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ポンコツ忍者チームのキラキラな日常③~忍者ヤミー編~

ここは、伊賀の杜大忍術専修学校の旧校舎にある空き教室。
そこを勝手に占拠してDJブースにしているファンキーな不届き者がいる。
その名は、『凄腕DJ MasterKey』
ズンズンと大音量で鳴り響く最新の伊賀ポップスや江戸ロック、吉原R&Bなどを繋ぎスクラッチして新しい音楽へとアレンジしていく彼のスタイルは、当時、江戸の町で増え始めたモヒカンにド派手な化粧と凶悪そうな肩パットをつけた傾奇者(かぶきもの)達に支持され、その異様さを拡散していった。
この傾奇者たちの集団は「KISS」と名乗り、各地でことごとく三味線を叩き折っては火をつけるなど狼藉を働いた。そして、そのKISSが行動を起こすときにいつも凄腕DJ MasterKeyの曲が大音量でかけられていた。いつしか、凄腕DJ MasterKeyはKISS達の旗印に祭り上げられ巨悪の化身として市中にその名を轟かせるようになっていった。

「ドゥユウアンダスタンドゥ!?」
凄腕DJ MasterKeyの決め台詞が響き渡ると、集まった1000人のKISS達はウオォォッ‼と雄たけびを上げた。会場のあちこちで火柱があがり、肩パットが揺れる。
今日は、江戸の目黒町で凄腕DJ MasterKeyの野外ライブが行われていた。
次々と紡がれる楽曲に、会場の興奮は爆上がりし呼応するように次々と爆発が起こる。このまま、最後の曲へという時に
「全員、おとなしくお縄につけぇ!!」
奉行所の役人の声が響き渡った。会場中に怒号と悲鳴が飛び交い、暴れるKISSと役人たちが入り乱れカオス状態となった。爆炎があがり大量の黒煙が辺りを包みこむ。あっという間にステージ上は何も見えなくなった。すると、会場全体に響き渡る声量で凄腕DJ MasterKeyの声が響いた。
「俺様はここらでドロンするぜ!みんな、またどこかで会おうな!それじゃあ最後はみんなで、ドゥユウ?」
すると会場中から津波のような勢いで
「アンダスタンドゥ?」
全てのKISS達の想いが込められた決め台詞が大音量で響き渡る。
こうして波乱の中、凄腕DJ MasterKeyの野外ライブは終了した。

「あれ?何食べているの?」
僕の声に、ゆるりんとひらりんは一瞬ビクッとしたが、口をモゴモゴさせたまま
「やむいぃほほひやげほ、はんふぁ(ヤミーのお土産の、さんま)」
と答えた。二人の前に座っているのは友達の忍者ヤミー。ヤミーは口数こそ少なめだが新しい技術をたくさん知っていて、とても頼りになる忍者仲間だ。そのヤミーが言うには、昨日、江戸の目黒では、大量のさんまが一気に焼かれるイベントがあったらしく、そのお土産らしい。
目黒でさんま?と僕が首を傾げると
「さんまは目黒の名物だからね」
と、ヤミーは笑った。
彼があの悪名高き、凄腕DJ MasterKeyだと世間に知られるのは、もう少し先の話である。

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