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TSMCとエヌビディア


韓国メディアの報道によると、AIチップパッケージング市場においてTSMCとASEが主要サプライヤーとして台頭し、急増する需要に対応するため積極的に生産を拡大しています。

TSMCは先進パッケージング技術であるCoWoS (Chip-on-Wafer-on-Substrate)を開発し、NVIDIA、AMD、Microsoft、Google、Amazonなどの大手テクノロジー企業向けに高性能AIチップのパッケージングを行っています需要の急増により、TSMCのCoWoS生産能力が1〜2割不足しているとの報告もあります

一方、ASEはOSAT (Outsourced Semiconductor Assembly and Test)業界で世界最大手の企業であり、半導体後工程のパッケージングとテストを専門としています
TSMCがASEにCoWoS生産の一部を委託したとの情報もあり、両社が協力して需要増に対応していることがうかがえます

サムスン電子などの韓国企業も技術開発と投資を行っていますが、TSMCとASEの先行優位性と規模の経済により、差を縮めることが困難な状況にあるようです。これは、先進パッケージング技術の開発や生産能力の拡大には多大な投資と時間が必要であることが要因の一つと考えられます

この状況は、AIチップ市場における台湾企業の強さを示すとともに、韓国企業にとっては追い上げの難しさを表しています。

補足)半導体後工程とは、半導体の製造過程において、回路部分を作成した後に行われる一連のプロセスです。具体的には、以下のような工程が含まれます:
ダイシング:ウエハー(半導体の素材となる薄い円板)を個々のチップに切り分ける工程です。
ワイヤボンディング:チップをフレームに固定し、金属線で電気的接続を行う工程です。
モールディング:チップを樹脂などで封入し、物理的な保護を施す工程です。
最終検査:製品としての機能を満たしているかを確認するためのテストや品質検査を行う工程です。
これらの工程を通じて、半導体は最終的な製品形態に仕上げられ、市場に出荷される準備が整います。後工程は、半導体の性能や信頼性に直接影響を与えるため、非常に重要なプロセスとされています。また、後工程の技術進歩は、半導体の小型化や性能向上にも寄与しています。

8日の台湾株式市場で、台湾積体電路製造(TSMC)の株価が大幅に上昇し、史上最高値を更新しました。TSMCの株価は前週末比45台湾ドル(4.47%)高の1050台湾ドルまで上昇しました

この上昇の主な要因は、モルガン・スタンレーが7日付のリポートでTSMCの目標株価を1080台湾ドルから1180台湾ドルに引き上げたことです。この目標株価の引き上げを受けて、投資家の間で買いが集まりました。

TSMCの株価上昇は、台湾株式市場全体にも好影響を与え、加権指数は4日連続で上昇し、過去最高値を更新しました。半導体を中心としたハイテク関連銘柄に買いが集中し、台湾株式市場は独歩高の展開となりました。

この動きは、前週末のナスダック上昇も材料視されており、台湾のハイテク産業、特に半導体セクターの強さを示しています

モルガン・スタンレーがTSMCの株価目標を1,180NTドルに引き上げたという情報は、市場におけるTSMCの強気な見通しを示しています。以下にその要点をまとめます:

株価目標と格付けの変更:
株価目標が1,080NTドルから1,180NTドルに約9.3%上方修正されました。
「Overweight(強気)」の格付けが維持されています。
2024年第2四半期の見通し:
TSMCの業績が市場予想に合致すると予測されています。
価格と需要の見通し:
ウェハー価格の上昇傾向が続いています。
SoIC(System on Integrated Chips)3D IC技術への需要が強いとされています。
主要顧客の動向:
Appleは2025年下半期にSoIC 3D IC技術の採用を見込んでいます。
NVIDIAは2028年にSoIC 3D IC技術の採用を見込んでいます。
株価評価:
新しい株価目標1,180NTドルは、2025年のEPSの23倍に相当します。
これらの分析は、TSMCの短期的な安定性と長期的な成長ポテンシャルに対する信頼を示しており、ウェハー価格の上昇傾向やSoIC技術への需要、主要顧客との関係がTSMCの競争力を支えていることを示してます。

補足1)SoIC(System on Integrated Chips)3D IC技術は、TSMCが開発した最先端の半導体パッケージング技術です。この技術は、複数のチップを縦方向に積層することで、チップ間の接続を高密度に行い、システム全体の性能を向上させることができます。具体的には、以下の特徴があります:
高密度のチップ積層:異なる機能やサイズのチップを一つのパッケージ内で積層し、集積度を高めます。
ウェハレベルの接合技術:10ナノメートル以下の先進製程において、ウェハレベルでの接合技術を用いています。
性能とエネルギー効率の向上:トランジスタ密度の増加と消費電力の削減により、性能に対するエネルギー効率が向上します。
3D IC技術の進化:SoICは、従来の2D ICや2.5D IC技術を超える3D IC技術の一形態であり、チップ間の通信速度と帯域幅を大幅に向上させます。
SoIC技術は、AI、クラウドコンピューティング、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットなど、高性能が求められる電子製品に適用されており、半導体業界における技術革新の一環として注目されています12345。この技術により、TSMCは半導体の性能向上と小型化を実現し、摩爾の法則を超える進化を目指しています。

補足2)モルガン・スタンレーが示しているウェハー価格の上昇傾向とSoIC 3D IC技術への強い需要について、以下の情報をまとめました:
ウェハー価格の上昇傾向:
シリコンウェハーの出荷量は、半導体業界の成長に伴い大きな回復を見せており、特に2024年には、5G通信網の拡大や電気自動車の普及、データセンターの需要増加が主な要因となっています
これらの要因により、シリコンウェハーの需要が増加し、供給が逼迫する事態が生じています。その結果、ウェハー価格の上昇が続いていると考えられます
SoIC 3D IC技術への強い需要:
TSMCのSoIC技術は、異なるチップレットを単一のSoCのようなチップに高密度に積層することを可能にする先進的な3D IC技術です3。
この技術は、超高密度垂直積層を特徴とし、高性能、低消費電力、そして最小限のRLC(抵抗-インダクタンス-キャパシタンス)を実現します
Appleは、2025年にTSMCのSoIC技術を採用する予定であり、これはHybrid Molding技術を使用したSoICで、現在小規模な試験生産が行われており、2025年から2026年にかけて量産が開始される見込みです
TSMCは、SoIC技術の生産能力を2026年までに現在の20倍以上に拡大する計画を立てており、これによりAMDに続く大口顧客となる可能性があります
これらの点から、モルガン・スタンレーがウェハー価格の上昇傾向とSoIC 3D IC技術への強い需要に楽観的な見方を示している理由が明らかになります。ウェハー価格の上昇は、半導体市場の需要増加によるものであり、SoIC技術への需要は、その技術革新がもたらす性能向上と効率化に対する市場の期待が高まっていることを反映しています。特に、AppleやAMDなどの大手企業がこの技術を採用することで、その需要はさらに加速すると予想されます。

補足3)アナリストは、TSMCの2024年第2四半期の業績と見通しが市場予想に合致すると予測している。これは、半導体市場の回復と、TSMCの技術的優位性が維持されていることを示唆している。
具体的に説明するとTSMCの2024年第2四半期の業績と見通しについて、アナリストたちは以下のような予測をしています:
業績見通し:
TSMCは2024年第2四半期の売上高を前年同期比で約27.6%増の196億~204億ドルと予想しています
これは、2024年通期で20%台前半から半ばの増収を見込んでいることと一致しています3。
市場回復の兆し:
半導体市場は、AI関連の需要増加や、5G通信網の拡大、電気自動車の普及などにより、2024年に入ってから回復傾向にあります

この回復は、特にサーバー向けの需要増加が牽引しており、PCやその他のエレクトロニクス製品市場も上向きになっています
技術的優位性:
TSMCは、微細加工技術において業界をリードしており、7nm、5nm、さらには3nmプロセスの量産に成功しています
この技術的優位性は、TSMCがファウンドリ市場で約60%のシェアを独占し、他社を引き離している要因の一つです
以上の点から、TSMCの2024年第2四半期の業績は、市場予想に合致すると同時に、半導体市場の回復とTSMCの技術的優位性が維持されていることを示していると言えます。

UBSによるNVIDIAの株価目標の引き上げは、同社の製品に対する市場の強い信頼と期待を反映しています。以下にその要点をまとめます:
株価目標の引き上げ:
UBSアナリストのTimothy Arcuriは、NVIDIAの株価目標を120ドルから150ドルに引き上げました。
引き上げの理由:
Blackwellラックスケールシステムの需要が堅調であること。
NVL72/36システムの受注パイプラインが拡大していること。
業績予想の上方修正:
2025年の売上高予想を約2,040億ドルに、EPSを約4.95ドルに上方修正しました。
市場の期待値とUBSの見方:
UBSの予想はウォールストリートのコンセンサスを上回っています。
株価に対するセンチメントがやや弱まっていると分析しています。
格付けと評価の基準:
NVIDIAに対する「買い」の格付けを維持しています。
2025年/2026年暦年のEPS平均を評価の基準としています。
これらの分析は、NVIDIAのAI関連製品に対する市場の強い需要と、それに伴う業績拡大の期待を示しています。投資家は、楽観的な見方と潜在的なリスクのバランスを慎重に見極める必要があります。また、NVIDIAの今後の四半期決算と業績ガイダンスが市場の期待に応えるかどうかが、株価動向の鍵となります

補足1)NVIDIAのBlackwellラックスケールシステムは、AIモデルのトレーニングと推論を大規模に行うためのプラットフォームです。以下にその主な特徴をまとめます:
Blackwell GPUアーキテクチャ:
アクセラレーテッドコンピューティングのための6つの革新的なテクノロジを備えています。
データ処理、エンジニアリングシミュレーション、電子設計自動化、コンピューター支援医薬品設計、量子コンピューティング、生成AIなど、多岐にわたる業界でのブレイクスルーを実現します
GB200 Grace Blackwell Superchip:
2つのNVIDIA B200 TensorコアGPUとNVIDIA Grace CPUを接続する超低消費電力のNVLinkチップ間インターコネクトを介して構成されています。
LLM(Large Language Models)推論ワークロードに対して、NVIDIA H100 TensorコアGPUと比較して最大30倍のパフォーマンス向上を実現し、コストとエネルギー消費を最大25倍削減します
水冷ラックスケールシステムNVL72:
第5世代NVLinkで接続された72個のBlackwell GPUと36個のGrace CPUを含む36個のGrace Blackwellスーパーチップを搭載します。
これにより、最も計算集約的なワークロード向けのマルチノード水冷ラックスケールシステムを実現し、高度なAIクラウドでのクラウドネットワークアクセラレーション、コンポーザブルストレージ、ゼロトラストセキュリティ、GPUコンピューティングの弾力性を提供します1。
Blackwellラックスケールシステムは、AIの新時代を推進するためのNVIDIAの最先端技術を集約したプラットフォームであり、数兆パラメータ規模のAIモデルを実現することが可能です。これにより、あらゆる組織がコストとエネルギー消費を大幅に削減しながら、リアルタイム生成AIを構築および実行できるようになります。

補足2)NVIDIAのBlackwell GPUアーキテクチャは、生成AIとアクセラレーテッドコンピューティングに革命をもたらすことを目的とした、最新のテクノロジーを搭載したプラットフォームです。以下にその主な特徴をまとめます:
2080億個のトランジスタ:
Blackwell GPUは、2080億個のトランジスタを搭載し、カスタムビルドされたTSMC 4NPプロセスを使用して製造されています1。
10TB/秒のチップ間相互接続:
すべてのBlackwell製品は、統合された単一GPUで、10TB/秒のチップ間相互接続によって接続された2つのレチクル限定ダイを備えています
第2世代Transformer Engine:
新しいマイクロテンソルスケーリング技術を利用して、大規模言語モデル(LLM)と混合エキスパート(MoE)モデルの推論と学習を加速します。これにより、メモリがサポートできる次世代モデルの性能とサイズが2倍になります
セキュアAI:
NVIDIAコンフィデンシャルコンピューティングが導入されており、ハードウェアベースの強力なセキュリティで機密データやAIモデルを不正アクセスから保護します
第5世代NVLink:
数兆パラメーターAIモデルのパフォーマンスを加速するために、GPUあたり1.8TB/秒の革新的な双方向スループットを実現し、最も複雑なLLM向けに最大576基のGPU間のシームレスで高速な通信を保証します
RAS(信頼性、可用性、保守性)エンジン:
Blackwell搭載GPUには、信頼性、可用性、保守性を高めるための専用エンジンが含まれており、AIベースの予防保守を利用するチップレベルの機能を追加し、診断を実行し、信頼性の問題を予測します
解凍エンジン:
専用の解凍エンジンは最新の形式をサポートし、データベースクエリを高速化し、データ解析とデータサイエンスで非常に高いパフォーマンスを達成します
これらの特徴により、Blackwellアーキテクチャは、生成AIの次の時代を明確に定義し、データ処理、エンジニアリングシミュレーション、電子設計自動化、コンピューター支援医薬品設計、量子コンピューティング、生成AIなど、多岐にわたる業界でのブレイクスルーを実現します

補足3)NVL72/36システムは、NVIDIAが開発した水冷式ラックスケールソリューションで、72個のBlackwell GPUと36個のGrace CPUを1つのラックスケールデザインで接続することができます。このシステムは、兆単位パラメーターLLM(Large Language Models)推論のリアルタイム性を30倍高速化し、GB200 Grace Blackwell Superchipを主要コンポーネントとして使用しています1。
GB200 NVL72は、以下のような特長を持っています:
エクサスケールAIスーパーコンピューター:1つのラックに収められたエクサスケールコンピューティング能力を持ち、AIワークロードとHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)ワークロードで毎秒130テラバイトの低遅延GPU通信を提供します。
高い電力効率:水冷システムを採用しており、データセンターの二酸化炭素排出量とエネルギー消費を削減します。NVIDIA H100空冷インフラと比較して、同じ電力でパフォーマンスが40倍になり、水の消費量を大幅に削減します。
データ処理の高速化:高帯域幅メモリ性能のNVLink-C2CとNVIDIA Blackwellアーキテクチャの専用Decompression Engineを活用し、CPUと比較して重要なデータベースクエリを18倍高速化し、TCO(総所有コスト)を5倍にします。
このシステムは、大規模なAIモデルのトレーニングとデプロイメントにおいて、計算効率、費用対効果、エネルギー効率に優れたソリューションを提供することを目的としています。特に、Mixture of Experts(MoE)モデルのような大規模なモデルを効率的にトレーニングするために設計されており、数千ものGPUを使用してトレーニングする際のシステムの効率性を高めることができます

補足4)NVIDIAのBlackwellラックスケールシステムの需要が堅調である理由は、その革新的な技術と、科学コンピューティングの領域での応用可能性にあります。以下にその詳細をまとめます:
科学コンピューティングへの影響:
Blackwellプラットフォームは、量子コンピューティング、創薬、核融合エネルギーなど、人類に恩恵をもたらすさまざまな分野で科学コンピューティングと物理ベースのシミュレーションを進化させています
コストとエネルギーの削減:
Blackwellは、NVIDIA Hopperアーキテクチャに比べて、LLMによる生成AIを最小1/25のコストとエネルギー使用量で実現します1。
シミュレーションの強化:
Blackwell GPUは、倍精度形式(FP64)でのシミュレーションを含む、あらゆる種類の科学コンピューティングアプリケーションで発見をもたらすのに貢献しています1。
幅広い産業への応用:
Blackwellアーキテクチャは、データ処理、エンジニアリングシミュレーション、電子設計自動化、コンピューター支援医薬品設計など、多岐にわたる業界でのブレイクスルーを実現しています2。
主要クラウドプロバイダーとの採用:
すべての主要クラウドプロバイダー、サーバーメーカー、大手AI企業がBlackwellプラットフォームを広く採用しています2。
これらの点から、Blackwellラックスケールシステムの需要が堅調であることが理解できます。特に、科学コンピューティングの進歩に寄与し、コストとエネルギーの削減を実現することで、多くの企業や研究機関からの関心が高まっています。また、その技術的能力により、従来の数値シミュレーションを超えた発見をもたらすことが期待されています。


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