マガジンのカバー画像

キタダヒロヒコ詩歌集

196
三重県で詩や短歌、俳句を花びらのように書き散らしてきました。noteマガジンにまとめていきます。ぜひお読みいただけましたら嬉しいです。あなたのどこかに残る言葉がありますように。
運営しているクリエイター

#キタダヒロヒコ

キタダヒロヒコ詩歌集169 瞳

いさかひを夜が聴いてたしんしんしんしんしんしん窓が開いてた瞳のやうに

キタダヒロヒコ詩歌集167 火

火の速さで近付いてきて去った影はどの雲かもう分からないけど

キタタヒロヒコ詩歌集166 祖国

うふすなのうみにやすらふおれたちのかくもやさしき祖国こそ散れ

もうすぐ、ある。

新年の楽しみな予定。 「教育文芸みえ」(休刊から早や10年以上…全国でいちばん最後まで残っていた教職員の文芸誌でした)の短歌欄でつながった皆さんと、1年ぶりの歌会をします。 1月5日しめきりで、ひとり3首の出詠。とりまとめ役はわたしです(笑)。皆さんの歌が楽しみ❗わたしキタダはといえば…今のところできたのはなんだかうら悲しい歌ばかりなので、旧作も交えて「この歌がどう読まれるか?」というのを出したいと思っています。 大正九年盲ひし祖父のまなうらの大正九年の蝶のはためき

キタダヒロヒコ詩歌集 165 刻印

あなたに見せたい言葉がある あした あなたに贈りたい また一篇の詩 あなたはいつも読書の手を停めて わたしからの言葉に目を落してゐる そしてなんの飾りもない すきとほつたクリアファイルごと持ちかへる あなたの部屋のどこかに わたしの言葉が蔵はれ しづかに積もる ああわたしのどの言葉が あなたのなかに残つてゐるか 刺さつてゐるか 刻印されてゐるか TATTOOのやうに 鈍感をよそほひ あなたはわたしの目論見を おそらく知つてゐよう のびやかにもひつそり潜く海女

キタダヒロヒコ詩歌集 164 Inspire from A. 2

蜻蛉玉は覚えてゐる 1200度の息を吹き掛けられ ぽとり、と落ちた日のことを 自分を吹き落とした男の顔を かつてわたしは紙とインクであつた 一冊の詩集であつた またかつてわたしは 二足で歩行する獣の骨だつた またかつてわたしは 難破船のマストの古い柱であつた 電話機だつた 皿であつた うねる高温の 吹き矢の先で わたしたちはみな 硝子のしづくとなつて 昇華した 冷たい星を 記憶したまま 信じられぬ速さで 冷えた 誰かが わたしたちを 手に取り その体温に 

キタダヒロヒコ詩歌集 161

君はふむはじめての雪たたなづく飛騨路の朝に薄く化粧ふを 朴の葉のうらじろの葉に焼く味噌をうまらに食ひき飛騨の宿ゐに 化粧ふ=けはふ

冬の言葉

2014年12月はじめに書いた文章です。 ********************* 冬が歩みを速めてゐる。 だれかに共感した…というとき、 それはもちろん自分の側の感じ方だ。 だから、そのだれかが感じたことと、 自分が感じたことが同じなのかどうか、 実のところそれはわからない。 その意味では人は永久に孤独なんだけれども、 言葉を橋渡しにしてコミュニケーションをとることはできる。 言葉は、絶対なものではなくて穴だらけなものだけど、 むしろ穴だらけだからこそ コミュニ

詩的履歴書  書くことは生きること

13歳で萩原朔太郎と出会ってしまい詩を書き始める。 翌年、中原中也と出会う。 この頃から詩の投稿開始。 16歳で知りあった高校文芸部の先輩に詩のノートを見せて感想をもらうようになり、その人を通じて谷川俊太郎に出会う。「本当のことを言おうか 詩人のふりはしているが わたしは詩人ではない」「黙っていた方がいいのだ もし言葉が 言葉を超えたものに 自らを捧げぬくらいなら」などの詩句を彼女から示される。 当時、隣の伊勢高にいらっしゃった詩人の渡辺正也先生にも一度だけ詩のノートを見て

キタダヒロヒコ詩歌集 160

このあひだ櫛のやうだつた月が 今夜は雲の幕のうへにゐる、 冬の闇に円くひらいた窓、あるひは鏡、 またあるひは一顆の果實のやうにも 一顆の心臓のやうでもあり どれほど雲にかくれてゐようが わたしたち は その光りを心に浴むことができる (月が綺麗だ。) 2023.11.27

キタダヒロヒコ詩歌集 159

さつぱりと忘られしよりかろがろと今朝は石なりあすは風なり

キタダヒロヒコ詩歌集 158

そのひとは 蓋をして夢をみますと言ふ 今夜の月は櫛のやうだ、あの櫛の光りが 蓋の中をみたし そのひとがかかへるかなしみを やさしく梳ればよいのにと希ふ 2023.11.20

11年前、教え子Sとの往復引用から

いまから11年前、かつての教え子Sと、「自分が面白いと思った文章からの引用」をやりとりしていました。当時の11月17日に書いた文章です。 **************************************************************** Sとの往復引用を昨日うっかり止めてしまったので、 ルールどおり今日は私がSの送ってきた文章への感想を述べました。 不勉強な私はSの引用により『ジェイン・エア』という書を初めて知ったのですが、すばらしいです。

キタダヒロヒコ詩歌集 157

つらいけど慣れてしまった 「おれも」と言うひとと一緒に海を見ている