脳卒中患者における病棟生活の身体活動と歩行能力および認知機能の関連


はじめに

脳卒中患者の入院中の身体活動(PA)は、退院後の生活機能や社会復帰に重要な役割を果たすことが示唆されています。しかし、入院中のPAに関する研究は多く、病棟生活におけるPAに着目した研究は限られています。さらに、脳卒中患者は運動麻痺や認知機能障害を伴うことが多く、これらの機能がPAに与える影響も十分に検討されていません。

本研究の目的

本研究では、回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中患者の病棟生活におけるPAと歩行能力、認知機能の関係を明らかにすることを目的としました。

方法

対象者

2022年9月から2023年7月までに、最終的に64名が解析対象となりました。

評価

  • 基本情報: 年齢、性別、BMI、脳卒中病型、入院日数、下肢機能障害(SIAS-LM)

  • 歩行能力: Functional Ambulation Category (FAC)

  • 認知機能: Mini-Mental State Examination (MMSE)

  • 病棟生活のPA: 活動量計を用いて、SB、LPA、MVPAの割合を算出

統計解析

重回帰分析を用いて、病棟生活のPAと歩行能力、認知機能の関係を検討しました。

結果

  • 病棟生活のPA: SB 39.38±13.69%、LPA 49.30±9.30%、MVPA 10.25±5.27%

  • 重回帰分析

    • SB: FAC (β=-0.307, p=0.035)、MMSE (β=0.385, p=0.001)と有意な負の関連

    • LPA: MMSE (β=0.387, p=0.006)と有意な正の関連

    • MVPA: FAC (β=0.315, p=0.041)と有意な正の関連

考察

本研究の結果、脳卒中患者の病棟生活におけるPAは、歩行能力と認知機能の両面と関連していることが示唆されました。

  • SB: 歩行能力と認知機能が低下している患者ほどSBが多くなっていた。これは、不活動時間が増えると、歩行能力や認知機能の低下につながる可能性を示唆しています。

  • LPA: 認知機能のみがLPAと関連していました。LPAは比較的軽い運動強度であり、脳卒中患者でも実施しやすい運動です。認知機能が低下している患者は、LPAを積極的に行うことで、認知機能の維持・改善につながる可能性があります。

  • MVPA: 歩行能力のみがMVPAと関連していました。MVPAは比較的高い運動強度であり、歩行能力の向上に効果的な運動です。歩行能力が低下している患者は、MVPAを積極的に行うことで、歩行能力の向上につながる可能性があります。

結論

脳卒中患者の病棟生活におけるPAは、歩行能力と認知機能の維持・改善に重要な役割を果たすことが示唆されました。入院中のPAを増加させるためには、患者の歩行能力と認知機能を評価し、個々の患者に合わせた運動プログラムを提供することが重要です。

今後の課題

  • 縦断研究による因果関係の検討

  • より多くの患者を対象とした研究

  • 対象者の自立度を揃えた研究

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