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23時の軽井沢#最終話

事件から五年が経った。

和が部屋の奥から声をかけてきた。「○○~!今日、東京に取材行くんでしょ~?夜の電車だよね?早くお風呂入って用意してよ!」

○○はゲームの画面に集中しながら答えた。「まだ時間あるから…」

和は笑いながらため息をつき、「早くしてよ。洗濯しちゃいたいんだから。」車いすで部屋に入ってくると、○○を軽く睨んだ。

「また新幹線に乗り遅れたら、今度こそ私も怒るからね~?」

和は今、車いすでの生活をしている。あの日の事件で、命に別状はなかったが、下半身に大きな影響を受けた。しかし彼女はいつも笑顔で、「これが私のやってきたことに対する罰だよ」と、明るく振る舞い続けていた。事件を経てお互いの気持ちを確かめ合った○○と和は交際を始め、今年ついに籍を入れた。○○は軽井沢に戻り、和が生活しやすいように平屋の一軒家を建て、二人で穏やかに暮らしている。○○は変わらずライターの仕事をしながら、最近は都市伝説をテーマにYouTubeチャンネルを開設し、意外な人気を得て収入も増えていた。和は現在も絵を描き続け、さらに全国の学校でいじめ防止の講演を行っている。

一方で、あの事件の後、アルノと瑛紗はすぐに警察に捕まった。アルノは現行犯で傷害罪が適用され、懲役五年が求刑された。瑛紗も筆跡鑑定の証拠が揃っていたため、殺人を含む様々な罪で即逮捕された。

「そういえば、今日だよな?」○○がふと尋ねる。

和が一瞬考え込み、「アルノさんの出所?」と尋ね返す。

「うん」

和は静かに頷いた。「きっと家族が迎えに行ってると思う。私は今度、ちゃんと謝りに行こうと思ってるの。」

○○は驚いたように彼女を見つめた。「警察の人も、近づかないほうがいいって言ってたよ?」

「わかってるけど、やっぱり私も直接謝らないといけないと思う。もうお互い車いすだから、怖くないよ」

○○は少し心配そうに和を見つめるが、それ以上は何も言わずにため息をついた。その時だった。

突然、部屋がバチンと音を立て、電気が消えた。

「きゃあ!何これ?」和が少し怯えたように声を上げた。

「ブレーカーが落ちたんだな。つけてくるから、じっとしてて」と○○がブレーカーを戻しに向かう。

そして、部屋の明かりが戻ると、和が何かを見つけたように驚きの声をあげた。「なにこれ!?」

「どうしたの?」

和は指で指し示した。「ほら、私が最近描いたこの家の絵の隅に…『つぎはここ』って書いてある…」

○○はくすりと笑った。「お前が間違えて書いたんじゃねぇの?」

「そんなわけないでしょ~」と、和が頬を膨らませて反論した。そのやりとりに、思わず二人で笑い合った。

時計が、深夜の二十三時を回る。どこからか冷たい風がふと、二人の部屋を通り抜けていった。

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