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「野のへらぶな」釣りをするためのエサのお話(第2回)

今回は、「野のへらぶな」釣りをするためのエサのお話の第2回目です。第1回では、へらぶな釣りに使われるエサの種類と特徴についてお話しました。第2回では、様々な種類のエサをどのような視点で選択するのか。についてお話したいと思います。

前回お話した種類のエサ(麩エサ、マッシュポテト、グルテンエサ、トロロ、クワセエサ、集魚剤)については、様々なエサメーカーが多様なバリエーションのものを販売しています。

予めお断りしておきますが、このブログは、エサの選択について、特定のエサメーカーの固有商品のどの組み合わせが最適かについて推奨したり評価するものではありません。

理由は以下の通りです。

  • へらぶな釣り用のエサは、様々なエサメーカー、釣り具メーカーが毎年のように新商品を発売し、年々進化しているため、ある一時点において、永久不変の最適なエサというものを限定できない。

  • 販売されている200~300種類とも言われる非常に多くのエサのブレンドの組み合わせは無限にあるため、全ての組み合わせを確かめることが不可能であること。

  • 全国津々浦々の野釣り場において、その場所に生息するへらぶな達を、へら師達がどのようなエサを使って日々釣っているのかを全て調査して最適なエサの組み合わせを特定するのは現実的に不可能であること。

このため、読者の皆様におかれましては、このブログがあくまで、

「これから野のへらぶな釣りを始めたいと思っている初心者の方が、へらぶな釣りのエサにはどのようなものがあり、それをどのような考え方で使い分けるのか、私がへらぶな釣りを始めたばかりの頃に疑問に思い、その後へらぶな釣りを実体験していく中で、「こういうことだったのか。」と分かった一般的な内容」

であることを予めご了承いただけたらと思います。

さて、それでは本題に入りましょう。

野のへらぶな釣りに使うエサの考慮要素

作りたてのバラケエサ(3種類の麩エサをブレンドしたもの)

使用するエサを選択するための考慮要素には次のものがあります。

  1. へらぶなを寄せたいタナ(魚が泳ぐ層)

  2. 水の流れの有無

  3. 魚の活性

  4. ジャミ(へらぶな以外の小魚のこと)の多さ

  5. 大物狙いの場合

  6. 釣り場固有のへらぶなの好み

1.へらぶなを寄せたいタナ

野のへらぶな釣りでは、へらぶなを寄せたいタナ(水中の魚が泳ぐ水深の層)毎に、エサを使い分けします。まず初めに、へらぶな釣りにおいては、水面に近い水深の浅いものから水底まで、幾つかのタナの呼び方があります。

水深については、使用するハリスの長さによって変わってきますので、ここではあくまでおおよその深さを記載しました。

  • カッツケ:人によって様々な解釈がありますが、おおよそ水面付近~ウキからオモリまでの長さが30cm程度(これにハリスの長さがプラスされるので、水深としては50cm程度まで)の深さのこと

  • 浅ダナ:ウキからオモリまでの長さが50cm~1m程度(ハリスの長さが加わると、水深としては70cm~1.5m程度)の深さのこと

  • 深宙:イメージとしてては、水深2mより深いタナのこと。特に、竿の長さ一杯の深さを「チョーチン」と読んだりします。(ちょうど、竿の先端(穂先)からウキが垂れ下がった状態が提灯のようだというのが由来のようです。)

  • 底:その名の通り、水底のことです。

※カッツケ、浅ダナ、深宙については、いずれも宙釣り(エサが水中で底に着いていない状態で釣る釣り方)のタナになります。

このようにエサを浮かせたい水深およびエサを底に着けたいかによって、選択するエサは変わってきます。

水深だけを考えた場合、自分が釣りたいタナにエサがたどり着く前にエサが溶けきってハリから落ちてしまったり、ジャミや外道にエサを食べられてしまうと、当たり前ですが、へらぶなは釣れません。

このため、目的のタナに到達する前にエサが溶け切ってしまわず、目的のタナでエサがハリにちゃんと残った状態でいるために、タナに到達する前にジャミにエサを食べつくされてしまわないように、更には、水中で溶けたエサの粒子が広範囲に拡散してしまわないように、エサの次のような特性を考慮します。

  • バラケ性能(最強~中間~弱い)

  • 重さまたは比重(重い~中間~軽い)

  • 粒子の大きさ(大きい~小さい)

エサの袋の表面には、エサの特性が表示されている

バラケ性能とは、水を加えて練ったエサを丸めてダンゴ状にしてハリ付けし、水中に投入した際に、エサの粒子がダンゴから崩れ落ちていく度合い、つまりホロホロと大きな塊で崩れていくのか、或いは粘りがあって細かい粒子が糸を引くように溶けていくのか、という程度を表したものです。

次に、重さまたは比重とは、その言葉が示す通り、そのエサの粒子の重さ、比重のことで、エサをダンゴ状にしてハリ付けした場合、重さが重いほど水中を早く落下し、短時間で目的のタナにたどり着きます。一方、軽いエサは、水中をフワフワゆっくりと落下していきます。

粒子の大きさとは、麩エサの特徴として表示されているもので、粒子が大きければ、水中でエサがバラケる時に、大きな塊で崩れて行くため、エサを早くハリから落とし、大きな粒子を漂わせて魚にアピールしたい場合に適しています。一方、粒子が細かいエサは、水中で粉雪が降るような感じに糸を引いてゆっくりと溶けていきますので、ばらけやすい麩エサとブレンドして、バラケ具合を調整するのに適しています。

これらの性能は、エサメーカーごとに、製品の袋に上記の情報が3~5段階で表示されているので、参考にすると良いです。例えば、水深の深い野池で深宙のタナで釣りたい場合は、バラケ性能があまり強くなく、重さまたは比重が大きいエサを中心とするなどです。

但し、実際問題として、水深だけを考えてエサを選択すると、選択を誤ってしまう場合があります。

2.水の流れの有無

野のへらぶな釣りの選択時の考慮要素の2番目として、その野釣り場の水が流れているか否か、があります。簡単に言うと、川や水路のような水が流れている場所での釣りか、池、沼、湖のような、基本的には水の流れがない場所での釣りか?というものです。

へらぶな釣りでは、基本的にエサを同じ場所に集中して投入し続け、魚を寄せて釣るものです。このため、水に流れのない釣り場では、投入したエサは水中または水底で粒子が溶けた後、同じ場所に浮遊・堆積するので、そこにへらぶなを寄せることが出来ます。

ところが、流れがある川の場合はどうでしょう?当たり前のことですが、エサを投入しても、水中に浮いている仕掛けとエサは時間と共に下流に流されてしまい、エサが同じ場所に浮遊・堆積しません。従い、へらぶなを自分の釣りたい位置に寄せることが出来なくなります。

このような水の流れのある釣り場では、気温が高くて魚の活性が良く、へらぶな達が積極的にエサを追ってくるような特殊な場合(かつ流速が速くない場合)以外は、宙釣りではなく、エサを川底の同じ場所に着底させ留まらせるような底釣り(特に、オモリ負荷を重くし、ハリだけでなくオモリも着底させて仕掛けが流れないようにするドボン釣り)を選択することになります。

ドボン釣りを例にとると、この釣りの欠点として、宙釣りや、バランスの底釣り(ハリ(エサ)を着底させるが、オモリは浮いた状態で釣る釣り方)のように、魚が仕掛けの近くに寄ってきたり、エサを軽くつついたりする場合にウキに現れる小さな動き(「サワリ」と言います)が出にくいこと、エサがハリから落ち切っても、ウキのトップ(へら浮きの目盛り部分)が上がってこないため、ハリにエサが残っているのかが分からないことです。

エサの話から脱線してしまいましたが、このようなドボン釣りの場合、バラケ性能の強いエサや、比重の軽いエサですと、水の流れでエサが急速に溶けてしまい、魚がエサを見つける前にエサがハリから落ち切ってしまうため、釣れにくくなってしまいます。

このため、ドボン釣りで使用するエサは、粘りが強くエサ持ちが良いグルテンエサを使用するのが一般的です。

3.魚の活性

エサを選択する上で、魚の活性は非常に重要な考慮要素です。野のへらぶな釣りでは、例え同じ釣り場でも気温、水温に応じてエサを使い分けます。これは、それらの要因によって魚の活性が大きく異なるためです。

例えば、初夏から夏にかけての暖かい時期は、水中の酸素量も増えてへらぶなの活性が高くなり、食い気が増すため、ダンゴエサも積極的に食べるようになります。

しかし、あまり水温が高くなりすぎると、アオコが発生するなどで水質が悪化し、水中の酸素量が不足することによりへらぶなの食い気が落ちてしまい、ダンゴエサのような大きな塊を食べなくなってしまいます。

アオコ(青粉)とは、富栄養化が進んだ湖沼等において微細藻類(主に浮遊性藍藻)が大発生し水面を覆い尽くすほどになった状態、およびその藻類を指す。粒子状の藻体がただよって水面に青緑色の粉をまいたように見えることから、「青粉(あおこ)」と呼ばれるようになったと考えられる。

ウィキペディアより:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AA%E3%82%B3

水温が10℃に満たない厳寒期になると、へらぶなの活性は低下し、エサを吸い込む力も弱くなってしまいます。根拠は不明ですが、以前仲間のへら師から、水温が4℃まで低下すると、へらぶなはエサを食わなくなると聞いたことがあります。

また、長い間雨が降らず、池や沼の水が減水した場合も、へらぶなの活性が落ちて食い気が無くなるものの、その後まとまった雨が振り、増水してフレッシュな水が入ってくると、その直後はへらぶなが良く釣れた。という話を聞いたことがあります。

このように、へらぶなの活性は、天気、気温、水温に大きく左右されるので、その時のへらぶなの食い気に合わせたエサの選択が必要です。

高活性の時は、上バリ、下バリの両方に複数の麩エサをブレンドしたダンゴエサを付ける、「両ダンゴ」をまずは試してみると良いと思います。
麩エサの選び方は、前述の、自分が釣りたいタナの深さと、魚がどれだけ集まっているかによって決めます。

例えば、浅ダナの場合、あまりエサが持ちすぎるようなバラケ性能の弱いエサよりも、タナで適度にエサがばらけて適度に魚を寄せ、かつ、魚が大量にエサに群がっても簡単に叩き落されない程度の粘り気のバランスが取れているものをブレンドにチョイスすると良いと思います。

次に、気温、水温が高いものの、両ダンゴではウキにサワリがあっても「ツンっ」という強い食いアタリがもらえない場合(「食い渋り」と言います。)は、上バリには比較的バラケ性能の強い麩エサと、すぐにばらけきってしまわないようなハリ持ちさせるタイプの麩エサをブレンドしたダンゴエサを付けて魚を寄せ、下バリに吸い込みの良いクワセエサ(切り麩(例:マルキュー社製 一発など)、トロロ昆布、ウドンなど)を付ける、セット釣りにすると、アタリを貰える場合があります

水温が10℃を下回るような厳寒期でも、へらぶなは深い水底で釣れる訳ではありません。水深の深い池などでは、水面付近と底の水温が低く、中間の水深の層が最も水温が高いと言われています。このため、冬でも宙釣りでへらぶなが釣れる場合があります。

また、例えば私の良く行く川ですと、水深が1~1.5m程度のポイントであれば、真冬でも底釣りでへらぶなが釣れます(この川は夏はほとんどへらぶなが釣れませんが、むしろ真冬になると大型のへらぶなが回遊してきて釣れることで人気です。)が、水深が2.5m~3mを超えるようなポイントですと、底釣りではへらぶなはほとんど釣れず、釣れてもマブナばかりです。

厳寒期の川では、活性の低いへらぶなをじっくり待って釣る底釣りがメインになります。このような釣りでは、上バリ、下バリの両方にグルテンエサを付ける、両グルテンの底釣りや、魚影が薄いポイントでは、魚を寄せるために、ウキにサワリが出るまでは上バリにバラケとして底釣り用の重めのダンゴエサ、下バリにクワセのグルテンエサを付ける、バラグルセットの底釣りをします。

冬の底釣りの場合、1度エサを投入してから5分~長い場合10分近くもアタリが出るまで待つこともありますので、エサがすぐにばらけてしまったり、溶けてしまわないように、重めで持ちの良いエサを選択します

ここまで、野のへらぶな釣りに使うエサの考慮要素の内、はじめの3つについてお話しました。

次回、「野のへらぶな」釣りをするためのエサのお話(第3回)では、残りの3つの考慮要素についてお話したいと思います。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。



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