見出し画像

LUFFという花屋ができるまでの話 第3話<花屋になって一年目>

前回までのあらすじ
内定をもらい、部活に専念したいがために就活を切り上げるという、そこそこナメた理由で花屋として生きていく決意をした私。
社会という大海原に投げ出され、果たして順風満帆といくのか。
はたまた…


当時の私はついこの前までスポーツと筋トレばっかりしていた青年で、花に関する知識は皆無。
名前を知っている花だって、アジサイ ヒマワリ アサガオ 沈丁花くらい。

当たり前だけど先輩たちは花の仕事の経験者だし、数人いた同期も花の専門学校卒業というドーピングをして入社してきているというセコさ…(てか、ウエディング部門って新卒取ってないんじゃなかったっけ??)

そんな中に私一人だけが完全にど素人。
花業界に迷い込んだ桜木花道。

仕事中に『トルコ取ってきて』とか言われても「なに?外国??」ってレベルで会話が成り立たない。

フッフッフッ、お前ら花屋かぶれの常識は俺には通用しないのよ、シロートだからよ。

(ちなみに<トルコ>というのは<トルコキキョウ>という花の略で花屋さん的には常識中の常識。興味ある人は↓をどうぞ)

そんな状況なので必死にやりました。
花の名前を覚えるところから始まり、花束つくり、アレンジメントつくり。
それはそれは一生懸命やりましたね。
練習に練習を重ね、勉強に勉強を重ね。まさに勉々強々です。

幸い諸先輩方は優しかったし、持って生まれた天賦の才も手伝ってメキメキと頭角を表してきました。我ながら。

そしてなにより、自分の手を動かして何かを作るということが楽しかった。
世間的に見ても結構頑張っていた方だと思うけど、<楽しい>が原動力となって、何も苦にならなかった。

まぁ、会社としてはかなりのブラック企業だったと思います。
労働時間が半端ではなかったんです。
小声で言いますが、みんな仕事遅いんだもん。そりゃ遅くなるわと。

頑張った甲斐あって、そんなこと思えるくらいの成長はしてたのですが、そんなことを思ったり思ってなかったりしてたくらいなので、『キサマは生意気だ』とちょくちょく怒られていました。


そんな小生意気で、周りからしたら扱いにくいであろうヤツという役職に私は上り詰めたわけですが、そんな私には憧れの存在がいました。

それは社内のチーフデザイナー。
フラワーデザインのコンペティションで日本一になったり、なんか色々カッコいい人。
若くして優勝してるってのもカッコよかったし、その人も元々素人だったっていうのも何か惹かれた(まぁ、みんな元々は素人なんだけど…)

高卒で入社して、別に興味もなかった花業界に就職。
花を触ってから10年くらいでトップになって。
そういうのに憧れたものでした。

その人とは、色々一緒に仕事をさせてもらったんだけど、その頃の私はあまりにも花のレベル的に足りていなかったので、少し勿体無い気もしてました。
もう少し花がわかるようになっていれば、もっといろんなことを質問できたかもしれないし、吸収できたかもしれない。
そんなことを考える一方で、「それでよかったのかも」とも思ったり。

事細かに教えてもらったり説明してもらっても、それが正義だと凝り固まってしまうかもしれないし応用がきかないかもしれない。
今思えば<知る>ことだったり<教えてもらう>ことよりも、<感じる>そして<考える>機会があったことがプラスになっているのかもしれませんね。
まぁどっちにしろ手取り足取り懇切丁寧に教えてくれるタイプの人じゃなかったけども…
(書いてたら懐かしくなっちゃった。電話でもしてみようかな)


その人とはちょくちょく一緒に仕事する機会があったり、なんとなく境遇も似てる気がしたり。
憧れていたその姿に、自分もいつしか<デザイナー>になってカッコよくスマートにモダンでスタイリッシュなフラワーアーティストとして活躍したいなぁ、と考えるようになっていました。


花業界に飛び込んで1年目から他では体験できないような仕事に恵まれた私(ここでは端折ったけど、並の新入社員では味わえない出来事がたくさんあった)。
メキメキと力をつけ、<生意気で扱いにくい期待の新星>としてガンガン仕事をしていくわけです。
フラワーアーティストに憧れ、自分もそうなると信じて日々の激務をこなし…

気になる(?)第4話は、「気持ちよさそうに撫でられてたネコがいきなり噛んでくるのアレなんなの?」っていうくらい急に人生の選択をする回です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?