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キタダヒロヒコ詩歌集

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三重県で詩や短歌、俳句を花びらのように書き散らしてきました。noteマガジンにまとめていきます。ぜひお読みいただけましたら嬉しいです。あなたのどこかに残る言葉がありますように。
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キタダヒロヒコ詩歌集 134 10代の頃の詩より① 頭上に月

 頭上に月    キタダヒロヒコ えぬ子はカアペットのうへで猫になりながら犀星の顔の皺を伸ばしてゐた。手つきが可憐だつた。こしこしと擦られては丁寧に伸ばされていく犀星の皺のはうでも、満更でもない様だつた。「犀星の皺つて……」えぬ子は呟いた。「いゝわね。」わざと僕は聞かなかつた。「そんなら。」と朔太郎の顔を床に置いた。「いや。」えぬ子はあからさまに顔を曇らせて、朔太郎の顔に突つ伏した。湿つた音を立てて何度も接吻した。それから僕に飛び付いて、倒壊した僕の太腿を朝まで舐めてゐた。

キタダヒロヒコ詩歌集 133 夜行列車十首 その➂

 沼津を出れば眠ってしまう。やがて神奈川県内へ。車内アナウンスは貴重品盗難への注意の呼びかけを最後に途絶えた。…… 6 「横浜です」のアナウンスに目輝かせ旅の疲れも忘れむ、友よ!  4時05分。「おはようございます。」の車内放送。まもなく横浜着を告げる。 7 4時12分青く明け来し川崎の冷気の中をわが汽車は行く  4時08分横浜着、同09分発。川崎には停車しない。あと東京まで停車駅は品川と新橋のみ。もう空はあおみを帯びはじめた。皆起きはじめている。横浜のアナウンスに胸

キタダヒロヒコ詩歌集 130 中体連ソフトボール決勝

球と影いいえ影と球逢ふ刹那そこに来てゐたかつた、左翼手(レフト)は 健気なるエースの父は鳴る神の大音声(だいおんじょう)に鳴りて佇(た)ちゐたり 逆転打みてゐる僕は役員章つけてポカリを飲んでゐしのみ 逆転打まなうらに刻み立ち去れるわれらはおなじけふのむらびと 人生に幾度か区切りの日はありて区切りの涙流せしが終はらず コメントやスキ、お待ちしています。 サポートやオススメ、記事紹介などしていただけるととてもとても嬉しいです!

キタダヒロヒコ詩歌集 128

火の速度で近づいてきて去つた影はどの雲かもうわからないけど コメントやスキ、お待ちしています。 サポートやオススメ、記事紹介などしていただけるととてもとても嬉しいです!

キタダヒロヒコ詩歌集 126 すなとけい 

すなとけいたふせはおつるすなのかさふしのかたちにかたふきにけり ※漢字変換の一例 (砂時計倒せば落つる砂のかさ富士の形に傾きにけり) とめとなくまさこはおちてさらさらとまさこのふしのみねくつれけり (止めどなく真砂は落ちてさらさらと真砂の富士の峰崩れけり) すなとけいたふせはすなのおちはててまさこはつかにさかにのこれり (砂時計倒せば砂の落ち果てて真砂はつかに坂に残れり) はつかに…古語で「僅かに」の意。 コメントやスキをお待ちしています。 紹介記事を書いてくださ

キタダヒロヒコ詩歌集 124 海辺にて

 海辺にて     キタダヒロヒコ なにか散文的な用のため 海辺へ来たときにも 一群のさざなみとともに 沖から走つてくる衝動を 見る日がある。 自由の証として 潮風に朽ちかけた柱に攀ぢのぼり たるんだ電線を手繰りよせるときにも 味の失せたガムを噛みながら 測量器を覗きこむときにも 死ぬまで出逢はぬひとの数に 思ひを馳せたりする 質量とか重力とか それから時間とか 地上での自由を 神々が統べている でもいつでも 解き放たれる準備は ととのつてゐる ととのつてゐ

キタダヒロヒコ詩歌集 122 ガンダーの息

ニツポンの心臓白く咲きにけり ガンダーの息浴びたのである    キタダヒロヒコ コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。

キタダ詩歌集再録Ⅴ ずっとずっと続く船旅

noteを始めたころに投稿して、あまり多くの方に読まれていない作品を再録してアップします。 お読みいただいたあと、引用部の「スキ」をぽちっとしていただけたら喜びます笑。あ、コメント欄は宝物ですので、ぜひ一言お願いします! では、きょうはこの短歌を。

キタダヒロヒコ詩歌集 121 生死の群れ

むすうの光跡生死の群れは描きゐてわたくし以前の地上の冥(くら)き    キタダヒロヒコ コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。

キタダヒロヒコ詩歌集 120 産ぶすなの

産ぶすなの映画館古(ふ)り機械古りわれらも古りて、かたかた語る    キタダヒロヒコ コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。

キタダヒロヒコ詩歌集 119 絶唱へ昇つてしまふ前に

絶唱へ昇つてしまふ前にくれ、信じておかねばならぬ言葉を    キタダヒロヒコ コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。

キタダ詩歌集再録Ⅳ 平和末期 

noteを始めたころに投稿して、あまり多くの方に読まれていない作品を再録してアップします。 お読みいただいたあと、引用部の「スキ」をぽちっとしていただけたら喜びます笑。あ、コメント欄は宝物ですので、ぜひ一言お願いします! では、きょうはこの短歌を。

キタダヒロヒコ詩歌集 118 20代の頃の歌より② 名にし負はばいざ三月に 

なにしおははいささんくわつにみつきはのほてるやよひてきしよみたれよ    キタタヒロヒコ (名にし負はばいざ三月に水際のHOTELやよひできしよみたれよ) きし…義姉、技師、義肢、義子、義士、義歯、騎士、棋士、岸、既視 など てきし…敵視、溺死 など みたれよ…乱れよ、見たれよ など コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。

キタダヒロヒコ詩歌集 117 20代の頃の歌より① 二人の少女のこと 

うるりけは山で死んだ子ぺくふぁは海へ短銃を抱き海を見にゆく    キタダヒロヒコ コメントやスキをお待ちしています。 サポートとオススメをしていただけたら最高に嬉しいです。