
まず、重要度のABCについて自分の守備範囲を決定することで、②の問題数が定まります。Cについては回転を落とす、という考え方もあると思いますが、マルバツ判定の短答試験では特に、知っているだけという付け焼き刃の知識はかえって危険なので、切るなら切る、回すならABと同様に回すというのがいいと考えてました。
また、自分の中で1問にかかる時間方程式を設定後、それを1時間あたりに解ける問題数に変換し、必要な問題数をかけることで③④のステップをクリアすることができます。
ここまで来れば、月別予算は完成なので、自分のプライベートな予定とも睨めっこしながら週ごと、日ごとの粒度に落としていけば使いやすい予算が完成すると思います。
これを読んでくださった方の気持ちが少しでも前向きになり、望んだ結果を得られることを心よりお祈り申し上げます。

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