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山手線のポルターガイスト

昨日は夜の3:30まで先輩と電話して、それからお風呂に入ったので寝たのが4:30くらいだった。

8:30に大声を出しながら起床したら喉がガラガラになり、ハツカ飴と朝食を同時並行で食べる。

顔面に「一方通行」や「止まれ」の標識を立てて、180度のアイロンで前髪をアラヨットすれば、「わたくし」の出来上がり。本日のわたくし、特に何の気合も入っていないのに、一方通行の矢印がちょっと長いわね。

昨日おでんだったので、茶飯が残っている。これでおにぎりを作って持って行った。具は、一つが梅干し、もう一つがおでんの中に入っていたシャウエッセン。ハサミでぷつっと半分に切って、ついでにカラシも混ぜて、大量の米粒で覆い隠す。

家を出た。

品川駅で山手線に乗ってうとうとしていた。
武井壮は45分寝ればいいらしいが、私は百獣の王じゃないので、4時間睡眠だと真っ逆さまに疲れてしまう。
いいなあ。私も百獣の王になりたい。それで、一ミリも動いてないのに覇気だけで相手を倒すみたいなやつがやりたい。

そんな感じでうとうとしていたら、途端に鼻に痛みが走り、私は「イヤオ」と叫んで五反田で飛び起きた。
見ると、山手線のポルターガイストが私の鼻毛を抜いて遊んでいた。マスクをしていたのに、幽霊からすれば私の顔下半分なんて無防備に等しいのかもしれない。
私の渾身の「イヤオ」を聞いて、ポルターガイストは拍手笑いをしていた。
中学の時同じクラスだった、バラエティ番組の芸人の笑い方を模倣する悲しい男子を思い出し、私はどうしようもなくなったので、リュックのサイドポケットに入っていたブレスケアをポルターガイストにあげた。

キャンパスに着いて、授業の前におにぎりを平らげた。
シャウエッセンは、米に包まれようが煮込まれようが、シャウエッセンだった。

授業はカフカだった。つい数日前自分が朝起きてきのこになっていたことを思い出す。
ベッドを貫いて、二階の床下から根付いて、私はかなり頑固なきのこになっていた。
半日寝たら増えるワカメのように戻った。

授業の後、今日初めて会う人に会い、色々話し、カヌレをもらった。
駒場東大前駅で、空腹に耐えきれず開封して一ついただいた。
表面の心地よい固さを歯が食い破ると、果実のような柔い印象が口腔を満たした。ラム酒の芳醇な香りが堪らない。
これは美味しいカヌレだ。と思って、気づいたら、四人がけのボックス席から2名のカヌレが消えていた。

四人家族なのに。やってしまった。家についても、このカヌレの存在は極力隠していこう。そう思った。

JRのホームでもう一度カヌレの箱を開け、よくよく説明書を見てみると、どうやらちょっとオーブンでチンした方が美味しいらしい。
それなら後もう一個私の分にしなくてはだめだ。

山手線に乗ると、またポルターガイストがいた。
こいつに一つカヌレをあげるか迷ったが、鼻毛を抜かれた痛みがまだ微妙に尾を引いていたので、やめた。代わりにリュックのサイドポケットに入っていたキシリトールガムをあげた。ポルターガイストは不満そうに、
「え、何すか、自分、口臭いすか」
と言った。
全くそんなことはなかったが、思ったよりも嫌いなタイプの喋り方だったので、私は無言で電車を降りた。

もう一度カヌレの箱を見た。
そうか、私は好きなアイスもラムレーズンだし、ラム酒が好きなんだなと思い、今度バカルディのホワイトラムでも買ってみようと思い至った。


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