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花粉と歴史ロマン 最終章 

1 春が来た。

 紅梅が咲きそろった。今年もこの木が春を告げてくれた。節分までの1週間、寒さと暖かさが交互に現れますが、房総では春が始まります。28日、仙台から来られた旧友は梅の盛りに驚かれていた。何年かぶりでしたが、時を超えた再会になりました。
このnoteを始めた頃、忘れかけそうな写真やメモを元に記事を作成することが楽しかった。楽しみの「花粉と歴史ロマン」も、そろそろ題材がなくなってきました。
 最終章では、これまで扱ってきた記事の中で溢れてしまったいくつかの思い出を
付記しておきたい。

2 シベリアで見たトリカブト属

 2002年、サハリンと接するアムール川の河口域のオホーツク海沿岸に出かけた。この地域は内陸とは異なり多雪で森林が発達する地域であった。新潟空港からハバロフスク空港、さらに国内線に乗り継ぎニコラエスクアムール空港に到着する。売店(キオスク)では、アサヒスーパードライが並び、極東にまとめられる日本を含めた経済環境を感じた。

ニコラエスクアムールの北西部オホーツク海沿岸 Chrya(チリャ村)
この村の人の話では、日本人として最初の訪問者であったとか、
シラカバとミズナラ 極東シベリア(ニコラエスク アムール)

 この日本の落葉樹林を思わせる林縁に、つる性のトリカブト属を見た。ロシアの図鑑ではキンポウゲ科のトリカブト属(Acotinum arcuatum)になります。その種小名arcuatus(弓型の)は、つる状の花茎に由来しているのではと考えています。花粉は、トリカブト属の場合、溝の内側にイボ状の突起が詰まっており、他の属とは識別が可能です。

上:トリカブト属(A. arcuatum)、中:現生花粉、下:堆積物中から検出した花粉

「落葉広葉樹林の指標となるのでは?」と、この花粉化石の検出に夢中になったが、定量化できるほどの算出はなく、残念でした!

3 シベリアの「野辺に咲くヤナギラン」

シベリアの調査では、道路状況など不便な思いが満載でしたが、中でも山林火災は消火活動の及ばない場所で起きており、近づいてきるような怖さがありました。

消火活動が及ばない山林火災、人為的な失火が原因のようです。
特に地下の泥炭層に火が及ぶと、じわじわと火が残ります。
荒漠としたシベリアの自然の中で、心休まる瞬間があります。
火災跡に大群落を形成するヤナギランの花と種子の綿毛
地下5mに及ぶ泥炭層、パウンドケーキのような断面、下部は氷結していました。

4 花粉分析結果

細かくて何が何やらわかりませんね!地表から地下4.5mの泥炭層を10cm感覚で調べました。
左から針葉樹が5種類(青まで)、左から9種類が草本です。

地下3.5m付近で、状況が変わっています。浅い部分には、トウヒ属(黒横棒)がカバノキ属(青横棒)に次いで検出され、この地域の森林化が進んだことを示しています。最終章で取り上げたヤナギランはアカバナ科(右端のEpilobium赤横棒)は最下部で、ほんの少し検出しました。

ヤナギランと同じEpilobiumの花粉です。糸状の付着物が特徴です。

 火事の跡地に繁茂することから、人為的な影響の指標になるかも知れないと
観察したのですが、最下部の森林化する直前に現れただけでした。下半部のカバノキ属は、おそらく矮性カバノキ属です。

さて、今回で「花粉」と「歴史」に関わってきた私にとっての「ロマン」は終了します。体裁を変えたブログを考えますので、今後ともよろしく!
最後に、花粉が元になって知り会えた、英国キューガーデンに勤務されていた方が著された本の表題を示します。

花粉の写真集です。


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