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ビール傘~ボラーレ~

 汗まみれの作業着を脱ぎシャワーを浴びる。タオルで頭をゴシゴシと拭いていると外で雷鳴が轟いた。「おい、若いの。麦茶でも飲んでけや。」グラスに注がれたキンキンに冷えた麦茶を一気に飲み干し「それじゃ、オヤジさん。お先に!」

 降り出す前に地下鉄の駅に辿り着こうと歩みを速めた。耳にイヤホンをねじ込むとジプシーキングスが流れてきた。むしろ情熱的な音楽のほうが疲れた身体を癒してくれる。

 四季があった頃の世界はどういうものであったのだろうか?子どもの頃ヴァーチャルリアリティで体験した白く冷たい雪というものはどういうものだろう?途中、ペーパーストアで夕刊フジをダウンロードする。ゴーグルに映し出された政治家の汚職、芸能人の不倫。

 雷鳴が轟く。近いぞ、急がねば!救急車がサイレンをけたたましく鳴らしながら走ってゆく。

 ぽつ。ぽつ。ぽつぽつ。。降って来た!辺りにプ~ンとアルコールの匂いが漂い始めるや否や。。。ザーーーーー。ビール豪雨だ!亜熱帯の分厚い雨雲と浮遊酵母によるビール豪雨。ポケットから出したスマートアンブレラを被ると駅へと走った。ジプシーキングスは歌い続ける。ボラレ!カンタレラ!
 

おわり

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