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そのままで良い

私の町に小さなスナックがある。
本当に何もない町で、
セブンとドラッグストアが1件づつ。
あとは小さな居酒屋が3件ぐらい。
住宅街で、小学校があるだけ。

駅は一応あるけど、1時間に3本ぐらい。
22時には終電になる。

そんな小さな町にある唯一のスナック。

私はこの町に育って、結婚してまたこの町に
戻ってきた。
子供の頃から、そのスナックはあった。

去年、生まれて初めてそのスナックに行った。

昭和のままの店内。
お通しはママの手作りの餃子だった。
22時過ぎに、餃子はちょっと重かった。

ママは40年以上、この店をやっているらしい。
私が幼稚園に通っている時も
ママはこの店をやっていた。

ママは、
「ニコニコしてて明るくて良いね」
と私を褒めてくれた。

私は、ニコニコしてると舐められるから
あまり良いとは思わない。

明るくて良いねというのも、
私はあまり良くないと思っていた。
「悩みなさそうでいいね」って
よく言われて嫌だったから。

ママは
「この子は腰が低くて、優しい」
って、言ってくれた。

でもそれは、扱いやすくて逆らわない
会社にとっては、こき使いやすい人だったと思う。

私は、それが嫌で、
そんな風に扱われる自分が可哀想になって、
会社を辞めた。

そんな自分が嫌だから、
舐められない人、
物事を頼みやすい人、
お願い事を断らない人、
なんでも「いいよ」っていう人、
そういうの、全部変えたと思った。

ママは、変えたい所を褒めてくれた。
そのままで良いと言ってくれた。

40年、スナックをしてるママは
色んな人を見てきて、
そんな人が、私を褒めてくれた。

変わらなくちゃというプレッシャーから
救われた。
このままで良いんだって。

私はこのままで良い。








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