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お一人様参加型ホラースポットツアー

あらすじ
恋人、友人、知人、家族等の関係者との参加は
認めていない「お一人様参加型ホラースポットツアー」
をある会社が始めてから、
『より怖い体験をお約束します』
をキャッチフレーズに上げて人気を博した。
しかし、警察に匿名の電話で、
「ホラースポットツアーは絶対に何か裏がある」
電話を受けた婦警は、白城副署長にその話をした。
彼は二課の特務捜査課に命じて、
二課に入りたての新人の三井に潜入捜査をさせるが、
そのツアーでは何も起きなかったが、
三井が謎の失踪を遂げてしまう。
白城は、誰よりも優秀な一課特務の警視である
真田健太郎に難解な事件の解決を求めた。
真田は部下たちと共に、事件の解決に向けて動き始める。


「ようこそ我がホラースポットツアーに
お越しくださいました。
私はツアーガイドを務める宴道えんどうと申します。
我が社では恐怖をより一層御愉しみ頂きたいので、
恋人や御友人と一緒にでは無く、ある意味では孤独で
恐怖を味わって欲しいものを提供するための
お一人様限定の参加型ツアーとなっております。
それでは真の恐怖の世界を御愉しみくださいませ」

深々と頭を下げて礼を取る女性は、
色鮮やかな髑髏ドクロの仮面をつけていた。

最近、ネット上で本当に怖いと評判のツアーであったが、
中には匿名で、あのツアーは何かあるとの意見も書かれて
いた。

ホラースポットツアーなんだから何かある方が良いとの
意見も多く上がっていたので、少数派の意見を見る機会は
減って行った。

逆に本物の幽霊が見れたりするのではないかと、
マニアたちの間では有名になっていた。
ホラースポットツアーの話は盛り上がり、
いつしか意見交換のサイトも出来ていた。

そんな中、匿名で警察署に電話がかかってきたが、
「ホラースポットツアーは絶対に何か裏ある」

との情報が寄せられたが、それだけ言うと電話は
切られた。すぐに電話をかけ直したが不通になって
いたので、一応、電話対応した婦警は上司に書類を
上げておいた。余りにも声が尋常では無かったからで
あった。

数日後、その婦警は上司に呼び出された。
ほとんど何も分かってない状態で、書類を提出した
理由を婦警は尋ねられた。

実際にサイトを見たが、どこにでもあるような
ものではあったが、不信の声も上がっていたが、
ハッキリとは誰もが口にはしていなかった事が
より本物らしく見えたと報告した。

上司はもし何かあるのであれば、迅速に対応すべき
だと考え、第二特務捜査課を仕切る佐木山部長を
呼び出して、書類を手渡した。

彼はその場で流し読みしたが、余りにも情報不足で
あった事から、捜査課から内偵を出す許可を得て、
最近、捜査課に入ってきた三井捜査官に潜入捜査
するように伝えた。

三井はまずそのサイトを見ることにした。


「あのツアーはマジで出るみたいよw」

「ホントかよ?w マジで出るなら参加したいよ(笑)」

「じゃあ参加してどうだったか教えてくれw」

「出なかったら返金してくれる? それなら行くけど」

「そんなのこっちからすれば分からないからw」

「そりゃそうだw まあでも出るんなら行こうかな」

「俺はマジで怖いからやめとくw」

そこから暫くの間、よくある会話が続いていて、
行こうと言っていた人の会話が出ていた。

「そういや、アイツ見かけなくなったけどこれマジ?」

「んな訳ないでしょ?w幽霊見れなかっただけでしょ」

「これさ、秘密だって言われてたけど、怖いから言うわ」

「何なに?w」

「このサイトさ、アイツがぬしなんだよね」

「え? それマジのほう? だったらちょっと気になる」

「この手のサイト幾つか持ってて、広告収入で暮らして
たんだよね。全部のサイト見たけど、更新日はツアーに
参加した日以降されてない」

「ちょっとそれヤバいんじゃないの?」

「うん。でも、何かあの会社は参加者を引き抜く事も
あるって誰かが書いてたから、サイト運営者として
引き抜かれたから更新止めたのかもしれない」

「いやーそれは無いでしょ。だって結構稼いでたのに、
会社としても宣伝にもなるから、更新停止はないよ」

「だとしたら、幽霊に憑依されたとか?」

「さあ、分かんないけど、あのフレーズは宣伝だと
思ってたよ。あの憑依された場合、責任は取らない
っていうやつだよね」

「憑依されたらどこに行くんだろう?」


会話はここで終わっていた。
三井は上司である佐木山にサイトの事や、
自分の意見を伝えた。
一番の問題点は、ツアーに参加した人は全員、
再びサイトでの発言が無かったことであった。

そこで三井は潜入捜査をする事になった。
仮に事件性のあるものであった場合に備えて、
証拠となる超小型盗聴器や、位置情報の検査を
パスできるバレない潜入捜査員専用の小型チップを
注射して、体内の温度により始動するタイプ
にした。

この会社のツアーに参加するには、
まずは適正かどうかをチャットを使って
会社側の質問した事に答える形式をとって
いる事から、仕事や現在地がバレないよう
ホワイトハッカー部署に協力をしてもらい
出身地、年齢、仕事、年収、未婚、恋人の有無、
履歴書、現住所等を架空に設定してもらった。

チャットは形式的な事ばかりであって、
異常性のあるような質問は一切無かった。

翌日、ツアー参加合格通知がメールで届き、
代金はバスに乗車する時に、封筒に入れて
手渡しするよう指示された。

何かあればすぐに駆けつける事が出来るように、
前もってホラースポットの各地に人員を配置した。

そして万が一に備えて、拳銃の所持も許された。

佐木山は万全を期して、三井をツアーに送り込んだ。

バスから離れた遠い場所から、三井が乗り込むのを
確認した佐木山は、まずは問題無いとして、設置した
本部に戻って各自からの報告を聞いていた。

ホラースポットの数は全部で十ヵ所あった。
テレビなどで紹介された場所もあったが、
マニアたちが知るような隠れスポットもあり、
大いに賑わいを見せていた。

異常があれば報告するようにしていたが、
全く報告は来ないまま時間だけが過ぎて行った。

近づけば何か分かるかもしれなかったが、
基本的にホラースポットだけあって人や家も
無い場所ばかりであったため、監視用の車も
距離を置いて、夜間でもハッキリ見える特殊な
望遠鏡で見守るしか無かった。

これと言って問題の無いまま、ツアーは終了した。

全車に本日は解散して、明日会議を開く事を伝えて、
詳しい話を三井本人からと、盗聴器で何かしらの
問題となるべき事を拾うように、ホワイトハッカー
に願い出た。

翌日、三井の姿だけが本部に居らず、電話も不通で、
小型チップも作動していない事から、急遽きゅうきょ
彼の自宅に急行した。

父親と二人暮らしであったが、父親が言うには、
昨夜、息子は戻ってきたが、その後、再び出掛けたと
言っていた。

今夜は徹夜になりそうだからと言って、着替え等を
取りに来たとバッグを持って出かけて行ったと言った。

確かに息子さんでしたか? との問いに対して、
間違いなく息子であったと、父親は不安そうに答えた。

佐木山は昨夜のうちに会っておくべきであったと
後悔したが、すぐに捜索隊を組んでホラースポットを
探させたがこれと言ったものは何も無かった。

立ち入り調査を検察に願い出たが、証拠も無い上に、
父親の証言から見て、自ら出て行った事は明らかで
あった為、認められなかった。

もっと立証できる何かがあれば、承認できると
言われた佐木山は、三井の捜索範囲を広げて
捜索したが、何も出なかった。

ツアーの運営会社に続く道にあった監視カメラ
に賭けたが、三井の姿どころか何も映っていなかった。
佐木山はこの件を調べるように伝えてきた
副署長の白城しらきに、事の詳細を全て話した。

責任を取って辞任しようとしたが、
事はそれよりも重いものとなっていた。

白城は辞任する前に、この案件を解決できるのは
将来を約束された有望な第一特務捜査課の警視である
真田健太郎警視に願い出るしか無いと思い、彼の元へ
向かった。

彼は真摯な態度で話を聞きながら、時折難しい顏を
見せながらも、全てを打ち明けた後、この担当を
お願いしたいと白城は申し出た。

真田はいわゆるエリート組ではあったが、
彼らとは違い、分別の出来る男だった。

彼は白城に辞任は暫く待って、
有給を取るよう勧めてきた。

つまりは白城の有給期間内に解決する事を
意味していた。
白城の有給期間は30日あったので、
有給を取るのであれば、引き受けますと真田は答えた。

白城は頭を下げたが、すぐに頭を上げさせた。
そして、この件に関しては、解決するまでは
非公式とすることを伝えた。

そうして白城は了承して、部屋から出て行った。

すぐに真田は緊急会議を開く事を部下たちに
伝えると、彼が鍛えた部下だけあって、
すぐにホワイトボード、渡された資料を基に、
関係がある会社や個人などをリストアップして
ボードに貼り付けていった。

それを眺めながら、足りない事を伝えていき、
ホワイトボード三枚に渡り、関係性を示していた。

6名の有能な部下たちは、自分たちの思う事は
全て終わらせて、真田に目を向けていた。

OKが出れば会議に入るが、問題があれば指示通りに
動くよう、難問な事件の時に流れる緊迫感が皆に
伝わってきていた。

「よし! 会議を始めるぞ」

皆に緊張感が解かれたように、安堵感が生まれた。

「まずは三井の父親だが、高齢者でもあり、
耳も悪いため補聴器をつけているが、夜遅くで
あった事から、基本的に高齢者は早寝早起きが
基本だ。補聴器をわざわざつけてまで
起きたとは考えにくいが、三井である可能性も
あるが、他の誰かであった可能性も消せない」

女性捜査官の一人が声を出した。

「しかし、顏も見てますし、息子さんであった
のは確定ではないのでしょうか?」

「今の時代では3Dプリンターがある。高額な
ものなら高性能で高品質だ。見た目だけで無く、
質感までもが、最先端のものであれば作る事は
可能だ。しかも位置情報が分かる小型チップは
稼働していなかった。つまりは死んでいたか、
チップが何かしらの影響を受けて壊れたかの
どちらかになる。ツアーに参加した人の失踪者
も調べろ。必ず三井と同じような事が起きた
はずだ」

皆は話を聞きながら頷いていた。

「一軒家に父と息子の二人暮らしである点も
問題がある。恐らくは死別であると思うが、
父親の話が本当なら親子仲は良好だっただろうが、
金銭的な余裕はないと思われる」

真田の声を耳で受け止めながら、各自が担当する
事を調べていった。

「警視の仰る通りです。経済的余裕は
殆どありません。母親に関しても確かに
死別してます」

彼が首を軽くホワイトボードの方へ振ると、
新たに加わった情報が貼られていった。

「まだ情報が足りないな。父親や母親の親の代まで
広げて、会社に関わりのある会社との接点があるか
どうかも調べろ。三井自身についても個人情報を
調べて、借金や会社関係者との繋がりがあるか無いか
調べ上げろ」

真田はそう告げると自室に入って、
独自に気になる点を調べていった。

警察内部の三井が所属していた第二特務の佐木山と、
部下たちも調べていき、徐々に接点が見えてきた。

(内部情報が洩れていたとすれば、何もかもが茶番
であると言える。この金融会社に多額の借金があった
佐木山の部下の峰岸香織みねぎしかおりは、
見張り役として、5カ所目のスポットにいたとあるが、
二課だけでの動きとなると、見張り役は一人になる。
だが、一人での見張りはしない。多分、白城副署長
から人員を借りたはずだ。それが誰なのかも知りたい)

真田はこうと決めた時は迅速動くようにしていた。
机に置いてある時計を見て、今ならまだいるはずだと
思い、部屋から出ると皆に目を向けて意向を伝えた。

「副署長から情報を得てくる。
すぐに戻るからそのまま続けてくれ」

皆が気持ちのいい返事を返した。

「はい!」

真田は安心して一課から出て行き、白城の元へ
急いで向かった。


お一人様限定ホラースポットツアーⅡ

お一人様限定ホラースポットツアーⅢ

お一人様限定ホラースポットツアーⅣ

お一人様限定ホラースポットツアーⅤ


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