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真夏の青春を感じる少女 第一話 出会い

少女は一年に一度だけ、一人で自然を一番感じる事のできる、
祖母の住む島から離島巡りをしていた。

今年もその季節がやってきて、彼女は大型の船ではない、
地元の漁師が副業としてやっている格安のボートに
乗ろうとした際、頬を優しく撫でるような海風が吹いた。

その海の香りのする風は、少女の被っていた麦わら帽子を
さらうように空に飛ばしていった。

彼女の目は風に乗った麦わら帽子にいったが、そこに手が
見えた。少年はスキップのような軽々しいジャンプをすると、
少女の麦わら帽子を手に取って、船に乗っていた彼女に
差し出した。少女の場所からは太陽の陽射しで、
彼は影の中にいたが、清々しい声で、「君のだよね?」と
言って、目の前に帽子を出していた。

「ありがとう」といった少女に彼は笑顔で応えた。
熱い太陽のせいか、彼女の頬を赤らめていた。

「よっと」彼は手慣れた感じで船に乗ってきた。
「君って、島の子じゃないよね?」

彼女が答える前にボートのおじさんが口を出した。
「この子は、奈々枝ばあさんとこのお孫さんだ」

「なんでおじさんが知ってんのさ?」
「この子は毎年来てるから知ってるさぁ。
こんな可愛らしい子を知らねぇほうが少ねぇべ?」

少女が照れるのを見て、何とも言えない産まれたての
子犬のような愛らしさを見せていた。

「僕は初めましてだね。僕の名前は勇翔はやと
って言うんだ。よろしくね」

彼の顏もいつもよりほのかな赤色であったが、
初めて出会った彼の照れている本心は探れずにいた。

「わたしは早宮 怜奈れいな。よろしくお願いします」

「怜奈ちゃんは何歳?」

「わたしは17歳だけど、勇翔君は?」

「僕も17歳だから同じだね!」

テンションが上がったような
嬉しい顏つきで少年は言った。

少女の場合は、同年齢の人には滅多に
出会う事はなかったので単純に喜んでいた。

二人の思いは交差したかのようにズレて
いたが、お互いに出会えたことへの喜びは
同じであった。

「そろそろ出すぞ。揺れるからしっかり掴み柄を
握っててなぁ。まあもう慣れてるだろうけどなぁ」

観光客が思った以上に増えてきたので、まだ新しい
取っ手のようなものに怜奈は手を伸ばした。

勇翔は悠々とボートに乗っていたので、慣れてるんだなぁ
と怜奈は口には出さずに心の中で思った。

「勇翔ー。お前もどっかに掴まっとけよぉ。あぶねぇぞ」

「僕は大丈夫だよ! 海育ちの男だからさ!」
そう言って少女の方を見て、笑顔を見せた。

「じゃあ、出すからなぁ」

高速船のように客室があるような船とは違い、
基本的には木で作られているボートであったため、
波に逆らうように船に波が当たり、大きく揺れた。

それが連続して、木造の船は遊園地の絶叫系の乗り物
のように、荒々しく揺れていたが、「‥‥‥いたい」
小柄な少女は小さな声を上げた。

勇翔は気づかないまま彼女が握っていた取っ手を、
怜奈の握り手の上から握っていた。

「こら、勇翔。そりゃあかんぞ。だからどっかに
掴まっとけと言っただろうに。ごめんな、怜奈ちゃん」

「だいじょうぶです」

「ごめんね。まさかあんなに揺れるとは知らなくて」
勇翔は恥ずかしそうに顏をいっそう赤めて言った。

「初めて乗ったの?」

「勇翔ん家のもんは漁師じゃのうて、民宿さぁやっとる
で、客は乗せて行ったことはあったが、なんで今日は
お前が本土に居ったんだ?」

「これを買うために行ったんだ。お客さんに出すお酒は
無料だから多めに用意するから買い出しに行ってきたんだ」

「んじゃあ、船賃を安くして小遣いをちょろまかしたんか。
じゃなきゃあ、お前が漁師の船に乗る訳がないかんな。
どうせ、船賃払う気も無いんだろ?」

「え? そうなの?」

勇翔は普段は女の子には対して興味を示さなかったが、
怜奈に対しては何故か、もっと仲良くなりたいと思っていた。

「そんな訳ないよ! ちゃんと払う気で乗ったに決まってる
だろ。茂爺しげじいはいつも僕をいじめて楽しんでる
んだろ?」

「いんや、そうじゃねぇが、今日のお前は大人しいで、
もしかして、そのお嬢ちゃんが可愛いからか?」

茂爺は笑いを交えながら問いかけた。

「そんなわ‥‥‥まあ、確かに可愛いとは思うけど
それは関係ねぇよ!」

勇翔は海風に当たりながら、黒い髪を靡かせ、彼女から
視線を逸らした。

それを眺めていた怜奈は、女の子に慣れてない事を
かわいいと思って笑顔を見せていた。

二人を見ていた茂爺は、若い時の頃を思い出そうと
したが、記憶は鮮明に残っていたが、あの頃に抱いた
情熱までは思い出せなかった。

ただ二人を見て、自然と笑顔を見せていた。








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