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自転車と女子高生

夜7時…仕事終わり帰りの車の中。
明日は休みだし、気分もアゲアゲ!
好きな曲をかけながら家まで道は、華金の影響で渋滞気味だった。
まぁ〜急ぐ理由もないし、ゆっくりと進んでいた。
ある程度進んで川沿いの道を進んでいた時、ガードレールの側でうずくまっている人がいた。
気にはなったが通り過ぎちゃったし、戻るのも面倒〜だよな〜とか思いながらも…やっぱり気持ち悪くてぐるっと回って同じ側道沿いに戻った。
向かってみるとその人はさっきと変わらずうずくまっていて、よく見ると女子高生であることがわかった。側には自転車と鞄があり、その横でうずくまっているようだった。
車を近くに路駐させその人の所へ向かった。
「どうしたんですか?、大丈夫ですか?」
「うっ…う…つ お腹痛い…」
「救急車呼びましょうか?」
「いえ…いいです…」
「じゃあ、親御さんに連絡は?」
「うっ…う」
とにかくこのままじゃ大変だったので
僕は救急車を呼ぶことにしたんだが…
「しまった〜💦」
今日に限ってスマホを忘れて来てしまっていたのだった…なんというタイミング。
とりあえず、病院に連れて行く為に
僕の車で運ぼうかと思ったが、大分苦しそうだったし…こんな時だからっておじさんに触られるのも嫌だろうしな〜なんて考えが浮かんでしまっていた。
そんな時
「どうかされたんですか?」
帰り道途中だった大人びた女性の方からだった。
「あ!すみません…実は僕もさっきこの子が倒れていることに気付いて駆け寄ったんです」
「どうやらお腹か痛いらしくて、救急車を呼ぼうかと思ったんですが…ちょうどスマホを忘れてまして困っていたんです。」
「今、スマホ持ってますか?持っていたら救急車を呼んで貰いたいんですが…」
「あ〜私ここらへんの地理が分からなくて…私のスマホを貸すのでお願いできますか?」
どうやら地元の人ってわけでも無いらしかった。
「わかりました。すみませんお借りします。」
すぐさま僕は救急車を呼んだんだが、少々分かりづらい場所のためわかりやすい大通りまで出ることにした。
その間、女性の方が自らの上着を女子高生に掛けてくれていて一緒に居てくれていた。
ピーポピーポピーポ!
掛けてから、10分もたたないうちにサイレンが聞こえて来た!
僕は救急車が近づいた頃に、大きく手を振りながら
「こっちでーす!」
と叫んでいた。
すぐさま、救急隊員が女子高生の側へ駆け寄りタンカーで救急車の中へ運び込まれた。
その間、事情聴取みたいな事をしていた。
「彼女はどういう状況でしたか?」
「えっと〜帰りにここを通った時に、先程の場所でうずくまって居ました。お腹痛いと言っていましたね。それで、救急車を呼んだという所です」
「あなたは?」
「私は徒歩で帰宅中に、たまたま遭遇しまして
その方が連絡手段が無いとの事で私のスマホを貸しであげた所です。」
「そうですか。調べた所彼女はこの近くの高校に通っているそうで、女の子の日だったそうです。」
「とりあえず、ご両親の方に連絡をします」
そう言って、救急隊員は電話をし始めた。
その時思ったのだが、自転車はどうするんだろう?
置いておくには場所がないしな〜なんて頭によぎっていた。
救急隊員が僕に代わって欲しいとスマホを渡された。
「あ!もしもし」
「すみません、ありがとうございました。とても助かりました。」
「いえいえ…とりあえず一段落ついて良かったですね
ね…あ!それと自転車があるんですがどうしますか?」
「あ〜そうですよね、救急車で運んで貰う訳にもいかないしとりあえずそこの近くに停めて起きますかね。」
「もし、良かったらなんですけど…僕の車で運びましょうか?お家まで」
「いやいや〜それは悪いですよ」
「全然、構わないですよ、困ったらおたがいさまです。」
「ん〜救急隊員に一度代わって貰えますか?」
そう言われたので、隊員にスマホを渡した。
「ハイ!ハイ!そうですよね」
「あの〜自転車の事は本当に良いんですか?と言っていますよ、それに帰りとは逆方向になっちゃいますけど…」
「ハイ!大丈夫です。」
「ハイ!ハイ!」
「お名前の方を教えてくださいとの事ですが」
まぁ〜後々の事とか、いろいろ思う所もあるよな〜とも思ったが、事が事だけに僕は
そんな〜名乗るようなもんでも無いですよ〜的な事を言った事は覚えている。
とにかく、そんなやり取りを終えて救急隊員が協力ありがとうございましたと、戻って行く時に
一人の救急隊員が…
「あなたお名前は?」
と聞かれたのでつい、その人には名乗ってしまった。
まぁ〜、自転車泥棒なんて無粋な事はしないけど
念のための事なんだろうななんて思った。
それから、自転車を車に積んでスマホを貸してくれた女性にもお礼を言い、持ち主の家の方まで向かった。
狭い道とはいえ、救急車が止まっての騒ぎだったからか近所の人達が数人出てきて
「大丈夫かね〜」
「高校生だってね〜寒かったろうに〜」
まぁ〜よくある野次馬にも出くわしていた。

帰り道とは反対方向ではあったが、これも人助け
そのうち良いこともあるだろうなんて思いながら
持ち主の家の近所のコンビニに車を停めた。
無理もない、少し警戒されてもいたのだろう…
先程の女子高生の父親から、家の近くのコンビニでお願いしますと言われていたのだった。
流石に家までは図々しかったかななんて思った。
コンビニに入り、店員さんに事の経緯を伝えたら
気持ち良く自転車を預かってくれた。
これには僕もホッとした。
自転車さん、無事に帰れよ
そう心で思いながら、家へ帰ったら…
メッチャクチャ…疲れていた💦
人助けってけっこう疲れるんやな〜って思った。
名前も連絡先も教えてないからその後はなにもないけど…
あの子はあの自転車で今日も通学できているなら
万事オッケーって事で終わりです。

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