あれから
ぬるくなったビールを勢いで飲み干さなくなった時、自分が大人になった気がした。
大人になりたくない。と思っていても、味覚は鈍化し身体は老いる。
冷たいビールですらおいしくなかったのに、今では週末が近づくにつれビールが飲みたくてたまらない。
しかし未だにコーヒーを好むことができないのは、ずっと子供である、ありたいという願望のあらわれなのだろうか。
副業として2年半勤務していたメイドカフェを辞めてから2か月が経とうとしている。
暇だから時間を金に換えるか、と飛び込んだ業界だったが、思いのほか長続きしたほうだと思う。
最期のほうは、アラサー会社員が女子高生と同じ格好をして媚を売ることが微ストレスになってたのかもしれない。自己肯定感がちょっと低いから、同じことを周りがしていても何とも思わないが、自分が行うには抵抗がある。厄介だ。
それでも、生誕や卒業イベントを開催してもらい、たくさんのお客様に訪れてもらった。とても充実していた。
コンカフェで勤務するにあたり、お局や派閥争い等があることを警戒していたが、私が気づかなかっただけなのか、そういったことはなかった。
仕事をしないやつは嫌われていたが、そういうのはすぐに辞めていく。新陳代謝が激しいのだ。
辞めてから時間を金に換えられなくなったが、毎日そこそこ忙しく過ごしている為、充実している。
Twitterのアカウントはログアウトしていて、もう動かすことはないんだろうなと思っている。いつかひっそりと消そうかな。
辞めたあともゲスト出勤があったり、顔を見せるだけで喜んでくれるオタクがいるキャストとか、次に勤務する店が決まっていて、顔を出し続けてお客を繋いでおく必要がある人ならともかく、ゲスト予定も人気もない私が自撮りを載せるのはダサい。大した反応も来ないだろうし。
それでも、うまいこと撮ってもらった写真があるとアカウント動かそうかな~と、承認欲求がムラッと顔を出す。
現役中に買ったたくさんのコスプレは後輩にあげることにした。
将来のエロいことのために取っておくことも考えたが、そんな不純な目的のためにベッド下の収納を潰していることが虚しくなったので譲った。
一番使い勝手がいいであろうサンタ服だけは手元に残してある。使うときがくるかはわからないが。
2年半ちょっと面白い世界に身を置いて、そこにいなければ体験できないことをさせてもらった。それでも私はきっと表層しか知らない浅い人間だ。
もっとがっつり働いていたら、見える景色も変わったと思う。
この不思議な副業を体験したデメリットといえば、会社の飲み会がすこぶる嫌になったということに尽きる。おじさんの酒宴の場にいて酒を作るのも、私が酒を飲むのも、カラオケで歌うのも、全部時給とかオプション代が発生していたのに、会社では無償労働だ。私が金を払って飲み会に参加しておじさんの話を聞いてやるってどんな拷問?
社員旅行はサボった。土日潰して気使うなんて無理すぎる。
大好きなツインテールができないくらい髪を切った。
自分の中の禊とかけじめのつもりだ。夏が暑すぎるという理由も大きいが。
この髪型でお客さんの前に出ることはないだろう。
思い出の中の私はツインテールのままがいい。
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