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ビジョンプロセシング――ゴールセッティングの呪縛から脱却し「今、ここにある未来」を解き放つ

「答えがないのに、ゴールを示すべき」
というジレンマを、誰もが抱えている

そのビジョンは、「現在の自分たち」を勇気づけ、
主体性と創造性を解放しようとしているか?
日々のプロセスを問い直すものとなっているか?

自己変容×イノベーションを起こす“U理論”第一人者が
人と組織における長年の実践から編み出した
「不確実な未来との向き合い方」

社会がますます複雑になり、予想外の状況が次々と起こるなかで、将来の見通しはますます不確実なものになっています。
一方で、多くの組織では「うちの会社はビジョンがない」「もっと魅力的なビジョンをつくるべきだ」というプレッシャーが、特にリーダーや経営層にのしかかっています。
このような状況下で、私たちはどんなふうに未来と向き合えばよいでしょうか?

その問いにひとつの方向性を示すのが「ビジョンプロセシング」です。
誰かが魅力的なビジョンを設定してくれるのを待つのではなく、1人ひとりが「ほんとうに大切なもの」を問い直し、日々の仕事・生活のなかで未来と向き合う「プロセスとしてのビジョンの見つめ方・捉え方」を提案します。


📚book review

中土井僚の『ビジョンプロセシング――ゴールセッティングの呪縛から脱却し「今、ここにある未来」を解き放つ』は、従来のゴールセッティング(目標設定)の概念を再評価し、それに代わる新たなアプローチを提案する本です。著者は、目標設定が時として個人や組織の成長を妨げる要因になるとし、その理由を詳細に説明します。中土井氏は、目標に縛られることなく、「今、ここにある未来」にフォーカスすることで、より柔軟で創造的なビジョンを実現する方法を解説します。

本書の前半では、ゴールセッティングがもたらす弊害やその背景について深掘りしています。多くの人々が目標達成に向けて努力する一方で、そのプロセスがストレスやプレッシャーを生み出し、結果として本来の目的から逸れてしまうことがあると述べています。特に、目標が達成できなかった場合の失望感や挫折感が強調されており、これが長期的なモチベーションの低下につながると指摘します。

次に、中土井氏は「ビジョンプロセシング」という新しい概念を提案します。これは、具体的な目標を設定するのではなく、自分自身や組織が持つビジョン(未来像)に基づいて行動するアプローチです。ビジョンプロセシングは、常に変化する状況に適応しやすく、創造的な思考を促進するため、長期的な成長と成功に繋がると主張します。

具体的な方法論としては、以下のようなステップが挙げられます:

1. 内省と自己理解 自分自身の価値観や信念を深く理解し、それを基にビジョンを形成する。
2. 柔軟な計画 固定的な目標設定ではなく、状況に応じて柔軟に対応できる計画を立てる。
3. 継続的なフィードバック 自分の進捗を常に評価し、必要に応じてビジョンや計画を見直す。
4. 協力と共創 他者との協力を重視し、共に成長することを目指す。

評価

強み

『ビジョンプロセシング』の最大の強みは、その斬新な視点にあります。従来の自己啓発書が目標設定を重視する中で、中土井氏はその弊害に焦点を当て、新たなアプローチを提案しています。この視点は、多くの読者にとって新鮮であり、目標設定に疲れたビジネスパーソンやリーダーにとって特に有益です。

また、具体的な方法論が豊富に紹介されている点も評価できます。読者はただ理論を学ぶだけでなく、実際の生活や仕事に応用できる具体的なステップを知ることができます。これにより、読者は自身の状況に合わせて柔軟にビジョンプロセシングを実践することができます。

さらに、中土井氏の文章は平易で読みやすく、多くの事例を交えているため、内容が理解しやすい点も魅力です。彼の経験や知識に基づいた具体的な例が多く紹介されており、読者は理論と実践の橋渡しがスムーズに行えるでしょう。

弱み

一方で、本書の弱みとしては、ビジョンプロセシングがすべての状況に適用可能であるかどうかが明確でない点が挙げられます。特に、短期的な目標が重要な場面や、明確な成果が求められる状況においては、ビジョンプロセシングのアプローチが効果を発揮しにくい可能性があります。この点については、もう少し具体的なガイドラインや例示があれば、読者にとってより実践的な内容となったかもしれません。

また、ゴールセッティングの完全な否定ではなく、その利点も認めた上でのバランスの取れた議論があれば、より多くの読者に共感を呼ぶことができたでしょう。中土井氏のアプローチは革新的である反面、従来の方法論を完全に否定することで、一部の読者には抵抗感を与える可能性があります。

著者の目的と視点

中土井僚氏の目的は、読者が自己の限界を突破し、より自由で創造的な人生を送る手助けをすることです。彼は、目標設定に縛られず、自分自身のビジョンに基づいて行動することで、個人の成長と幸福が実現できると信じています。彼の視点は、人間の可能性を最大限に引き出すことを重視しており、そのための具体的な方法論を提供することに力を注いでいます。

全体として、『ビジョンプロセシング――ゴールセッティングの呪縛から脱却し「今、ここにある未来」を解き放つ』は、従来の自己啓発書とは一線を画す斬新な視点と具体的な方法論を提供する一冊です。目標設定に疲れた読者や、新たなアプローチを模索するビジネスパーソンにとって、非常に有益な内容となっているでしょう。

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