見出し画像

経営戦略としての異文化適応力 ホフステードの6次元モデル実践的活用法

IQ、EQに次ぐ第3の知性として注目されている「CQ:異文化適応力」。CQの高い組織はクリエイティビティが高く、イノベーションが起こりやすくなるといわれます。多様な文化や価値観を理解し、CQの高い組織を築き、組織を成長に導く方法とは


CQとは、文化的背景の異なる人と協働して成果を出す力のことで、自分と文化の異なる相手との間に橋を架けることができます¹。CQは以下の4つの能力で成り立っています²。

- 動機:文化的多様性や自己実現に喜びを見出すことができる興味、関心、自信に関する領域。
- 知識:複数の文化間の類似点と相違点に関するビジネスや文化、宗教等の知識を問う領域。
- 戦略:文化的に多様な経験を理解する異文化間の交渉でのプランニング力、調整力を問う領域。
- 行動:言語的行動、非言語的行動を文化的文脈に適応させる力を問う領域。

CQの高い組織は、多様な文化や価値観を理解し互いを認め合い、新たな組織文化をつくっていくことができます。これによって、クリエイティビティやイノベーションが促進され、組織の成長につながります³。

CQを高める方法としては、異文化に興味を持ち理解を深め、具体的な適応方法を考えて実際に行動し、内省するというサイクルを繰り返すことが効果的です⁴。また、ホフステードの6次元モデルなどを参考にして、自分と異なる文化の特徴や違いを可視化することも役立ちます。

CQは、21世紀のエッセンシャルスキルと言われており、グーグルやコカ・コーラなどの世界先端の組織がCQ研修を取り入れています。あなたもCQを高めて、多様性のある組織で活躍してみませんか?

本の基本情報

本書は、国民文化・組織文化研究の世界的権威であるヘールト・ホフステード博士が考案した「6次元モデル」を用いて、異文化間のコミュニケーションやマネジメントの問題を解決する方法を紹介した実践書である。著者は、ホフステード博士認定ファシリテーターであり、多国籍企業での経験を持つ宮森千嘉子氏と宮林隆吉氏である。本書は、2019年に日本能率協会マネジメントセンターから出版された。

本の内容の要約

本書は、以下の5つの章から構成されている。

第1章では、CQ(文化の知能指数)という概念を紹介し、多様性のなかを生きるために必要な能力として説明する。また、文化とは何か、文化の構造、カルチャーショックと異文化対応カーブ、国民文化と組織文化の違いなどについて解説する。

第2章では、ホフステードの6次元モデルの概要と各次元の意味を説明する。6次元とは、権力格差、集団主義/個人主義、女性性/男性性、不確実性の回避、短期志向/長期志向、人生の楽しみ方であり、それぞれが国や地域によって異なる価値観を表す。各次元について、日本と他国の比較や具体的な事例を挙げて説明する。

第3章では、事例で見る6次元モデルの分析という形で、実際のビジネスにおけるチャレンジを紹介する。事例は、日米M&Aプロジェクト、ある駐在員の憂鬱、大学留学先でのチーム・プロジェクト、マレーシア人シャリファの葛藤の4つであり、それぞれにおいて6次元モデルを用いて問題の原因と対応策を分析する。

第4章では、6つのメンタルイメージとマインドセットという観点から、国によって異なる暗黙の組織モデルと調整機能を紹介する。メンタルイメージとは、コンテスト、ネットワーク、油の効いた機械、人間のピラミッド、太陽系、家族の6つであり、それぞれが異なる組織のあり方やリーダーシップのスタイルを示す。また、日本のメンタルイメージについても考察する。

第5章では、CQを高めるための実践法として、CQを高めるステップや有効な手法を紹介する。また、CQの高い組織の事例として、ベルギー・メヘレン市の取り組みを紹介する。最後に、ホフステード博士との対談を掲載する。

本の評価

本書は、異文化理解のための有用なフレームワークであるホフステードの6次元モデルを、わかりやすく具体的に紹介した本である。本書の強みは、以下の3点にあると考える。

- 6次元モデルは、国や地域によって異なる価値観を数値化し、比較しやすくしたものである。このモデルを使うことで、自分の文化と他の文化との違いや類似点を客観的に把握することができる。また、このモデルは、50年以上にわたる研究と実証に基づいており、信頼性が高い。
- 本書は、6次元モデルの理論だけでなく、実際のビジネスや生活における事例や対応策を豊富に紹介している。これにより、読者は、自分の経験や課題に照らし合わせて、モデルの有効性や応用性を感じることができる。特に、日本と他国との比較や、日本独自のメンタルイメージについての考察は、日本人の読者にとって興味深いものである。
- 本書は、CQを高めるための実践法や事例を提供している。CQとは、文化の知能指数という意味であり、多様性のなかを生きるために必要な能力である。本書は、CQを高めるためのステップや手法を紹介し、CQの高い組織の事例を紹介することで、読者にCQの重要性と実現可能性を示している。

本書の弱みとしては、以下の点が挙げられる。

- 6次元モデルは、国や地域という大きな単位で文化を分析しているが、個人や組織のレベルでは、そのモデルに当てはまらない場合もある。つまり、6次元モデルは、文化の傾向や特徴を示すものであり、すべての人や組織に一様に適用できるものではない。そのため、6次元モデルを使うときは、個々の状況や背景にも配慮する必要がある。
- 本書は、6次元モデルを用いた異文化対応の方法を紹介しているが、その方法が必ずしも最適なものであるとは限らない。異文化対応には、多くの要因や変数が関わるため、一つのモデルや方法に頼るだけではなく、柔軟に対応する能力も必要である。そのため、本書の内容を鵜呑みにするのではなく、参考として活用することが望ましい。

自分の感想やおすすめの理由

私は、本書を読んで、異文化理解のための有効なツールを学ぶことができたと感じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?