走れ！サラダバス！～多様性とかなんとか～毎週ショートショート

「この車かっこいいね。僕も乗りたい！ねえ、僕も。」
「だめよ、ナオ。これは、車いすっていうの。ね」

　リフト付きの大型バス２台の周囲にびっこをひきながら走り回る者や車いすに乗った者、ワハハハハーと奇声を上げながら皆を叩き歩く者、静かに行く先の歴史を語る者が群れている。

「金井くーん、もうビール飲んでるのかーい！早いよ、ははは！」
「もーいいでしょ！もーいいでしょ！カカカ！」

　父の運営する作業所の旅行に今年も参加することになった。息子も連れて行くことにした。ここは相変わらず騒がしい。なので子どもの頃から障害者を可哀想だと思った事はあまりない。息子はまだ幼く何も分かっていない。

　バスは走る。カラオケ大会が始まり歌う。息子も楽しんでいる。後方では喧嘩が始まる。

　牧場に到着しバーベキュー。肉を焼いていると息子の隣に背の高い者がサラダを手にドスンと腰かけた。
「サラダきれいでしょ。ナオくん。いろいろでしょ。ねえ。」
「いろいろがいいの？いろいろ。サラダだね、みんな。じゃあ、あれはサラダバス。早く乗りたいよ。走れ！サラダバス！」

終わり