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今日はライバルが手を結ぶ日‼️ 1866年(慶応2年)のこの日、薩摩藩の西郷隆盛と小松帯刀、長州藩の木戸孝允(桂小五郎)らが土佐藩の坂本竜馬らの仲介で京都で会見し、倒幕のために薩長同盟(薩長連合)を結びました。

町田 明広
薩長同盟論: 幕末史の再構築


薩長同盟』書評:幕末史の再構築」町田明広著

薩長同盟:薩長同盟-幕末史の再構築』は、神田外語大学教授で日本近現代史を専門とする町田昭弘氏の著書である。2018年に神文書院から刊行され、265ページ。本書は、幕末の倒幕と明治維新に重要な役割を果たした2つの豪族、薩摩藩と長州藩の同盟に関する歴史研究である。本書は、薩長派閥論や司馬史観といった従来の薩長同盟観に疑問を投げかけ、一次資料の綿密な調査と当時の政治状況の総合的な分析に基づく新たな解釈を提示している。

本書は、薩長同盟に関連する特定の時代や出来事に焦点を当てた9つの章から構成されている。第1章では、1862年の寺田屋事件から1864年の禁門の変に至るまで、薩摩と長州の対立の過程をたどり、両藩の軍事的対立を明らかにする。第二章では、1864年の第一次長州遠征と、長州との平和的解決を主張した薩摩の名将西郷隆盛の反対について考察する。第3章では、中央政局の変化と、長州と縁戚関係にあった若狭藩酒井氏と周防藩岩国氏を中心とする薩長和解運動の開始を探る。第4章では、薩摩と長州を仲介し、1865年に長州の政治家・木戸孝允と西郷の会談を実現させた土佐のカリスマ、坂本龍馬の登場を紹介する。第五章では、長州による軍需物資の購入と薩摩の協力について、海軍省の利用や他藩からの名義借用などを交えて論じている。第六章では、第二次長州遠征の問題と、幕府と薩摩の対立の原因となった通商条約の勅許について述べる。第7章では、同じく長州のリーダーである桂小五郎の京都到着と幕府・薩摩の反応について述べる。第8章では、坂本龍馬と薩摩の黒田清隆の長州派遣とその実態が描かれる。第9章では、薩長同盟の正式な合意文書とされる「小松・木戸覚書」(1866年、薩摩代表の小松帯刀と木戸が署名)の成立と意義を明らかにする。

本書は、薩長同盟を批判的な視点から評価し、それが明確な「軍事同盟」ではなく、小松と木戸の間の「覚書」であり、両藩の異なる動機と利害を反映したものであったと主張する。本書はまた、同盟が円滑で継続的なプロセスではなく、むしろ複雑で偶発的なものであり、幕府の政策、朝廷、諸外国、他藩、個々のアクターなど、さまざまな要因に影響されたことを実証している。本書はまた、薩摩と長州の間の意思疎通と交渉を促進した坂本龍馬の役割や、両藩の協力の手段と機会を提供した海軍省の役割にも焦点を当てている。

本書は、一次資料、特に薩摩関係資料の厳密かつ綿密な調査と、政治動向の精緻かつ多角的な分析に基づいており、歴史学としても注目すべき著作である。本書はまた、論理的かつ年表的な構成と、出来事や人物の豊かで詳細な描写によって、明快でわかりやすい文体で書かれている。薩長同盟の人間ドラマと歴史的意義を明らかにする本書は、情報量と洞察力に富んでいるだけでなく、人を惹きつけ、魅了する。

これまで漠然とした表面的な知識しかなかった幕末史や薩長同盟について多くを学ぶことができ、とても楽しく読むことができた。著者の博識と独創性、そしてこのテーマに対する情熱と熱意に感銘を受けた。また、自分の研究の限界と課題を認め、他の学者や読者からのさらなる議論と研究を呼びかける著者の誠実さと謙虚さも高く評価した。幕末、明治維新、薩長同盟に関心のあるすべての人に、本書を強く推薦したい。



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