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アコライトと陰陽思想

アコライト1〜8話、視聴し終えました。以下ネタバレありです。

登場人物と全体的な感想

登場人物まとめ


結構ジェキとヨードが好きだったので、ドラマ半ばの退場にショックを受けました。あの2人がドラマに明るさを与えてくれていたように思うので、居なくなってからはソルの複雑骨折してる心理状態も相まって湿っぽい雰囲気。

また、シーズン2へ続く前提なのか、メイの相棒かと思いきや師匠だった男……ザ・ストレンジャー周辺の謎が殆ど解消されずに終わってしまい消化不良気味です。

16年前のブレンドクの火災の真相については、メイたちから見た光景と、ソルたちから見た光景から描かれ、おおよそのことは明らかになりました。
二面的な構成で考えさせられたことは、部分的な場面のみを見て子供が虐待されているとして介入するのか、単純に躾されてるとして介入しないのか、または安全の保証のない儀式などを文化として許容するのか、介入すべきなのかなど、現代社会が直面している問題が描かれていた印象。

今回の場合は、インダーラの判断通り介入すべきではなかったのでしょう。しかし、これは結果を知っているから言えることに過ぎません。
実際に子供が虐待されていることを疑う光景を目撃したソルは、冷静になりにくい立場だったことは確かでしょうが、無論もっと慎重になるべきでした。
焦りからか、オーシャへの執着からか、マザー・アセニヤを刺したのは短絡的過ぎたと言えるでしょう。
しかも、ソルは純粋な正義感よりは、オーシャに執着しているが為の行為を、正義感で正当化しようとするような雰囲気をヒシヒシと放っているので、余計にその正義に同情するわけにはいきませんでした。

第3話の過去回想で、まだ炎も回ってないのに魔女たちが全員が折り重なるように事切れている光景を目にして、その時点ではジェダイたちの悪を確信しましたが、ジェダイたちは当初予想したほどは悪ではありませんでした。しかし善でもありませんでした。
ただ、トービンのコンサルトへの帰還に対する過剰な欲求と、ソルのオーシャへの過剰な執着は彼らから平常心を奪い、強引な行動へ向かわせました。そして、重なるように起きてしまった最悪の事態を、オーシャが知るには酷と言う理由で隠蔽する決断をしたインダーラ……しかし、インダーラの決断さえも、その理由は表向きのものだったのではないでしょうか。
彼らは、フォースの集中の調査のため、子供が虐待されている可能性のため、子供が真実を知ってショックを受けないためと、自身の正義を信じていた……いえ、信じ込もうとしていましたが、それは結果的に魔女たちを、メイやオーシャを苦しめ、彼ら自身さえもを16年間苦しめることになりました。

この物語は、善と悪が紙一重であることを、殊更強調していたように思います。善だと自信を誤魔化しながら罪を犯したジェダイたち、隠蔽される事実、真実を知ったオーシャが握ったことで、青から赤に染まり変わるライトセーバー……。

それは、元々ライトサイドとダークサイドが紙一重であること、または今後のジェダイの没落を予見しているのかもしれません。

メイとオーシャと陰陽思想

魔女集団は、フォースの集中がある惑星に身を隠すように居を構え、集団の指導者となる子供を作り出すべく、マザー・アニセヤが何らかの秘術で作り出し、マザー・コリルが代理で出産したように示唆されていると思われます。
さらに、メイとオーシャ……彼女たちは偶然双子に生まれたわけではなく、1つの魂を引き裂いて、わざわざ全く同一の存在を2つ作り出された結果でした。それには何の意味があったのでしょうか。

あなたは私と 私はあなたといる
私はあなたといる
常にひとつ 生まれて2人に
天に座す星々と 地に横たわる海の如く
私とあなたは 互いに与え合う

メイとオーシャの詩

メイとオーシャが幼い頃から唱えていた詩には、彼女たちが1つの存在が2つに引き裂かれたものであることが比喩されています。誰が彼女たちに詩を教えたのかは、彼女たちも覚えていません。マザーたちから教えられたわけではないとすれば、生来から記憶に刻まれていたのかもしれません。

マザー・アニセヤの額や、儀式を受けた後のメイの額には、額に星々のような渦巻き模様が出現していました。メイが”天に座す星々”だとするとオーシャが”地に横たわる海”ということになりそうです。そう思うと、オーシャという名前は”Ocean”から名付けられたのでしょうか。オーシャの由来が海だとすれば、ザ・ストレンジャーが滞在する未知の惑星の印象的な海の景色は、既にメイではなくオーシャに強い結びつきがあることを示唆していたのかもしれません。
それではメイの方はと言うと、検索してみると名付け的にはメイと言う名前には”star of the sea”と言う意味があるらしく、直訳すると海の星となります。

ケルナッカの隠れ家には、マザー・アニセヤやメイの額の印に似た模様が、壁に刻まれていました。それはどことなく太極を思い出させる印が多数見受けられます。太極と言えば、陰陽思想。
陰陽思想の中の陰陽互根は、原初のカオスの状態から陽と陰の気に分かれ、陽があれば陰があり、陰があれば陽があるように、互いが存在することで己が成り立つ……と言う考え方……とwikiにありました。

この考え方は、詩の内容を踏まえると、メイとオーシャの存在そのもののように思えます。また、ジェダイとシスの存在のことであるとも。
陽と陰はそれぞれが対称的な性質を司りますが、例えば陽が光を司り、陰が闇を司ります。色に関して言えば、陽は青や白の色を司り、陰は黒や赤の色を司ることから、ダークサイドに堕ちて赤く染まるライトセーバーは、陰をどうしようもなく連想させます。
陰陽思想がドラマのキーワードになっていることは、ドラマで第4話が「昼」第5話が「夜」だったことからも確実だろうと思いました。陽は昼を司り、陰は夜を司るからです。

最初はシスのもとで修行するメイが陰で、元とは言えジェダイで修行をしたオーシャが陽のように見えました。メイの見せる激しさが、ダークサイドを思わせたからです。
しかし、最終的にはジェダイに保護されたメイが陽で、シスの従者となったオーシャが陰であったように見えました。
考えてみれば、メイの激しさは陽の気が由来のものだったのかもしれません。また、メイはオーシャが生きていることを知ると、敵討はもう関係ないとばかりにジェダイへの投降を迷わず選ぶなど、案外オーシャよりカラッとしていました。このへんも陽の気が成せる態度のように見えます。

星々を天、海を地と置き換えられるなら、陽は天、陰は地なので、やはりメイは陽、オーシャが陰となります。
フォースは元々宇宙のあらゆる場所に存在し、流れるエネルギーであって、これは陰陽思想からすれば、やっぱり「気」のことを指しているように思います。
そして、陰陽思想では、決して陽が善で陰が悪というわけではありません。陽があるから陰があり、陰があるから陽があり、陰と陽が調和して初めて自然が保たれる……。
ただし、陰と陽は振り子のようなものらしいので、メイとオーシャが必ずしも陰と陽の属性に固定されている存在というわけではなく、元来の気質的にはメイが陽で、オーシャが陰だとしても、どちらかが陽へ傾けば、どちらかが陰に傾く、陰に傾けば陽に傾くというバランスの取り方なのかも。

また、ジェダイの罪が描かれ、シスであるザ・ストレンジャーが、そう悪くない描かれた方をした今作においては、必ずしもジェダイが善ではない、シスが悪ではない、と言うことを含んでいるようにも思います。

父親の存在しない子供という意味では、彼女たちはアナキン・スカイウォーカーを思い出させますが、年代的にはこちらが100年前……もしかするとアナキンが彼女たちの誕生方法を参考に誕生したのかもしれません。

彼女たちもアナキンも、フォースから生まれてきた?
しかし、彼女たちはアナキンと違って、劇中でM値が全く同数であることが異常だとは指摘されましたが、特別M値が高いとは指摘されていませんでした。彼女たちは、持っていたM値を均等に陽と陰で分けて生まれてきたのかもしれません。もしも1人として生まれてきたなら、アナキンと同等の才覚を持ち存在だったかも。

ともすれば、余計に彼女たちが2人に分かれる利点が何かあったのでしょうか。本来は1人の人間の中に陰と陽があったはず。アナキンのように……。

利点を想像するとすれば、1人よりも2人の方が陰と陽のバランスが保ちやすいのかもしれません。
あまりにも陰へ傾き過ぎると、アナキンのように破滅の道へ突き進むしかなくなりますが、メイとオーシャの場合は、1人が陰の道へ傾き過ぎれば、もう1人は陽の道へ傾いているわけで、陽の道から手を差し伸べることも出来るはずです。
自然な調和というものは、陽が強過ぎても陰が強過ぎても実現せず、ちょうどよい塩梅が必要で、振り子のような2人には、それは実現できるのでは?

陰が強すぎるのも明らかに問題ですが、陽が強すぎるのも問題だと言えます。
18年前のジェダイたちのように正義を振り翳してバランスを欠いてしまうかもしれません。正義という免罪符を持った人間が最も残酷とは、よく言ったものだからです。
ただし、振り子を想像してしまうと完全に陽と陰が釣り合って、振り子が静止した場合、2人は1つになりそう……。

オーシャもアナキンも8〜9歳と言う、ほぼ同年代のときに、通常より遅れてジェダイの門戸を叩きましたが、オーシャは家族を失ったことへの執着が消えずにジェダイを追放。アナキンも母を失った怒りからダークサイドに堕ちていきます。
父親の居ない出生、家族の死への執着、ジェダイでの修行、シスへの転向など、オーシャにはアナキンとの類似点が多くありますが、決定的に違うのが、やはりメイの存在です。アナキンは1人で生まれました。オーシャはメイと2人で生まれました。

続編があるとして、今はジェダイに保護されるメイの存在が、シスの従者となったオーシャの動向には何らかの影響があることは間違いないかとは思いますか、ジェダイの罪を描いた今作なので、単純にメイがオーシャをダークサイドからライトサイドへ取り戻す話とはならないように思います。

個人的にはシスもジェダイも振り切って、2人で光と闇のバランスを掴んで欲しいです。

余談 ザ・ストレンジャーについて

ザ・ストレンジャーは飄々とした台詞回しや、どこか掴めない人物造形がミステリアスで顔もカッコいいキャラクターだと思いますが、今のところミステリアス過ぎて核心は何も分かりません。

彼は過去、マスター・ヴァーネストラの弟子だったようです。
彼の背中には爛れた一筋の長い傷跡がありますが、マスター・ヴァーネストラは鞭のようにしなる不思議なライトセーバーの遣い手。彼の背中の傷痕は、そう思うと鞭による傷痕のようにも見えます。彼の背中の傷痕は、恐らくはマスター・ヴァーネストラにより与えられたものなのでしょう。
彼がダークサイドに堕ちたから、マスター・ヴァーネストラは彼を傷つけたのか、マスター・ヴァーネストラが傷を付けたから、彼はダークサイドに堕ちたのか……ザ・ストレンジャーとマスター・ヴァーネストラは、アナキンとオビ=ワンなのか、カイロ・レンとルークなのか……。
魅力的なキャラクターだったので、今後の動向に期待したいと思います。

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