マガジンのカバー画像

キタダヒロヒコ詩歌集

196
三重県で詩や短歌、俳句を花びらのように書き散らしてきました。noteマガジンにまとめていきます。ぜひお読みいただけましたら嬉しいです。あなたのどこかに残る言葉がありますように。
運営しているクリエイター

#サポート

キタダヒロヒコ詩歌集 134 10代の頃の詩より① 頭上に月

 頭上に月    キタダヒロヒコ えぬ子はカアペットのうへで猫になりながら犀星の顔の皺を伸ばしてゐた。手つきが可憐だつた。こしこしと擦られては丁寧に伸ばされていく犀星の皺のはうでも、満更でもない様だつた。「犀星の皺つて……」えぬ子は呟いた。「いゝわね。」わざと僕は聞かなかつた。「そんなら。」と朔太郎の顔を床に置いた。「いや。」えぬ子はあからさまに顔を曇らせて、朔太郎の顔に突つ伏した。湿つた音を立てて何度も接吻した。それから僕に飛び付いて、倒壊した僕の太腿を朝まで舐めてゐた。

キタダヒロヒコ詩歌集 133 夜行列車十首 その➂

 沼津を出れば眠ってしまう。やがて神奈川県内へ。車内アナウンスは貴重品盗難への注意の呼びかけを最後に途絶えた。…… 6 「横浜です」のアナウンスに目輝かせ旅の疲れも忘れむ、友よ!  4時05分。「おはようございます。」の車内放送。まもなく横浜着を告げる。 7 4時12分青く明け来し川崎の冷気の中をわが汽車は行く  4時08分横浜着、同09分発。川崎には停車しない。あと東京まで停車駅は品川と新橋のみ。もう空はあおみを帯びはじめた。皆起きはじめている。横浜のアナウンスに胸

キタダ詩歌集再録Ⅵ プーさんの手術(オペ)

noteを始めたころに投稿して、あまり多くの方に読まれていない作品を再録してアップします。 お読みいただいたあと、引用部の「スキ」をぽちっとしていただけたら喜びます笑。あ、コメント欄は宝物ですので、ぜひ一言お願いします! では、きょうはこの短歌を。 コメントやスキをお待ちしています! サポートやオススメをいただけると、とてもとても嬉しいです。

キタダヒロヒコ詩歌集 128

火の速度で近づいてきて去つた影はどの雲かもうわからないけど コメントやスキ、お待ちしています。 サポートやオススメ、記事紹介などしていただけるととてもとても嬉しいです!

キタダヒロヒコ詩歌集 127 JR参宮線宮川駅

  JR参宮線宮川駅     キタダヒロヒコ 名にし負ふ宮川の橋わたらひて伊勢よりかへり来る車両かな 緑蔭に各駅停車(ローカル)停まり若き日の教へ子たちが手を振りてゐつ 昼もなほ改札に駅員無きをくぐりて吾も手を振りにけり 笑つてゐたのであらう 誰だかはわからなかつた かげになづんで 「見はるかす伊勢の大野」を日々よぎりやがて見えなくなるあなたたち コメントやスキ、お待ちしています。 サポートやオススメ、記事紹介などしていただけるととてもとても嬉しいです!

キタダヒロヒコ詩歌集 126 すなとけい 

すなとけいたふせはおつるすなのかさふしのかたちにかたふきにけり ※漢字変換の一例 (砂時計倒せば落つる砂のかさ富士の形に傾きにけり) とめとなくまさこはおちてさらさらとまさこのふしのみねくつれけり (止めどなく真砂は落ちてさらさらと真砂の富士の峰崩れけり) すなとけいたふせはすなのおちはててまさこはつかにさかにのこれり (砂時計倒せば砂の落ち果てて真砂はつかに坂に残れり) はつかに…古語で「僅かに」の意。 コメントやスキをお待ちしています。 紹介記事を書いてくださ

キタダヒロヒコ詩歌集 125 土蜘蛛 

 土蜘蛛     キタダヒロヒコ はるかなるセンベイ布団の夜の底で這ひまはりゐた土蜘蛛である Deutsch語の辞引を閉ぢて瞑想し女性名詞の物ら恋ふらし 垂直に頭をもたげ起床せり朝へ打ち込む棒杭のやうに コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。

キタダヒロヒコ詩歌集 123 うつくしい真昼

 うつくしい真昼     キタダヒロヒコ はこばるる途中みづから落ちしかばいつも真昼は深くうつくし ほどけさうな雲のまうへにゐるやうだ まだ知られざる悪を為すとき コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。

キタダヒロヒコ詩歌集 120 産ぶすなの

産ぶすなの映画館古(ふ)り機械古りわれらも古りて、かたかた語る    キタダヒロヒコ コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。

キタダヒロヒコ詩歌集 119 絶唱へ昇つてしまふ前に

絶唱へ昇つてしまふ前にくれ、信じておかねばならぬ言葉を    キタダヒロヒコ コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。

キタダヒロヒコ詩歌集 118 20代の頃の歌より② 名にし負はばいざ三月に 

なにしおははいささんくわつにみつきはのほてるやよひてきしよみたれよ    キタタヒロヒコ (名にし負はばいざ三月に水際のHOTELやよひできしよみたれよ) きし…義姉、技師、義肢、義子、義士、義歯、騎士、棋士、岸、既視 など てきし…敵視、溺死 など みたれよ…乱れよ、見たれよ など コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。

キタダヒロヒコ詩歌集 117 20代の頃の歌より① 二人の少女のこと 

うるりけは山で死んだ子ぺくふぁは海へ短銃を抱き海を見にゆく    キタダヒロヒコ コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。

キタダヒロヒコ詩歌集 116 

宇宙より地にふりし塵かりそめに僕、きみ、ワタシ、あなたと言へり    キタダヒロヒコ ふりし…降りし 経りし 古りし など コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。

キタダヒロヒコ詩歌集 114 塔

睡りあさきなづきかづきて切々とまた登り来る十代の塔 今日アイツ、スナオやつたわなどと言ひ従順と素直と同義だつたか ゆるされてゐるのはたぶんこのわたし 生徒等の目のふかき海色 コメントやスキをお待ちしています! サポート&オススメしていただけると光栄です。