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「野のへらぶな」釣りをするためのエサのお話(第1回)

今日は、野のへらぶな釣りをするためのエサのお話をします。
へらぶなの主食は植物プランクトン(陸上の植物と同じく、光合成を行う水中に漂っている小さな生き物のこと。ケイ藻類、藍藻類、鞭毛藻類、緑藻類などがある)です。

しかしながら、自然界に存在している植物プランクトンを釣りバリに付けて釣ることはできないため、へらぶな釣り専用のエサが開発されている訳です。

へらぶな釣りのエサの種類

へらぶな釣りにおいては、以下の種類のエサを単品又は複数配合してエサを作ります。各種類のエサには更に、釣りエサブランド毎に特徴を持たせた様々な種類のエサがあり、200~300種類程度あると言われています。 

  • 麩(ふ)エサ

  • マッシュポテト

  • グルテンエサ

  • トロロ

  • くわせエサ

  • 集魚剤

これらを状況に応じて各エサの特徴を活かすように配合していくため、そのバリエーションは無数にあり、エサ作りを極めようとしても終わりがありません。

麩(ふ)エサ

麩エサは、へらぶな釣りにおいて最もよく使われるエサです。その理由は、麩エサが水中で溶けて漂う様子が、大量の植物プランクトンが水中で漂っている様子に似ていることから、視覚的にへらぶなの興味を引くという発想によるものです。

麩エサとは麩を粉砕したもので、焼き加減による麩の硬さや粉砕した粒子の大きさで、水中でのダンゴ状に丸めたエサのかたまりのばらけ度合い、エサを作った際の手に振れた時の感触が異なってきます。また、麩エサにさなぎ粉やペレットなどの集魚材を加えられたものも多く、へらぶなを寄せること、食わせることの両方に使われています。

市販されている麩エサには、麩だけではなく、集魚効果を高めたり、エサのバラケ性能(ボソッとした感触で比較的エサがばらけやすいものから、粘り気を強めにしてエサのばらけをゆっくりにし、エサを水中で長時間持たせるなど)やエサの重さを調整するために、サナギ粉、オキアミ粉末、増粘剤、グルテン、魚粉等のいずれか、或いは複数が製品ごとに配合されており、多数のバリエーションがあります。

私はこれまで、最も多い時で21種類の麩エサを持っていましたが、長年釣りをしていると、良く使うエサと、試しに買ってみたもののほとんど出番のないエサがあり、中には一度袋を開けて使ってみたものの、その後3年以上全く使っていなかったというエサもありました。

特に、年中へらぶな釣りをする人達に釣られ、エサ慣れしているへらぶなが多い管理釣り場では、季節ごとに使う麩エサの種類が異なり、その種類も非常に多いのです。

一方、私の場合、管理釣り場はお金が掛かるためほとんど行かず、川や沼などでの野釣りが中心です。このため、管理釣り場用に買い求めたエサの多くはほとんど使用されず、押し入れに入れっぱなしでした。

エサは一度開封してしまい長期間放置しておくと、中に虫が湧いてきてしまう場合もあるため、そのようなエサは廃棄しました。結局のところ、現在頻繁に使って常に買い足している麩エサは7種類程度です。

麩エサの一例(マルキュー社製 軽麩)

マッシュポテト

マッシュポテトは、ジャガイモを茹でてすりつぶし、フレーク状に乾燥させたものです。麩エサができる前はへらぶな釣りの主流エサだったとのことです。現在でも、ジャミ(自分のターゲットの魚を釣るのを邪魔をする小魚のこと(へらぶな釣りで言うところの典型的なジャミは、モツゴ(通称クチボソ)、モロコ、ブルーギルなどの小魚)です)が多い場所や大型狙いの野釣りなどでよく使われています。

但し、マッシュポテトは単品を水を加えてこねてペースト状にし、ダンゴ状に丸めて水中に入れても、すぐに粒子がバラバラになって溶けてしまいます。このため、麩エサとブレンドして粘り気を付けてエサが水中でゆっくりバラケていくようにしたり、後ほどお話するグルテンエサとして、グルテンと配合された形で販売されていたりします。(へらぶな釣りのエサで有名なマルキューという会社の場合、バラケ・ダンゴエサの種類は30種類もあります!)

マッシュポテトの一例(マルキュー社製 1:1粉末マッシュ)

グルテンエサ

グルテンエサは、前述のマッシュポテトとグルテン粉を配合したものです。グルテンとは小麦に含まれる特別なタンパク質です。こねる力が加わると結合し、粘りのあるグルテンになります。グルテン粉とは、小麦粉からグルテンだけを抽出した粉のことです。

グルテンエサに水を加えて練ったものをダンゴ状にして水の中に入れると、グルテン繊維が、先ほど説明したようにまとまりにくいマッシュポテトの粒子をつなぎ止め、徐々にサラサラと溶けさせることでエサ全体が一気にハリから落ちてしまうことを防ぎます。

そして、最後にわた状のグルテン繊維だけがハリに付着した状態とすることでへらぶなにアピールします。市販のグルテンエサには、マッシュポテトのフレークの大きさ、使用するグルテンの種類や量の調節によって、重さ、粘り気、膨らみ方などの性質を変えた様々な製品があります。

グルテンエサの一例(マルキュー社製 わたグル)

トロロ

トロロは、私達人間が食べているとろろ昆布と同じもので、麩エサと混ぜて使います。トロロを混ぜる目的はグルテン繊維の場合と同様に、麩エサの粒子を抱きかかえるようにつなぐことです。トロロは軽く吸い込みが良いため、へらぶなが違和感なく吸い込める素材と言われており、特に暖かい時期のエサとして使われているようです。

私はこれまで7年間、ほぼ週末のみのへらぶな釣りをしてきましたが、正直なところ、上に書いたような麩エサにトロロを混ぜる使い方はしたことがなく、どのような状況で使うと効果があるのか良く分かっていません。

ですが、野釣りでは、トロロを別の方法で使う釣り方があります。今回の本題からやや脱線してしまいますが、夏の暑い時期にへらぶなを釣る場合に、2本あるハリのうち、ハリスの長さが短い方のハリ(上バリと呼びます)に、魚を集めるために水中でばらけやすい麩エサを付け、もう1本のハリスの長さが長い方のハリ(下バリと呼びます)に、とろろ昆布を水に浸した状態のものを引っかけて釣る方法があります。(ヒゲトロセット釣りといいます)

この釣り方は、酷暑の季節に麩エサのダンゴをなかなか食わない(食い気のない)へらぶなを釣る方法として、私もよく使っており、実際成果も出ています。この釣り方のメカニズムとして、一般的に説明されているのは次の通りです。

夏の暑い時期に、へらぶなはハリに付いた大きなダンゴエサを吸い込むほどの食い気がなく、水中のハリの周囲でパラパラと溶けて漂っている麩エサの粒子を吸い込んでいます。ヒゲトロセット釣りでは、上バリと下バリのハリスの長さの差を短くし、麩エサの粒子が降り注ぐ直ぐ下にトロロを漂わせ、それをへらぶなが誤飲して釣れるというものです。

このため、へらぶなが積極的にとろろを食べに来ているという訳ではないとのこと。なぜ誤飲するのか?やや腑に落ちない感じもしないではないですが、確かに、上バリ、下バリ両方にダンゴエサを付けて釣った場合よりも明らかにウキの動きが良くなり、釣れやすくなることが多いことは、私も実際経験しています。

トロロは釣りエサメーカーでも販売していますが、同じ分量の袋に入ったスーパーで売っているとろろ昆布より高価(600円~800円)なので、私は専ら格安スーパーで売っているとろろ昆布(安いもので100円~200円位で買えますよね。)で代用しており、実際それでもへらぶなはちゃんと釣れます。

くわせエサ

へらぶな釣りでは、先ほど説明したように、ハリスの長さを変えて上バリ、下バリの2本のハリを仕掛けに結んで釣りをします。水中で水深の浅い部分に位置する上バリと、水深の深い部分に位置する下バリに、同じエサを付けて釣る場合と、それぞれ別々のエサを付けて釣る場合があります。

後者の場合には、上バリに、魚をエサの周りに集めることを目的として水中で粒子が徐々にばらけ、下バリの上から降り注ぎ漂わせるためのバラケエサ(麩エサを使います)を、下バリには、水中でもやや溶けにくくハリにしっかり残り、寄ってきたへらぶなに食いつかせて釣り上げるためのくわせエサを付けます。

くわせエサには以下の種類があります。

わらびウドン

へらぶな釣りでウドンと言えば、わらびウドンのことを指します。主原料はイモ類のデンプンで、これを容器に入れて水に溶かして加熱すると、プルプルとしたモチ状のものが出来上がります。これを冷まして小さく切って使います。主にへらぶなの食いが渋いときや、寒い時期のセット釣り(バラケエサとクワセエサの2種類を使う釣り方のこと)のくわせエサとして使われています。

自分で粉から作るタイプ(写真上)の他に、はじめから粒状になってビン詰めで売っているタイプ(写真下)があります。前者の場合、ウドンを溶かして加熱するための鍋や、モチ状になったウドンを絞り出すためのウドン絞り器という専用の道具を準備する必要があるため、それなりの準備コストが掛かります。ただ、こだわりを持って釣りをされる方は、上記のように自分でウドンを一から作りますね。

基本的には管理釣り場の釣りで、くわせエサを何種類か用意しておき、1つのくわせエサでの釣果があまり芳しくない場合に別のくわせエサに変えてみるなど、釣れる枚数を少しでも伸ばしたい。という研究熱心な方達が使うものなので、野釣り派の私はほぼ使うことはありません。

一方、既に出来上がったウドンが玉状になってビン詰めされているものは、釣り場でハリに付けてすぐ釣りを始められるため便利です。

インスタントウドン

先ほどお話した、わらびウドンと異なり、釣り場で過熱せずに簡単に作れるわらびウドン的な、粉末から作るくわせエサです。こちらも食い渋り時や寒期のくわせエサとして使用します。

インスタントウドンの一例(マルキュー社製 感嘆II)

切り麩

麩を円筒状に小さくカットした、軽く吸い込みのよいくわせエサです。へらぶな釣りをする人達の間では、「オカメ」と呼ばれることもあります。夏場の野釣りで使われることが多く、私もよく使っています。

切り麩については一点注意事項があります。野釣り場では、市販のエサや自前のエサなど、基本的にどのようなエサを使っても問題はありませんが、管理釣り場ではエサ規定というものがあり、使えるエサに制約があります。

基本的に生きたエサ(ミミズなど)を使用してはいけない。というのは何となく感覚から分かる気がしますが、実はこの切り麩もへらぶなの管理釣り場では使用禁止になっています。

この理由ですが、切り麩はエサが非常に軽いため、へらぶなが吸い込むと、口に掛からず、ハリごと喉の奥まで飲み込まれてしまいます。へらぶな釣り用のハリは、魚が外れないようなカギ(かえし)がついていないスレ針ですが、飲まれたハリを外す際に無理をして外す人がいるので、へらぶなを傷めてしまいます。

また、切り麩エサは、水深がある一定の深さの場所を泳いでいたへらぶな達が水面近くの浅い場所に寄ってきてしまうため、本来もっと深い水深の場所(エサを水中で配置させる水深、または他の釣り客がへらぶな達を寄せて釣りたい水深のことを、「タナ」と言います)にへらぶな達を寄せたいにも関わらず、タナが浅くなり迷惑をかけてしまいます。


集魚剤

集魚剤とは、水中の自分が釣りたいタナに魚を寄せ集めて釣れやすくするために、へらぶな達が好む成分などを配合した粉末エサのことです。主に、以下のものがあります。

さなぎ粉
養蚕(ようさん)で取れる、蚕(かいこ)のさなぎを乾燥して粉末にしたもので、魚が好む成分を多く含んでいます。へらぶなを寄せたいときに麩エサやマッシュポテトに混ぜると効果的と言われています。

麩エサやマッシュポテト、グルテンエサに比べ、独特の強い臭いがあります。以下の写真は私が持っているエサですが、正直なところ、あまり活躍の機会がなく、購入してから既に数年経過しています。ただ、寒い時期のウドンセット釣りの時に、インスタントウドンの粉末に混ぜて臭いを付けて魚の食い気を誘うということで使う時もあります。(混ぜた場合とそうでない場合の明確な差はあまり実感したことはありませんが。)

さなぎ粉の一例(マルキュー社製 軽さなぎ)

ペレット
ペレットとは魚の養殖で使っている飼料です。市販のペレットエサは、これをへらぶな釣り用のエサとして使いやすいように顆粒もしくは粉末状に加工したもので、麩エサに混ぜて使います。エサの入った袋には、主原材料として魚粉加工品と書いてあります。

これらの集魚剤は、魚を寄せ集めるという目的で使用するもので、野釣りでも魚影が薄い(アタリが少なく、釣っている場所での水中の魚の数が少ないと考えられるような)場所で、麩エサに混ぜて使うことで、より多くのアタリが出る、というメリットがあります。

但し、デメリットとして、逆にジャミや外道といった、本来釣る目的にしていない魚までがエサに寄ってきてしまうことで、へらぶなが釣りにくくなることもあります。ですので、このような場合は集魚剤の使用をやめ、麩エサやグルテンエサでじっくり本命であるへらぶなのアタリを待つ。ということも考えます。

ペレットエサの一例(マルキュー社製 粒戦)

今回は、「野のへらぶな」釣りをするためのエサのお話(第1回)として、へらぶな釣りに使われるエサの種類と特徴についてお話しました。

次回は、「野のへらぶな」釣りをするためのエサのお話(第2回)として、これらのエサをどのような視点で選択するのか。についてお話したいと思います。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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