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終着駅

山形新幹線の終点は新庄である。

奥の細道最上川ラインの愛称で親しまれる、

陸羽西線に乗り換える。

盆前に帰省する度、ディーゼルのガガーと

いうエンジン音に揺られながら、車窓の風

景に、目を移す。

高屋を越えた辺りで、白糸の滝が見えてくる。

日本の滝百選の一つで、草薙温泉の対岸に位

置する。

芭蕉の句で有名な、最上川の雄大な景色が、

現れてくる。

「五月雨を集めて早し最上川」

途中の清川まで、この景色が楽しめる。

次の狩川で下車すると、私の実家近くである。

鳥海山が目の前に開けてくる。

出羽富士と呼ばれ、標高2236mの雄大な

山並みに、ようやく帰ってきたと、実感する。

育った土地と言うものは、人間形成に抜き差

しならない影響を残すものであると、藤沢周

平が書いた話を、思い出す。

十年前、映画『おくりびと』のロケが酒田で

あった。主役の本木雅弘が、鳥海山をバック

にチェロを弾くシーンが映し出されると、

なぜか涙がこみ上げてきた。いつも見慣れた

田んぼの風景が、こんなにも魂を揺さぶられ

るものか。

カミさんも、この映画をTVで放送される度

に、「鳥海山が出てくるシーンが特に、印象

に残っているは」と語る。

結婚して間もない頃、よく親父が、地元の名

所旧跡をドライブして、カミさんを案内して

くれてた事を思い出した。
田舎の人間は、東京から来た人を、もてなす

のが楽しいらしく、実に生き生きとしていた。

あれが唯一、自分が出来た、親孝行だったの

かもしれない。

カミさんがお気に入りだった。

親父が旅立ってから、2、3年後に見ただけ

に、作品の世界観に共感したと感じた。

とにかくありがとうございます。