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『LIVE ACT TULIP in 鈴蘭2』 チューリップ

 目の前に古い2本のカセットテープがある。
手書きで『LIVE ACT TULIP in 鈴蘭2』と書かれている。
ダビングの日付けは記載されていないが、1980年代初頭と記憶する。

 チューリップファンの中では1980年7月27日に岐阜県鈴蘭高原で開催されたコンサートは、「雨の鈴蘭」と呼ばれ、伝説となっている。
 この「雨の鈴蘭」はチューリップが行なった鈴蘭高原でのコンサートの2回目のもの。第1回目は1978年7月27日に行なわれている。この時は初期メンバーでのパフォーマンスで、その音源は東京の田園コロシアムのコンサートとカップリングでレコード化された。

 2回目となった1980年のそれは、チューリップの転機で、最初のメンバーチェンジを行なった直後のこと。新メンバーの結束を高める意味もこのコンサートにはあったかもしれない。そして、メンバーチェンジを快く思っていないファンもいることから、起爆剤として大きなイベントが彼らには必要だったのかと思料する。

しかし、その思惑は・・・。豪雨の洗礼。

 土砂降りの中、全国各地からのバスツアーの到着時間も遅れ、開演は3時間近くも伸ばされた。そしていくら夏とはいえ、鈴蘭高原の雨は厳しく、気温6度の中、ファンは声を掛け合い開演を待ったという。

 メンバーが登場した午後9時過ぎ、財津和夫からの謝罪のコメントで始まるという異様な中でコンサートは幕を開けた。

 目の前のカセットテープは、どこからか回ってきた『LIVE ACT TULIP in 鈴蘭2』をダビングしたものである。

 この『LIVE ACT TULIP in 鈴蘭2』は、レコードにはならず、ミュージックテープのみ製作され、鈴蘭高原に参加した人に後日配られたものということを最近知った。(後に一般発売されたが大々的に流通はされず、一度CD化されたのみである)

 確かに音は実況中継を聴いているようで、ライブソースというには生々しすぎる。
雨の音が終始入り、メンバーのMC時にはファンから「財津さーん、寒いよー」の声も多く聴くことが出来る。
雨にぬれて電気がショートする音や、雨水を吸ったスネアドラムのバシャバシャといった音が音楽コンサートにとって悲惨な状況を伝えている。

 雨の影響でどんどん音が小さくなり、電源状態も悪くなり、音数も減っていく中、最後までメンバーは必死に演奏している。この時の演奏は鬼気迫るものがあり、バンドの底力を聴くことが出来る。

 後にアンコールなどで盛り上がる歌として認識された「Shooting Star」はこのコンサートのために書き下ろされた作品と財津はコメントしている。
その「Shooting Star」から開始し、30曲もの歌が演奏されている。
 1990年代に「音蔵シリーズ」でこの音源がCD化されたことがある。唯一、一般人に陽の目を見た瞬間だったが、すぐに完売となったようだ。
 この時の映像記録はチューリップのフィルムコンサートや後日販売されたDVDボックスセットの中に収められたが、ろくに照明もつけることが出来ず、暗い画面からは泥水にまみれた客と、雨に濡れながら必死に歌うメンバーの姿がそこにあった。

野外コンサートでは、雨が伝説を呼ぶなどと言われるが、まさに伝説のコンサートである。

 終演は0時を回っており、深夜バスはずぶ濡れのオーディエンスを乗せて山を下った。

(長いMC)
Shooting Star
虹とスニーカーの頃
愛のかたみ
娘が嫁ぐ朝
あなたへのパスポート
セクシー・ぺティキュア~(MC)
博多っ子純情
電車~(MC)
Wake Up
いま、友へ
ここはどこ~(MC)
風のメロディ
一本の傘
青春の影
逃避行
The 21st Century Hobo
Give me a chance
Silent Love
Blue Eyes(この小さな星のうえで)~(MC)
I am the Editor(この映画のラストシーンは、ぼくにはつくれない)
I need you and You
二人だけの夜
あのバスを停めて!
新しい地球をつくれ
ハーモニー
銀の指輪~(MC)
夢中さ君に
魔法の黄色い靴
人生ゲーム
光の環

 その後もチューリップは野外コンサートをたびたび行なっている。

 私の家内は1000回記念コンサート(よみうりランド)やPAGODA(箱根特設会場)に参加しているが、いつも言うことは「雨降らないかな・・・」だった。
過酷な中に特別感を見出しているのだろう。奇跡は起きるから。
しかし、このカセットテープ、誰の音源をダビングしたのかが不明。家内もわからないという。あの当時、鈴蘭に参加した人間からカセットテープを借りたのだろうが…。

雨の鈴蘭に行った人・・・誰?

2019/11/22
花形

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